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異世界編 2-83

 

フルカネルリだ。朝になり、ナギとディオの二人を見かけたのだが……。


「……ふむ。どうやら昨日はお楽しみだったようだな?」

「なぱっ!?」


おや、図星か。


「な、ななな、なー!?」


あまりの驚愕と羞恥によって言語中枢に何か不具合が出たのか、ナギは訳のわからない言葉を繰り返している。

……ふむ。これは……


「何でわかったか、か。とりあえず、本気で隠す気があるのなら私と会う前に風呂に入っておくべきだったな。性臭が酷いぞ?」

「ふぇっ!? そ、そんなにですか!?」


自覚は無しか。ここまで強ければ私もハヴィラックもプロトもわかると思うのだがな。


「それと、首に虫刺されのような赤い痕がついているぞ? せめて隠したらどうだ?」

「あ、あわわわわわっ!?」


ナギは焦って首の痕を隠そうとするのだが、隠しきれていない。やれやれ、鏡は部屋に一つは備え付けてあるのだから、気付いていてあえて見せつけているのだと思っていたのだが、どうやら違うらしいな。


「ついでに言わせてもらうと、声をあげすぎだ。この家は内部の防音などは全く考えられてはいないのでな。恐らくハヴィラックの部屋にもプロトの部屋にも聞こえていただろうよ」

「――――――――ッ!!!」


ついにナギの顔が真っ赤になってしまった。本当にあれは大声だった。隠す気は欠片もないと思っていた最大の要因もこれだったのだが。


「最後に、この家で暮らせば普通が尻尾を巻いて逃げていくからな。普通でなければその程度はできるさ。今度から気を付けるんだな」

「……うぅ…………はい……」


それだけ言って、ナギは食卓に突っ伏してしまった。腰が痛いのか? まったくディオの奴は。相手は初めてなのだから、加減してやれと言っておいただろうが。


「安心しろ。ディオのやつにはしっかりと責任を取らせてやるさ」


これを聞いたナギはまた赤くなり、ぷしゅうと頭から煙を出してしまった。

……やれやれ。純情だなこの娘は。そう思いながら私は砂糖とクリームのたっぷり入ったコーヒーに口をつけた。




それから少しして、いまだに顔が赤いナギの隣にディオが座る。


「母さん。私は結婚することにしたよ」

「お前の人生だ。好きにしろ」


相手は言われなくともわかるので聞かない。ディオがそこまで執着を見せたものは初めてだし、ナギの性格や性質も少しは理解しているつもりだ。

……まあ、私程度では一目見ただけでその人間を完全に理解できるわけではないが、それでもな。


《謙遜しすぎだと思うけドー?》


そうか? 私としてはこのくらいの評価でいいと思ったんだが……そうなのか。


まあ、ディオの結婚については向こうから言い出してくれたお陰でわざわざ発破をかける必要もなくなった。ナギがまた慌てているが、ディオはそれも可愛くて仕方がないらしい。


「よし、とりあえずお前達、旅行に行ってこい」






「よし、とりあえずお前達、旅行に行ってこい」


またいきなりフルリさんに言われた言葉に私たちは言葉をなく


「わかった。この大陸だけか?」


……訂正します。私は言葉をなくした。きっとディオさんはフルリさんのこういう発言に慣れてるから平気なんです。


「ああそうだ。少し気の早い新婚旅行のようなものだな。……私はその間に、ディオに知識を埋め込む術式の調整をしなければならないしな」


し……新婚旅行……ですか……。って、最後にすごいこと言いませんでしたか?ディオさんに知識を埋め込むって……。


フルリさんを見てみると、どうも本気で言っているみたい。ディオさんもそれに反抗するそぶりは見せない。

……え、えっと……私が変なんでしょうか?


「とりあえず、こちらの常識はあっちでは通用しないのだろう? ならばその辺りを教えてやる必要があるだろう。幸い私は向こうが出身なのでな。多少おかしいかもしれんが教えてやれる」

「へー、そうなんですかってえぇ!?」


フルリさんも私と同じ世界の出身!? 初耳ですよ!?


「言ってないからな。だが正確には同じではなく、とても良く似た世界の一つだ。私のいた世界には魔力などはなかったが、ナギの世界には魔力があることも確認している」


…………フルリさんはどこまで私を驚かせれば気がすむんでしょうか? 驚きすぎて心臓が止まっちゃいますよ?

……心臓が止まってもフルリさんなら難なく治してくれそうですけど。

それと、今さらですけどナチュラルに私の考えを読むのをやめてください。本当に心臓に悪いんですから。




『ところで、私もナギ殿の世界に行くって事はできないのかい? 一応ディオさんとナギ殿のペットを自認している身としては、御主人様と一緒の場所に居たいんだけどね? ちなみにこっちの世界は私の分霊を残していくし、こっちの世界から本体である私が消えれば残していった分霊が本体になってくれるから大丈夫だよ? これでも一応風の精霊達の王なんて言う物も兼任してるからね。ちゃんと考えてあるさ。……駄目かな?』


ウルシフィがそんなことを言っているけれど、どうしましょうか?

私としてはウルシフィにはお世話になっていたと言うこともあるし、連れていっても良いとは思うんですけれど……人(の形をしている何か)をペットにしているっていうのは、ちょっとどころじゃなくまずい気がしますし、フルリさんが送ってくれるか、術式は平気なのかといった問題があるんですが…………。


『人の形をしたものをペットにしちゃいけないって言うんなら、私は猫型になるよ? 風は元々不定形、形をとった私だってちょっと気合いを入れれば外見くらいちゃちゃっとかえられるのさ。で、ディオさんは猫がいい? 犬がいい? 私はどっちにだってなれるよ? もちろんそれ以外にだってなれるし、人型に戻るのも自由自在だから安心してね? だけどディオさんやナギ殿、フルリさんになるのだけはやらないよ? たぶん困ると思うしね』

「……まあ、ディオやナギが良いと言うのなら送ってやるが……」


あ、殆どの問題が消えましたね。フルリさんも送ってくれる気があるみたいですし、動物になれるんだったらペットとして飼うのにも問題はありません。


……後はディオさんが良いと言ってくれるかどうかの問題ですが………。


「ナギ殿が良いなら構わん」

「あ、じゃあオッケーですね。フルリさん、よろしくお願いします」


そう言って頭を下げると、フルリさんは少しだけ微笑みながら了承してくれた。





  ディオとナギの婚約話、そして気の早い新婚旅行。



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