異世界編 3-3
フルカネルリだ。着々とスキルのレベルを上げながら歩いていると、町が見えてきた。
見たところ平穏そうな町だ。周囲にあまり防護策が施されたなにかが無いところからもその事が伺える。
この町は、今までに大規模な魔物の群れに襲われたことはないのだろう。かなり弱々しい柵が周囲にぐるりと一周されているだけで、それ以外には大したものはない。
…………危機感が足りていないと思うのだがな。
《それで被害を受けるのはここの住人なんだシー、別に良いんじゃないかナー?》
私は別に構わん。研究が終わったあとならば、死のうが滅ぼうが勝手にしろ。
……まあ、私はたまに滅ぶことが前提の実験もするがな。
《そう言えばそうだよネー。ナギちゃんにやったあれだって、後天的に人間の器を広げるための実験の試作品だったもんネー》
思考実験と理論では成功してしかるべきな実験ではあったが、その通りだ。
町に入るのには色々と厄介なことが必要らしいので、とりあえず不法侵入した。色々と見て回って、それからの方がいいだろう。
幸い人は多いし、知識の収集には問題ないと思うので、私はそこらに居る人の頭の中身を覗きながら歩き回る。
……ちなみに、これもやると頭にファンファーレが鳴り響く。全く、サイレントモードなどは無いのか?
そう思ってステータス画面を私にしか見えないように展開して探してみるが、サイレントモードやそれにあたる物はないらしい。
仕方がないので我慢しながら頭の中を覗いていると、それなりに詳しく知っている者が居たのでその頭の中身を一気に解析して覚え込む。またスキルのレベルが上がった。
この世界の身分証明書はステータス画面らしい。一部……名前を見せればそれで良いらしいので、自己紹介の時や町に入る時等の軽い場合、そして国外に出る時やギルドに所属しようとする時等の重要なもそれで大丈夫らしい。
……………だが、私のステータスの名前は登録されていないのだが……フルリ=カーネルとでもしておけば良いのか?
[名称【フルリ=カーネル】が登録されました]
……良かったらしいな。
他の者達も、名字と名前の二つを持っていたし、疑われることはあまりないはずだ。これで当面は大丈夫だろう。
それと、経験値についてもいくつかわかったことがある。
経験値はモンスターと戦っているときに蓄積され、倒したときに比べれば少ないが、倒せなくともある程度の経験値は入るそうだ。
そしてその経験値は、およそ三通りの使い方がある。
一つは純粋にレベルアップに使う。
自分のレベルは通常これでしか上がらず、他に上げる方法は特殊な道具を使うか、もしくは自分より高位の存在に祝福を受けるくらいしか無いそうだ。
二つ目は、スキルのレベルアップに使う。
スキルのレベルはこれ以外にもスキルを使うことによって僅かずつ蓄積されるスキルポイントでも上げられるらしい。
ちなみに私がやっていた狂気的なレベルアップはスキルポイントの方法だ。
そして三つ目。自分のレベルは上げずにステータスのみを強化する。
これはまずやるものはいない。何故なら、レベルアップで上がるステータスの方が数段上昇値が大きく、そして一つのステータスだけでなく全体的に上がるからである。
ただ、才能の限界、つまりもうレベルが上がらなくなってしまった者で、更に強くなりたいものはこれをやっていることがある。その程度のことだ。
だからこの世界では基本的にレベルが高ければ高いほど偉いと言う風習があり、王公貴族も実際にやっていると言う情報も得た。
…………しかし私は、Lvが1でもあのステータスだ。他の者のステータスを見て、あれがどれだけ異常なステータスかも理解した。
それだけではなく、私のステータスは今も上昇を続けている。
成長が数値で理解できるこの世界に来てわかったことだが、およそ一秒で攻撃力が300、防御力が280、HPが1300、MPが8200、魔力が16300ほど上昇を続けているらしい。
ステータス画面を開いている時はその変動が数値化されないが、消してすぐさま出すと上昇しているという一種のホラーのようになってしまっている。
…………この状態でLvまで上げてしまってはつまらないので、よくある縛りプレイをやっていこうと思っている。具体的には自分のLv上げ禁止で上げるのはステータスのみと言う縛りプレイ。
ハヴィラックとプロトはあの世界の魔力に触れすぎて精霊のような状態になってしまったので今も私の研究室か実験場で暮らしている。魔力がある限りほぼ無限の寿命を持っているので文句はない。
特にプロトは私の子だ。何度も死なせるのは忍びない。
そういうこともあって、現在私はいつもの三人で居るので問題ないだろう。
『……そうねぇ……私も、やってみようかしらぁ……?』
《多分アザギはレベルアップはできないと思うヨー。生き生きしてても死人だからネー。精々ステータスアップとスキルアップくらいだヨー》
『……それでもいいわぁ………面白そうだし……ねぇ…………♪』
そうか。まあ、好きにするといい。私は私で好きにするさ。
廃プレイを決意したフルカネルリ。