異世界編 3-5
フルカネルリだ。魔導学園に入学することにしたが、適当に手を抜いておくことにする。知識は教師や他の生徒から写し取れば問題ないし、実技も問題ないはずだ。
金については………まあ、なんとかするさ。学園外で自作の原材料費0の剣や槍を売ればいいだろう。そこそこ良い値段で売れてくれるはずだ。最悪金を作れば問題ないしな。
《問題だと思うヨー。別に良いけドー》
まあ、犯罪だろうな。だから最悪と言ったんだが。
しかし、もしかしたら合法かもしれないぞ? この異世界の法を全て理解したわけではないしな。
……例え犯罪だとしても、ばれなければ一切問題ない。あまり金を作りすぎると経済が破綻するだろうが、それこそ知ったことではないな。
……さて、それでは入学手続きと試験のために、学園都市と呼ばれるルラクモまで行くとしようか。
この田舎町には根っからの悪人はあまりいないようだが、都会(恐らく、この町に比べればそう言えるだろう)では違うだろうし、気を引き締めていかなければな。
利用されるのは構わないが、私に害が来ればすぐさま叩き潰してくれる。
……そう思いつつ出発した私だったが、前回の異世界をハードモードだとしたらこの世界はイージーどころかベリーイージーであると言うことが発覚した。
……ハードモードではなくヘルモードと言った方が良かったか? あの程度でヘルモードとは言えないと思ったからハードモードと言ったんだが。
……まあ、いいか。なんでも。
魔物は強くない、魔王もいない、柄が悪いのも少ない、強盗もほとんどいない、人買いや身売りも早々なく、戦争すらここ数百年は無いらしい。そんな平和な世界がここらしい。
……よろしい、ならば研究だ。平和な世界で進んだ魔導は日常に使える便利魔導がとなっているはずだ。頭の固い者でなければ改造の十や百はしていて当然だからな。
ある程度術式さえわかればいくらでも改造してくれる。そういったことは得意分野だ。
私にかかれば戦闘用魔導も日常に便利なお手軽魔導に早変わり。
竜巻で相手を切り刻む魔導はごみを集めて細かくする魔導に。
炎で相手を焼くための魔導は火力の調節で料理に使い、しっかりと中まで均一に火を通す魔導に。
水の刃で相手を刻むための魔導は、手の熱が伝わりやすいエビなどの食材を調理するための調理用に。
このように魔導にはいくらでも利用法方がある。
……とは言え、失敗すれば大変なことになるだろうが……知ったことではないな。
………さて、実技用に細かい術式の五つくらいは用意しておこうか。幸い時間はあることだし。
《頑張ってネー》
ああ。やるだけやるさ。
魔導を操ることができる者を‘魔導師’と呼び、魔導をある程度以上使うことができるものを‘大魔導師’と呼ぶ。その具体的な分け方は、魔導を使うときの詠唱の有無であるらしい。
さらに具体的に分けると、大魔導師とは三小節以上の魔導を無詠唱で発動できなければならないらしく、それができるのは今では片手の指で数えられる程度の人数らしい。情報源は旅の途中で見付けた魔導師の脳味噌。
その分け方で言うと私は大魔導師に分類されるのだが、およそ魔導スキルがLv6あればそう呼べるだろうな。
……なんだ、大魔導師としても私は規格外か。
《人間として規格外なんだからサー。今さら今さラー》
……そうだな。やれやれ。
とは言え、私が知っている魔導の事など大したことではない。慣れ親しんできた魔術や魔法ならともかく、まだほとんど慣れていない魔導の事などわかるものか。
ただ、この世界の魔力の産み出し方はわかる。昔にナイアが連れてきた覗き悪霊の研究で、これと同じ魔力を所有しているからな。
扱いは二つ目の異世界の魔力で慣れているので問題ない。ただ魔力を引き出すところが違うだけだからな。その程度ならば応用でできる。
それと、この世界の魔導は精霊を利用するわけではないらしい。
自分という一つの世界の中身を、魔力を使って一部だけ外の世界に表出させることによって魔導を行う。だから一人一人属性は違うし、使える魔導や使えない魔導があるわけだな。
簡単に言ってしまえば、英雄の霊を従えた七人の魔術師が万能の願望器である聖杯を奪い合う戦争を60年に一度行っている話に出てきたの固有結界を相当劣化させたようなものだ。
《フルカネルリは元の世界では十二歳だからネー? そういうゲームはまだやっちゃダメだヨー?》
安心しろ。広大なネットの海には二次創作というものが存在する。駄作から良作までな。
それには当然そういったシーンが無いのもある。私は十八禁と書かれている物は読んでいない。
《じゃあ安心だネー》
ああ。
『……十五禁はぁ……?』
……さて、次は無属性の術を作ろうか。強制的にベクトルを一方に向ける魔導などどうだ? かなり便利な防御だと思うが。
《否定してヨー!》
フルカネルリの趣味の話。