異世界編 3-11
フルカネルリだ。旅に出てから一月。魔物以外に襲ってくる物もなく、実に平和に旅は続いている。
路地裏で小さな店(屋根がついているだけの小さな屋台)を出して、顔は白いフードを深くかぶることで隠す。白衣の上からローブを着て、肌の露出が殆ど無い。
そして目の前には水晶玉。うむ、実に怪しい占い師だな。
《自分で言っちゃうノー?》
事実だからな。
年齢不詳、性別不詳、身元不詳、顔もわからない占い師。しかも声はどこか遠いところから響いてくるような声の、聞いたこともない職業の、『未来を当てる』と言う『占い師』。
………うむ、実に怪しいな。否定どころか言い訳すらできん。子供のような体躯がその怪しさを助長している。
道理で客が来ないわけだな。はっはっは。
まあ、こんな奴に仕事以外の理由で話し掛けるような物好きがいたらそれこそ驚きだが。
警邏とかな。
「……ちょっといいか?」
…………来たな。物好きが。
「構わないよ。何が知りたいんだい?」
口調はよくある魔女をイメージしてくれると助かる。敬意なんかは持ち合わせちゃいないし客が神だと思っているわけでもないし、それ以前に敬語は苦手だ。
……それらしく聞こえるだけならなんとかなるんだがな。
少しの時間が過ぎて、その鎧を着けた騎士は再び口を開いた。
「……その………すまないのだが、まずは力を見せてくれないか?」
……なるほど。確かにそれは重要だな。
「構わないよ………アイリス=ダッグマガン」
「……どこかで会ったことがあったか?」
「いや、初対面さ。ただあんたの星を読んだだけ」
…………と、言う名の解析。ステータスも名前も記憶も思考も筒抜けだ。
「……それじゃあ適当に、あんたの父親が母親にしたプロポーズの言葉でも当ててみせようかねぇ…………」
私がそう言うと、目の前の女……アイリス=ダッグマガンは唾を飲み込んだ。
それはそうだろう。それはちょうど本人が聞こうとしていたことなんだから。
「……あんたの父親、バルクホルス=ダッグマガンは、あんたの母親のイリス=アイゼアブルーメに、『俺はお前なしじゃ生きられないんだ』と言い、母親の方はそれに『私もあなたがいないとこの世界に意味を見いだせない』と」
「すまない、疑って悪かった。だからそこで止めてくれ」
さて、なぜ謝られたのか理解できないが……まあ、やめろと言うのならばやめようか。
「それで、知りたいことはなんだい? 予想はつくけどあんたの口から言ってもらおうか」
頭の中身を読めば、何を頼みたいかはすぐにわかるし、内包した世界の星を読めば、ある程度の未来がわかる。
ただし、私と接触しなかった場合の未来しかわからないがな。
殆どの場合は私は関わらないからそのまま進むが、未来を知ることで変わる未来という物もあるし、たまに私が関わって変化する未来もある。
この騎士の探し物。それは―――
「私に合った、剣を探しているんだ」
「あんたに剣は根本的に向いてないからよしたほうがいいよ」
最大限に本当のことを言ってみた。この騎士に合ってるのは長柄の武器だ。槍や薙刀、戟だな。百歩譲って鎌か棍、杖術はあまり向いていないように見える。
「やるんだったら槍術をすすめるよ。先に一つだけ刃が付いた物もいいが、横に刃が追加された戟も良いかもね?」
「……私を侮辱するか」
何の話かわからないんだが。どこが侮辱だ?
ただ、向いてる向いてないの問題であって、馬鹿にする意思はこれっぽっちも持ち合わせが無いんだが。
「事実だよ。あんたには剣じゃなくて長物が向いてるって話さ……そっちの方なら極めればかなりいいところまで届くかもね?」
私は笑う。うむ、やはり若者の未来は面白いな。
「だから、本当に強くなりたいんだったら長柄を使うんだね……」
そこまで言ったところで、その騎士は店の前から踵を返して去っていった。
…………そう言えば、お代を貰っていなかったな。人間観察と内包世界の記録に集中していたからか、すっかり忘れていたよ。
《次からは前払い方式にするんだネー》
その方がいいだろうな。
この町で最近流れ始めた噂がある。出所は、とある内気な子供から。
その子供はとある日、自分の両親に向かって言った。
「今日、なんだか不思議な人と出会ったよ」
それは、未来を当てると言う。自らを『占い師』と名乗り、顔を白いフードで、体をローブで隠しているらしい。
その『占い師』は、迷っていた少年の悩みを見抜き、未来を少しだけ見て助言をしてくれたらしい。
そしてその助言はあまりに的確なもので、少年はそれのお陰で友達と呼べるものが増えたらしい。
それから始まった噂の群れは、少しずつ体験談と共に町中に広がっていった。
とある少女が言った。
「『占い師』さんに、無くしたお人形の場所を教えてもらったの!」
一人暮らしの老婆が言う。
「お爺さんの形見の指輪を見つけてくれたんだよ……ありがたいねぇ……」
とある農夫は言う。
「一昨日畑に魔物が出たんだけどよ。その事を聞いといて魔物避けの鈴を持ってって助かったわ」
とある青年は言う。
「彼女に送る花を何にすればいいかって聞いたら、見たこともない真っ赤な花を用意してくれたんだ。聞かれるのがわかっていたみたいにね」
……そして噂には続きがあり、どうしても必要だと言う時以外は見付けようとしても見付からず、いつの間にか自分の家の前に戻ってきてしまうらしい。
その噂が本当ならば、今の私ならば会えるだろう。
私は確かに助けを必要としているし、それをできるのはその『占い師』だけ。
噂を信じて町の路地に入ってみれば。
「いらっしゃい。何が知りたいんだい?」
『占い師』は、ものの数秒で見付かった。
そのあまりの言い分に話の途中で席を立ってしまったが、一応槍を振るってみることにする。
あれでも一度も外したことの無いと有名な話だし、信じられないが試してみる価値はある。
例えそれが無駄になったとしても、無駄だとわかるだけでも儲けものだ。
私はそうやってマイナス方面に思考を向けながら、自分で作った槍を振るった。
後に‘槍女神’と呼ばれる女傑の誕生秘話。
おまけ
【
名前:アザギ
Lv:444444/????
性別:女
種族:亡霊・悪霊
年齢:????
HP:44444444444(+4444444444444)
MP:44444444444(+4444444444444444)
攻撃力:44444444444(+44444444444444)
守備力:44444444444(+4444444444444)
敏捷度:44444444444(+4444444444444)
魔力:44444444444(+444444444444444444)
運:44444(+4444444)
機動力:44×4(+44×444)
スキル
呪術:Lv4(+4444)
憑依:Lv4(+44444)
保有属性
闇:Lv4(+44444)
特殊スキル
暗視
対悪魔
霊体攻撃
守備力無視
物理防御無視
物理攻撃無効化
聖属性効果大
常時発狂化
広域呪詛
壁抜け
即死
】
※バグってます