1-14
次からは小学校編です
フルカネルリだ。今年の四月から私も小学生だ。中々に喜ばしいことではないか?
《これであげようと思ってた能力をまたちょっとあげられるヨー》
……おお、そういえばそうだったな。
《忘れてたノー!?》
いやいや、そんなことはないさ。ただ、今ある能力以上のものをこれまでに求めるようなこともなかったのでな。意外だった。
《………あっそ、別に良いけどネー》
そうか。
とりあえず入学式に着ていくものはパンツスーツになった。というか、してもらった。
スカートは嫌だ。絶対に嫌だ。下着? 聞くな。私にはあれで限界だ。
《フルカネルリにスカートってけっこう似合ってたけどネー》
五月蝿い、蟹の鋏に頸動脈を切断されて死ね。もしくは熱濃硫酸のプールに溺れて皮膚から内蔵から骨からドロドロにされて死ね。
《まさかの二種類!?》
大丈夫だ。お前ならば死んでも何かしらの方法で生き返ってまたバカなことを言い始めるだろう。
《……いやまあその通りなんだけどサー………》
そうだろう?
ところで、この国には妙に祭り事が多い気がしてならない。
《まあフルカネルリにとってはすっごく多く感じるだろうけど、この国にとってはそれで当然なんだヨー》
つまりは慣れるしかないということか。
《そういうことサー》
そうか。
…………ああ、それと一つ頼みがあるんだが。
《なにかナー?》
……私の母が私に着物を着せようと画策しているようなんだが、何とかならないか?
《……やらないヨー?》
………そうか、残念だ。
「瑠璃ちゃーん!ご飯だよー!」
おや、もうそんな時間になっていたか。
私は自分の部屋を出て食卓へと向かう。……この階段は小さな体では色々と危ないな。
とてとてと足音をたてて母の元へ近づいて行く。するとコンロに置かれた鍋からはなんとも言えぬ良い香りがして、私の胃がくきゅうとなった。
……また今度、母に料理を教えてもらうことにしよう。未来のために。
《もうすぐ必要になると思うしネー》
………待て、どういうことだ?
《ん? あれ? 言ってなかったっけナー?》
ナイアは私の問いに不思議そうな雰囲気の反応を返した。
《前から決めてあったんだけど、フルカネルリの十歳の誕生日に異世界旅行をプレゼントすることにしてるんだヨー》
……初耳だ。
なるほど、確かにそれならば料理も必要になる。それに今すぐでは死んでしまうかもしれんし、今からおよそ五年があるのだから新しくもらった力についても少しは慣れているだろう。
……だが、時間はどうするのだ? そのときになっても私はまだまだ子供の体であり、長い外出や泊まりなどは許してくれそうもないぞ?
《そこら辺は大丈夫だヨー。ボクはこれでも邪神だからネー、時間操作ぐらい片手間でできるのサー》
それは凄いな。
《すごいだロー!》
ああ、凄い。
ところで、長くしてどの程度で、こちらではどの程度の時間が過ぎるのだ? それと、時間をいじるのは良いが、私の体の成長はどうする?
《それも大丈夫だヨー!行った先で流れる時間はこっちの時間の実に5256000倍!向こうの世界で十年暮らしてもこっちでは一分しか過ぎないのサー。帰りたいと思うか死ねばこっちに帰ってこれるヨー。死んで帰ってきた時には向こうの世界の記憶の半分が消えちゃうけどネー》
初めから死ぬ気はなかったか更に死ねなくなったな。
《さらに体については身体能力と記憶以外は成長しないヨー。簡単に言っちゃえば不老になるヨー》
恐ろしいな。だが死ぬんだろう?
《まあ首跳ねられれば死ぬネー》
それは仕方がないな。
他にも色々と聞いておきたいことがあるのだが、かまわないか?
《良いヨー、何でも聞いてネー》
そうか。それならばまずは………………
……………ふ、フルカネルリの知識欲をなめてたヨー。まさか話はじめて二時間以上も質問が続くなんて思ってなかったヨー。
向こうでも能力は使えるか、とかそんな簡単な質問から向こうで自分が手に入れた能力や技術、道具などはこちらに持ってこれるのか、持ってこれたとしてちゃんと使えるか、そんな質問までいーっぱい質問されて、少し疲れちゃったシー。
ちなみに能力は使えるし道具や技術は持って帰ってこれるけど、置いとく場所は自分で何とかしてネー、って感じかナー。
記憶については、フルカネルリの脳の容量はもはや人外って言っても何らおかしいところが無い位には多いから心配はいらないよネー。
…………だって、十八個くらい同時に神位共通言語でかつかなりの速さで思考をしながら外でお母さんやお父さんと楽しくご飯を食べながらお喋りできるんだヨー? しかもそのまま三千年暮らしても脳の容量の一割も埋まらないし、何より………まだ容量増えてるしネー。
このままじゃ中の上級の神相手に思考速度で勝てるようになっちゃうんじゃないかナー? 教えたのボクだけどサー。
この成長は体が十八歳になるぐらいまで止まらないんじゃないかナー?
……………あれ、異世界に行ってる間も増えてくってことかナー?
………まあ、良いよネー。別に困ることでは無いわけだシー。
それじゃ、頑張ってネー、フルカネルリ?
フルカネルリの人外っぷりに少し引いたナイアのとある午後四時頃。