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2-66

 

フルカネルリだ。夏休みに入って暫くしてから図書館に行ってみたのだが、奇妙な本を見付けた。禍々しい気配がするのだが、はたしてこれは読んでも平気なのだろうか?


《題名ハー?》


ふむ………セラエノ断章、と書かれているが………聞いたことのない題だな。今月の新刊と言うわけでもないようだし、何なのだろうな?


《セラ……あいつかぁ………まあ、確かにあいつならフルカネルリを気に入りそうだけドー……》


知り合いか?


そう聞くと、ナイアは困ったような顔で頷いた。


《……嫌いじゃないんだけドー……悪い奴じゃないんだけドー………なんだかナー……》

『……セラエノ断章………ハスターかしらぁ……?』

《だからなんでアザギはそれを知ってるんだヨー!?》

『……うふふふ……秘密よぉ……♪』


ハスター? 本から漏れ出している気配からして……風の邪神か?


《……そうだヨー。イタクァよりはいいんだけドー……まあ、ドSだネー。それも精神から責めて泣いてる顔を見るのが好きなタイプのサー》


イタクァの方は?


《イタクァはあれはただの外道と言うカー……鬼畜と言うカー……暴力を振るうことに生き甲斐を感じる脳筋馬鹿かナー。前に嫌がるツァトゥグァを引き回そうとして先生にイロイロされてからは少しだけ良くなったけドー》


ふむ。付き合いは持ちたくないな。

だが、ハスターと言う方には会ってみたい。読めば良いのか?


《開いてから言うことじゃないよネー? 読み進めながら聞くことでもないよネー? いやまあ写本っぽいからまだいいけどサー!》


そうか。これほど強い力を持っているこれすら写本なのか。


《そうだヨー。本物は壊れた石板の形をしてるからネー》


………………もしや、あそこで額に入って飾られているあれか?


私の言葉に反応して、ナイアはゆっくりと指差した方向を見る。


《……あれだネー》


……やはりそうか。………………読んでみても平気か?


《う~~~ん……フルカネルリならまあ……平気……なのかナー?》


よろしい、ならば解析だ。封印中であるために、大して深いところまで見ることはできないが、今はそれでも良い。


じっと見詰めながら解析して、そのまま三十分。ようやく表面の解析が終わった。


『……いあ いあ は』

《やめようネー?》

『……仕方ないわねぇ……』


ナイアとアザギは何をやっているのかわからないが、ナイアの態度を考えるとあまり良いことでは無いようだ。

………さて、読み終わったのは良いが、肝心のハスターとの接触方が書かれていない。どうするか…………。


《そんなに会いたいんだったら生物実験室に行ったらいいんじゃないかナー? ハスターってあの解剖大好き先生だかラー》


先に言え。




「……と、言うことで会いに来たんだ」

「本当に私に会いに来るかね普通。お茶でも飲むかい? 筋弛緩剤入ってるがね」

「フルカネルリに手を出したら刻み潰すぞハスター」

「おやおや怖いねえ。安心したまえナイアルラトホテプよ。クトにもクトゥグアにもアブホースにもクトゥルフにもロイガーにもツァールにもツァトゥグァにも、生徒達に手は出さないようにと言われているからね。筋弛緩剤だってこれほど可愛らしい少女が動かない体を必死に動かして私から逃げようとするところを観賞しようとしただけさ」

「……趣味が悪いな、ハスター」

「全くだな……ってフルカネルリー!? なに普通にお茶飲んじゃってるのサー!?」


どうせ効かないだろうと思ってつい。


「効くのか?」

「いや効かないけどサー……」

「……ふむ。なるほど!つまらないが面白いな。気に入った」


何が琴線に触れたのかはわからないが、気に入られてしまった。


「一応言っておくが、私は痛いのは嫌いだ」

「安心したまえ。君にそういった方向のことは求めていないさ。友達付き合いをしようと言っているだけだ」

「……ハスター。頭打ったノー? 保健室のクトゥルフのところ行っといた方がいいんじゃないかナー?」

「私は正常だ」

「元々イカれていそうな雰囲気をそこはかとなく漂わせておいて、いったい何を言っているのやら」

「私はイカれてなどいないよ。ただ、相手を精神的に追い詰めた時の恐怖や絶望に歪んだ顔が大好きなだけで。泣き顔も良いね」


ああ、なるほど。こいつは変態か。






クトの学校で教師をしている理由は実に簡単。ただの暇潰しと、趣味だ。

教師となれば生徒は必ず会わなければならないだろうし、話をすることもある。


ただその時、もし私が『学校中で有名な怖い先生』だったとしたらどうなるだろうか。


答えは簡単。怖がり、時に震え、泣きながらも私のところに来ることになるわけだ。

それが嫌でサボるのならば、それを理由に呼び出しをかけても良い。私は自分から手を出すことはないが、相手が勝手に私を怖がって怯えるのを止めることはできないからな。勝手に相手が怯えただけだ。


しかし今私の前にいる娘は私に怯えない。ナイアルラトホテプから話は聞いているだろうに、薬が入っていると言って出された茶を飲んでいる。

……いや実際は入ってないが。入れたらクトに涙目で怒られてしまうからな。どうも私はあれだけは苦手であるらしい。


……ふむ。久し振りに加虐対象と昔馴染以外に興味を持った。

勝手で悪いが、契約させてもらうとしようか。答えは聞いていないが、まあ、悪いものではなかろ?




  フルカネルリは‘風神の加護’Lv1 を受けた。風に対する抵抗と親和値が上昇しました。


特殊:自由を司る風により、強制契約が効きづらくなりました。


  ‘邪神の加護’がLv4になった。



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