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異世界編 2-68

 

フルカネルリだ。ナギとやらと試合をしようと思ったのだが、全力で棄権されてしまった。かなり力を抑えて良い勝負をしようと思っていたので、残念だ。


《本音ハー?》


異世界の者が使う魔術や異世界人の体の組成の研究・解析ができないのは残念だ。こうなったら闇討ちして気絶させて解析するしかないな。


《やめてあげテー! あの娘はフルカネルリの子供の奥さんになるかもしれないんだヨー!?》


…………なに、殺しも壊しもしないし、傷一つ付けないから平気さ。記憶にも残らないだろうし、見ている者がいない時にやってしまえば…………。


『……そこまでよぉ……ナイアがぁ……信じちゃってるわぁ…………♪』


……なんだ、ナイアは本気にしていたのか。


《フルカネルリの冗談は冗談に聞こえないから恐いんだヨー!》


……おや? どこかから‘ナイアだけはそれを言うんじゃねえ!?’という声が聞こえたような気がするな?


《……き、きっと気のせいサー!》


そうか?


《そうだヨー!そうに違いないヨー!!》


…………まあ、そう言うならそれでも構わないがな。


『……ふふふふ……♪ ……瑠璃は、優しいわねぇ………♪』




話の中心となっていたナギとやらは、ディオと一緒にこの町を出ていた。どうやら私から逃げようとしているらしく、かなり速い。


……まあ、転移すればすぐさま追い付ける程度だが、このような速度を出せるという事は、元々の体の作りがかなり良いか、もしくは馬鹿魔力で身体能力の強化をしているか、はたまた相当燃費の良い魔術形式で身体強化をしているかのどれかだろうな。

ナギとやらの体から発散されている魔力を見てみる限り、最後のがもっとも確率が高そうだが。


……まあ、何でも構わん。目的地はわかっているし、先にそこに行ってしまおう。


目的地はツェセム火山。炎の精霊の王の住む場。

……しばらくは暇になるだろうし、溶岩の海で釣りでもしているとしよう。マグマリザードは火鼠の肉団子かフレイムウイングの手羽先で釣れるからな。上手く事が運べば今日の夕食はマグマリザードのステーキと煉獄花れんごくかのサラダを食べる事ができるだろう。


《……煉獄花っテー、実はすっごく辛いんだヨー。フルカネルリみたいな大の辛い物好きじゃないと食べられないくらいにネー》

『……とかげのほうは、結構美味しいのにねぇ……?』


辛い物好きであることは認めるが、私は甘い物も好きだぞ? いわゆる両党と言うものだな。




ツェセム火山の溶岩に炎属性の糸と針を垂らし、しばらく待つ。餌として火蟹を擂り潰した物を使っている。

火蟹は真紅の殻を持つ十五センチメートル程の甲殻種で、食べられないことはないが調理無しだとえぐみが強すぎて食べられたものではないほどに不味い。

毒は無いし、調理してしまえば実に美味いのだが、一体見付ければ五十体は居ることを覚悟しなければならないという火蟹は数が揃うと厄介になることで有名だ。

私としては踏み潰してしまえば擂り潰すときに楽なので関係無いが、この世界の多くの人間達はこの火蟹が百居れば命を捨てることを覚悟するらしい。


……よくわからんな。


………お、獲物がかかったか。

そう思って竿を上げると、見事にマグマリザードがかかっていた。

今夜の夕食のメニューが決定したな。






私は今、全速力で走っている。それというのも、ディオさんに教えてもらったフルリさんの修行のしかたがあまりにも酷すぎて、さらにそれがもしかしたら私にも降りかかってくるかもしれないとディオさんが言ったからです。


ディオさんは言いました。


「母さんがナギ殿に修行をつけることになったとしたら、まずは基礎からになるが……ナギ殿ならその部分はかなり飛ばされて次に行くことになるだろうな。次は実際に戦闘をして、精神的にも肉体的にも三桁ほど殺されて治されてを繰り返される事になるだろう。私も通った道だ。諦めて殺されるといい。私も付き合うぞ?」


その時のディオさんの瞳の諦めの光を見た時に、本当にディオさんはそんな修行(虐殺の間違いでは?)を潜り抜けてきたと理解しました。

逃げても逃げても無駄だとは思いますけれど、私はディオさんを連れて必死になって走ります。

目指す場所はツェセム火山。炎の精霊王が存在するところ。きっとあそこなら、いきなり修行と言う名の蹂躙は始まらないでしょう。


…………きっと。


「正直、無駄だと思うがな」

「わかってますよそんな事!それでもきっと、人間はそんな理不尽に抗うために!そのために生きて、力をつけているんです!今使わないでいつ使うんですか!!無駄だとしても、諦めちゃダメなんです!!」


あ、いま、私かっこいいこと言った。こんな状況じゃなかったらもっとかっこよかったんだろうけど……必死だし、きっと問題ないと思います。


『それじゃあ私と契約しとかない? 風で後押しすれば少しは速くなると思うけど、ナギ殿はキスは嫌なんだよね? まあ、実は近くに一週間くらい居ればキスはしなくっても平気になるんだけど。額にちょんと指あてて、契約したいって思えばそれで完了。だからキスが嫌ならカルシフェルの意識の届く範囲内にしばらく居ればキスはしないで済むようになるけど? ちなみにカルシフェルの意識の届く範囲って言うのは火山の火口から麓までだよ。ただ、火口から離れれば離れるほど影響力が低くなるからね。火口近くだったら五時間くらいで終わる事もあるだろうけど、麓だと一月くらいかかることも視野に入れておかないとね』

「そういうのはもっと速く言って!!」

『丁寧語でならもっと陰湿に私の心を抉るように言ってくれないと気持ちよくないよ? 今のでも可愛いお姉さんって感じで良いとは思うけどさ。できるなら私の身体的特徴をあげつらうようなけして否定できないし今すぐ変わろうとして変わることのできないことに焦点を置いて罵ってくれると私はだらしないアへ顔さらして涎垂らして落涙するほど悦ぶよ?』


…………駄目ですねこの精霊王。速くなんとかしてあげないといけないかもしれません。



  この後、鼻唄を歌いながら溶岩に釣糸を垂らすフルカネルリを見て絶望しかけることをこの時点では知ることの無い寺島渚の逃走。(長ry)




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