表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
232/327

異世界編 3-14

 

フルカネルリだ。予想通りに王宮からの呼び出しがあった。ただし、占い師としてではなく、優秀に過ぎる魔導師として。

まあ、無視したが。理由? 向こうが偉そうだったから。そして気に入らなかったから。

何で私が跪かなければならない? 何で私が頭を下げる必要がある? なぜ私がわざわざ旅を中断して王宮に行かなければならない? 巫山戯るなと言う話だ。


用があるならそっちから来い。私は王宮に等には用が無い。

そう言うと、どうやら一般兵らしいその男は私に剣を向けてきた。馬鹿だな。


剣を錬成して全て酸素と結合させる。一瞬にして腐蝕したその剣はかなりの熱を発して柄を発火させ、剣を持っていた兵士の腕を燃やした。

思わず、と言った風に剣を取り落とした兵士の周りに花吹雪を舞わせ、笑顔でお引き取り願う。


《『死ぬか?』はお願いの時に使う言葉じゃないと思うナー?》

『……百歩譲ってぇ……脅迫よねぇ……?』


さて、なんの話しかわからんな? 私はただ、学園に居た頃に私に悪意を向けたり面倒事を押し付けようとした相手の末路を詳しく教えただけだぞ? それからその兵士の名を言って、家族の名を出して、不幸な事故が起きなければいいな? と言っただけだというのに……。


《それ脅迫だかラー!一般的にそういうのを脅迫って言うかラー!》


知っている。だがやめない。


《だろうネー》




それから暫くすると数人の騎士が私を無理矢理浚おうとしてきたので、魔導防御のかかっている鎧ごと焼き尽くした。人前だったがそんなことは知った事じゃない。

鎧からして王直属の親衛隊のような者だろうが、名乗ることもしなければ礼を尽くすような事も無かったので盗賊の変装と言うことで押し通した。


それからも何度か兵士や騎士や魔導師がやって来たが、全てお帰りいただいた。

話し合いで引かない奴は少し五月蝿い心音や呼吸音を止めてもらったり、首だけ王宮に急いで帰って貰ったりもしたが、基本的には問題ない。


《あると思うナー?》


無い。権力闘争に巻き込まれることを考えれば、犯罪者として指名手配されるくらいは全く問題ない。


《……いいのかナー……?》


私は一向に構わん。


それでは、さっさと王都を滅ぼしてくるとするか。真正面から堂々と、二度と私に手を出そうと思わなくなるほどに。






王宮の謁見の間に、私達が集められた理由を聞いて、私は宮廷魔導師を辞めることを決意した。

集められた私達に下された任務は、在野の魔導師、フルリ=カーネルを捕らえること。そう、あの数を無力とする大魔導を扱う女に、数を頼みに戦えと言うのだ。


正直に言って、あの娘とはもう戦いたくはない。学園最強と言われていた私を、無詠唱の爆破の魔導で一瞬にして戦闘不能にしてしまうほどの実力者だ。

私も成長したはずだが、正直に言って勝てる気がしない。全くしない。


だからと言って、宮廷魔導師が王の命に逆らうことができるはずがないので、その前提である宮廷魔導師を辞めると言う答えに落ち着いたわけだ。

しかし周りは負けることなど考えてもおらず、何でたった一人の魔導師のためにこんな数を動員するのかと不思議がっていた。


……どうせ私はここで宮廷魔導師を辞めるけれど、一応忠告だけはしておこう……かな。

…………きっと、彼らは聞いてはくれないだろうけど。




そして数日後。荷物を纏めた私が魔導師寮を出て、王都を歩いていると……今、一番見たくない顔が視界に入ってきた。

あの時と同じ、薄紅色の花弁を撒きながら、彼女は……フルリ=カーネルは王都の中心街を当然のような顔をして歩いていた。


彼女をじっと見ていると、不意に彼女と目があってしまった。

彼女はあのときと同じ表情で、一本だけ立てた人差し指をゆっくりと唇の前に立てた。


そして、残酷な笑顔を浮かべた直後に、彼女は消えた。

そこには何も残っていなかったが、私は恐ろしくなってすぐに王都から離れた。




王都が壊滅したと言う話を聞いたのは、私が実家に一度戻ってすぐのこと。私がいなくなった僅か半日後に、王都に薄紅色の花弁が舞い、そして王都をまるごと焼き払ったらしい。


私はその話を聞いて思う。あの時、誰にも言わずに王都を離れてよかったと。

そして、この話を聞いたフルリ=カーネルを知る者は、今回の事件と彼女を確実に結びつけるだろうと。


「……魔導の最奥」

「ん? なんの話だい?」


お父さんが私にそんなことを聞くけれど、私は本心を答える気にはなれなかった。

けれど、一つだけ。


「……私の知っている、最高の魔導師」

「へえ? 名前はなんだい?」


その問いには答えず、私はぱくりとクッキーをかじった。





  魔導の最奥という二つ名の広がった原因。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ