異世界編 3-2
フルカネルリだ。ステータスを確認し終わったので、とりあえず解析をかけながら歩いている。モンスターも人も居ないので、もっぱら植物や土壌の解析をしている。
……前の世界のように完全に魔法で作られているわけではないが……やはりこの世界でも魔導が世界に根付いているようだ。
便利な魔導のお陰で科学が進まない。私はそれでも構わないが。
……さて、この世界ではどのような謎が待っているのやら。
先程の学生の頭から読み取った情報からするとこの世界は相当平和であるようだが……私の居るうちに、なにか大きな事件が起きる気がして仕方ない。
どのようなものかは不明だが、それは恐らく私にとっても悪いものではないだろう。
《それじゃあ、まずは散策だネー》
そうだな。情報は大切だからな。
楔の術式をこの世界風に改造して、情報を取りながら私達は進んでいった。
一歩目でファンファーレが脳内で鳴り響いた。
[スキル【魔導作成Lv1】を入手しました]
[スキル【魔導改造Lv1】を入手しました]
[スキル【魔導具作成Lv1】を入手しました]
[スキル【魔導具使用Lv1】を入手しました]
…………凄まじい勢いでスキルが増えたような気がしたのだが?
《当然でショー。むしろここまで能力値が高くって特殊スキルがあれだけあるのニー、通常スキルがないって言う方がおかしいんだヨー》
…………そうか。
もう一歩踏み出すとまたファンファーレ。魔導具使用がLv2になっていた。
………………早すぎないか? まだ二歩目だぞ?
《成長加速って怖いネー。現在二十五億倍だヨー》
……こっちの方の成長まで加速するのか。
そう思っていると、なにもしていないのにまたファンファーレが響いた。
…………なるほど。つまり貰った経験値が切れるまではLvが1ずつ上がっていくわけか。
しばらくはこの間抜けたファンファーレにつきまとわれることになりそうだ。
歩き続けて五分。ひっきりなしに鳴り続けていたファンファーレがようやく収まり、魔導具使用のスキルを見てみると、Lvが7まで上がっていた。
通常はここまで上げるのに、才能のないものは千年かけても不可能で、才能があっても死ぬまでの時間を使っても届かないものが多く、極々まれに天才と呼ばれる者達を鼻で笑い飛ばせるような五千年に一度の本物の天才が二十歳程でなることがある程度のレベルで、ここまで上げるのもここから先に進むのも相当の才能と努力が必要になると言われている。
…………言われているのだが……私はただ歩いただけでこんなところまで来てしまった。それも五分程度で。
ちなみにそれだけで五分間ひっきりなしに鳴り続けるわけがなく、記憶にあった術式をこの世界でも使えるように少し弄ったり、弄ったそれを改造したりを繰り返していたらこうなった。
高速思考のLvは上がっていなかったが、【魔導作成】、【魔導改造】、【魔導具作成】のLvがそれぞれ6、7、3に上昇していた。
そして新たに【魔導書作成】が追加され、こちらはまだ手はつけていないためLvは1。これからは少し作った魔導を書き記しておくことにしよう。防御用や暮らしで役に立つものばかりだが。
…………なんなら、それぞれのページの最初の呪文の名前を連ねていくと自爆魔導が出来るようにしておくか。私が教える相手には見せなければいいし、それ以前にそうやって読もうとする馬鹿は早々いないだろう。
もし読んで自爆しても私は知らない。勝手に読んだそいつが悪いし、私はそれを手放す気は無いので読めたら泥棒だろう。知らないね。
……そうだ、ページの始めの呪文の頭文字に強調点をつけておこう。そして表紙の裏側に、強調部を続けて読むべからず、と書いておく。強力無比にして最強の魔導が発動する、とでも書いておけば、読もうとするやつも出てくるだろう。自爆するとも知らずに。
……くくくく…………いたずらと言うのは楽しいな?
《いたずらの域を軽々と越えていってるような気がそこはかとなくするんだけドー!?》
『……いつものことじゃないのぉ………』
《……そう言えばそうだネー》
喧しいぞ。
……それじゃあさっさと作るとするか。立派に見える外表紙に新品に見える紙を張って、それから大したことのない魔導とちょっとした魔導を書き記しておく。
後はこれを劣化しないようにして、適当な迷宮かどこかに放り込んでおけばいいだろう。
洒落にならないいたずらを仕組むフルカネルリ。
《……ところでサー…………目的変わってなイー?》
…………ああ、そう言えばそうだな。ちゃんとまともな物も作っておこう。