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フルカネルリだ。初詣には私服で行った。私としてはあまり行きたくないのだが、母も父も行こう行こうと騒ぐので仕方ない。
……やれやれ。
《まあまあいいじゃないカー。フルカネルリだって実のところ少しは楽しみにしてるんだロー?》
少し前まではしていたがな。今ではそんなことは全く無い。
ここの神を殺してしまったあの時から、私はこの神社が好きではない。見守を作ろうと思い付いた時に、神域のサンプルとして調べたとき以外にここにあまり近づこうとしなかったということでわかるだろう。
……まあ、別にあの神に祈らなければならないと言うわけではないし、ここは適当に私の信じる神に祈りを捧げてみるか。
……ナイアとクトとクトゥグァとアブホースとハスターと見守とクトゥルフとノーデンス……こんなものか。
ちなみに、ノーデンスとは学校の図書室で知り合った。図書室の司書として働いているらしい。
《へー? よくノーデンスが神だってわかったネー? 隠してるはずなんだけドー………何デー?》
主に勘。それと雰囲気と発言だな。
……ところで、ノーデンスはどちらかと言えば邪神だが、違う顔も持っているだろうと思うのだが……違うか?
《……あってるヨー》
そうか。まあ、ノーデンスにはまだまだ届かないし、あそこまで話が合う者も早々いないし………研究は基本的には魔眼による解析一本に絞られることになりそうだ。
私はまだ神の研究を諦めたわけではない。下級神のカテゴリに入る一部の解体と解析はしたことがあるが、それだけでは不十分だ。
私には、もっと知りたいことがある。
それは難しく、遠く、私が死に、存在が滅び、あらゆる存在の記憶から消え去るほどの時間があっても叶わない可能性が高い。
……だが、それがどうした。可能性が低いなら低いなりにやればいい。ゼロでなければ十分だ。
私は知識が好きだ。他の者から与えられた知識ではなく、私自身の手で探し、見付け出した知識を集めることが好きだ。
そのためならば荒事に首を突っ込むこともするし、必要があれば下げたくない頭も下げよう。
確率が低いなら引き上げる。引き上げなくともその低い確率を掴めばそれでいい。
何をしてでも。
……さて、研究を続けよう。世界の未知を既知へと変えるために。
未知と言う道は終わらない。終わったように見えたとしたら、それはただの知識の不足か諦めだ。
既知の道が途絶え、未知がその先を覆う全ての世界で。私は未知を既知に変えるために歩き続けよう。
この身が朽ち果て屍を晒し、私の全てが失われるその時まで。
ただ、ずっと。
…………こんな私のことを、手伝ってくれるか? ナイア。アザギ。
《……ふふふふふ……もちろんだヨー!たとえフルカネルリが嫌がったとしても、勝手について行くサー!》
『……ふふふふふふふふふふふふ………当たり前でしょぅ……? わたしはぁ……瑠璃が、好きなんだからぁ……ねぇ……♪』
…………そうか。そいつは、実にありがたいことだな。
……ああ、実に……ありがたい。
フルカネルリの野望。神を含めた全てを既知にすること。