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2-67

 

フルカネルリだ。夏休みに入っての恒例行事だが、白兎達の宿題を見てやることになった。


『……降霊行事ぃ……?』

《恒例行事だヨー。幽霊降ろしてどうするのサー》

『……好例行事ぃ……?』

《むしろ悪いと思うヨー》

『……高齢行事ねぇ……?』

《恒例だってバー。人間がいきなり歳取ったらビックリだヨー》


何を二人でふざけているのやら。


「瑠璃ぃ……助けてぇ……」

「お願いします瑠璃様!どうか!どうか!」

「……わかったから頭を上げろ鬱陶しい。写すなり答え合わせをするなり好きにしろ」


すると白兎を先頭とする全員が嬉しそうな顔をして、もう一度頭を下げた。


「ありがとうっ!さあみんな!瑠璃大明神様が貸してくれたよっ!やることはわかってるよね?」

「はい!適度に間違えながら写します!」

「作文は文の順番を入れ換えて書きます!」

「よろしい!それでは諸君、汚すなよっ!」

「「「アイ、サー!」」」


…………白兎ならばマムだと思うが……。まあ、わからんか。


《キャラが変わりすぎだと思うんだけどナー?》

『……良いじゃないのぉ……そんなことも、あるわよぉ……』


そうだな。




白兎達が全速力で書き写している間、私は図書館から借りてきたセラエノ断章の写本を、軽くだが解析した原典の内容と擦り合わせてできるだけ正確に写していた。

神位共通言語ではないが、解析をして意味はわかっていたのでそれなりの速度で進んでいるが、実は相当不味いことをしているのではないかと少々不安になってしまう。


《いくら写本だからって、普通は読みはじめて数十秒で発狂したっておかしくないんだけどネー》

『……ふふふふ……♪ おかしくなんて無いわよぉ……? ……だって、瑠璃だものぉ………♪』

《……あー……》


とりあえずこれを白兎達に見せるのは辞めておこう。何があるかわかったものじゃない。

私は写本のページを捲る速度を上げて覚えてしまうことにした。白兎や古之山このやま木乃里このさとが私に聞きに来た時に開いたページを覗き見されても困る。


ちなみに、古之山も木乃里も私の友人である。フルネームは古之山 機乃きのと木乃里 竹野たけの。トランプに興じたこともある。

茸の山と筍の里と言われるのを嫌がっているようなので、そう呼ばないようにしている。


……そう言えば、そんな名前の菓子があったな。食べたことはないんだが……今度食べてみるとするか。




三日をかけて白兎達は宿題を全て終わらせた。答えがあったとはいえ、この速度はなかなか早いな。


「宿題も終わったし、遊ぶよーっ!」

「何する? 何したい? 私はウノがいいな」

「トランプ!」

「麻雀しない? 楽しいよ?」


……白兎。ルールもわからないようなこいつらを相手に麻雀はどうかと思うぞ。それ以前に卓も牌も無いのにどうするつもりだ?


しかしどうやったのか白兎の鞄の中からは牌と点棒のセットと雀卓(!?)が出てきた。この町……と言うか邪神学校の生徒ではこういった特殊能力なようなものが割と普通にあるとは言え、ここまで物理法則を無視できる能力を見たのは初めてだ。


「凄いね白兎!なんでできたの?」

「うーん………こうしたいって思ったらできたから……わかんない」

「そっかぁ……ちっ!残念!」


……なぜこいつらはここまで能天気なんだ。家の母や父にも言えることだが、理解できん。

そのくせ能力の秘匿にはきっちりしているし……と言うかこの世界にはそう言った特殊な力は無いのではなかったか?


《クトちゃんやクトゥグア、アブホース達が皆に力を少しだけ貸してあげテー、その人が死んじゃったらちょっとだけ強くなった力を返してもらってるんだヨー。貸してあげる時に意識に悪用禁止とか秘匿とかはちゃんとするようにって暗示みたいのをかけてるのサー》


……そうか。そうすると私の父と母にもそう言った能力があるのか?


《あるヨー。お母さんの方は創作料理がどんな下手物を使っても食べられる物になる能力。お父さんには右手と左手を同時に思い通りに動かすことができる能力があるのサー》


……………そうか。


『……ある意味、凄い能力ねぇ……』

《ある意味ネー。ちなみに白兎ちゃんのお母さんには弓矢の射程距離内なら確実に狙ったところに当てられる能力があるヨー》


……ああ、白兎の家の一階に置いてあった賞状はそれか。なるほどな。どうりでこの町に有名人が多い訳だ。

例えばマラソンで世界記録を持っている御歳六十二の爺さんや、毎試合ハットトリックを決めることで有名なサッカー選手の自宅もこの町にあるし、いくつも特許を持っている発明家の生家も、世界最高と言われるパティシエの実家も、全てこの町の中にある。


それについては外の人間達が気付いても気にならなくなるようになっているし、学校と結びつける者はほとんどいない。居たとしてもすぐさまそれが気にならなくなり、記憶がまるで水にとけてしまったかのように薄まり、その事実を認識したままどうでもいいことだと思ってしまうようになっているようだ。


…………明らかにクトやクトゥグア達が何かしているが、私に害があるわけではない……私にとってはむしろいいことなので流している。


《ちなみにそれについてはボクも協力してるヨー》


そうか。





  フルカネルリはこの町の秘密を知った。





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