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異世界編 2-80

 

魔王の城に突入しようと思ったのだが、私とナギ殿の起こした爆発で跡形もなくなっていた。当然のごとく、魔王の姿も死体もない。


……いや待て、相手は魔王だぞ? 確実に私よりは強いだろうし、最底でも母さんほどはなくともプロト姉さん程度の実力はあると考えていたのだが……。……隠れて私達の隙を伺っているのか………?


『……いや、あのね。なんか消し飛んだみたいだよ? 私はそこに空気があればそこのことがわかるから言うんだけど、いきなり城の中の空気が薄くなって昏倒したところに太陽顔負けの炎と爆発。魔力で障壁を張ろうにも酸欠で頭が回らないから間に合わなかったみたいで、もう灰すら残ってないよ?』


……………………なんだ、母さんですらただの研究馬鹿と名乗る中で魔王等と高尚な名を名乗っていたのだから、もっと強いと思っていたのだが……名前だけだったか。


「……えっと…………終わり……ですか?」

「……そのようだ」

「……はぁ……なんだか拍子抜けです」


私もだ、という言葉は飲み込むことにして、焼け野原を通り越して熔岩となっている平野を上空から見下ろす。

母さんだったら、あの熱量も爆発も、その前の酸欠すらも無視して跳ね返しそうだ。そう思うと、なぜか笑いが込み上げてくる。


「ナギ殿」

「はい?」


きょとんと私を見つめているナギ殿に、笑いかける。


「約束だ。私の育った大陸を案内しよう」




ナギ殿の手をとって、三人で空を飛ぶ。目指すは、私の育った母さんの国。結晶の樹が並ぶ森と、そこに棲む優しい結晶の獣達が守る島。


「……結構、時間がかかるんですね」

「それはそうだろう。他の四つの大陸と違い、これから私達が行く大陸は母さんが作った大陸だ。他の大陸とはかなり離れているし、結界まで張ってあるのだぞ? それでも土の大陸からだから、まだ近い方だ。…………見えてきたぞ。あれが母さんの大陸を守護し続けてきた大結界。通称、見守の守護結界だ」

「……わぁ………」


ナギ殿が小さく歓声を上げる。まあ、それも理解できない事は無い。

普通に見ようとしても何も見えないその空域には、魔力によって常に変動し続ける術式がびっしりと描かれている。そして私もナギ殿も、魔力が存在しているところと存在していないところを見分けることができるのだから。


久し振りに見た大結界は、まさに芸術。母さんらしく実用性のみを追求したその術式は、解析するよりも早くその姿を変えてしまい、外側からも内側からも破壊を困難にしている。

様々な紋様を描き、常に自己修復と進化を繰り返している大結界の全ては母さんに繋がり、外側のことを内側にいる母さんに伝えていると聞いた。


私は思いきり息を吸い込み、その動きを見たナギ殿は慌てて耳を塞いだ。


「母さーーーーん!!ただいまーーーーっ!!!」






フルカネルリだ。どうやらディオが嫁とペットを連れて戻ってきたらしい。息子の成長ぶりには感無量だ。


《でも泣かないんだよネー。なぜならそれがフルカネルリだかラー!》


そうかもしれんな。嬉しいときには笑うさ。嬉しくないときには大概無表情だが。

……さて、緑翼にディオを迎えにいかせるかな。私は久し振りに手料理でも作って待つとしよう。


……ナギのために日本料理を作っておくか。私の研究生活のためにも、息子の嫁には優しくしてやらねば。


「ハヴィラック!プロト!ディオが嫁とペットを連れて帰ってきたぞ!」


ドタタタ バスン!パリン!ハヴィラック!? 何やってるの!? も、申し訳ありませんお嬢様 もういいから!早くお母さんのところに行くよ! は、はい!


……何をやっているんだか。


《ブラコンお姉さんがいきなりそういうことを言われたらびっくりすると思うヨー?》

『……心臓がぁ……停まっちゃうかもねぇ………ふふふふ……♪』


無いと思うがな。





  ディオの帰還&嫁参上に、荒れる二人と荒れない者達。




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