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異世界編 2-63

 

ようやく一回戦の第一試合が始まりました。

……始まったのですが…………。


「……なんだか、皆さん遅くありません?」


どうしてか、戦っている皆さんが妙にゆっくりに見えるのです。何ででしょうか?

私が考え込んでいると、ディオさんがその答えを教えてくれた。


「向こうが遅いのではなく、私達が早いんだよ。それに戦闘時ならもっと遅く見えると思うぞ」

「……え………手を抜いているとか加減しているとかそう言ったものではなく?」

「それも無いとは言えないが、回避に無駄な動作が多すぎるし体重移動がぼろぼろだ。これでは動作を完璧に制御した時に比べて七割程度も出せないだろうな」


……すごいなぁ。どうしてそんな風にわかるんだろう?


「……よくわかりますね?」


私がそう言うと、ディオさんは苦笑しながら答えた。


「ナギ殿もいつかできるようになる。なりたいと思い、修行を積んでいればな」




三回戦。私の出番になった。ディオさんに励まされて会場に出た私は、大観衆に気圧されそうになる体を叱りつけて足を進める。

対戦相手は22歳くらいのお兄さんで、使う武器は両手用の長剣。鎧は皮の部分が多い軽鎧で関節を覆うことはなく、とても動きやすそうだ。

アルフレッドさんのように真面目そうな雰囲気ではなく、どちらかというと軽薄そうな印象を受ける。そして多分、その印象は間違っていない。


名前も知らないその人は、私を見て馬鹿にしたように笑う。予選があんな運がよければクリアできる物だったから、私もそうして偶然クリアしたのだと思っているのでしょう。


「お嬢ちゃん!ここは十五にもなってないような子供の来る所じゃないぜ?」


―――ほら、やっぱり。

私はそんな言葉に特に何かを思うことはない。この世界に来る前なら、そんなことを言われていたら泣いてしまっていたかもしれないけれど、今の私は違うのです。


「なんだお嬢ちゃん、怖じ気づいちまったか?」

「……私は、これでももうすぐ十八です」


私がそう言うと、何故か私の声の届いたと思われる周囲の人達が一気に静かになった。

……あれ? どうして観客席の皆さんまで静かになっているんでしょうか?


「…………マジか?」


男の人がそう言うのが聞こえる。……ああ、魔術か何かで私達の声を拾って観客席に流してるのか。


「はい。来月の頭で十八になります」


周囲から一気に怒号が響き渡った。内容は、大体私の容姿が若すぎるとか、どうやってその若さを保っているのかとか、そんな内容ばかり。

……いやまあ確かに私は童顔ですし、日本人は基本的に若く見られるらしいですけど……いったいいくつくらいに見られていたんでしょうか?


「……わーお。てっきり十三程度だと思ってたぜ………」


……そこまで若く……と言うか幼く見られるものですかね? 確かに胸は小さいですけど……。

しょんぼりしながら自分の胸を見る。日本人の平均くらい(であると信じている)トップ79のB…………こっちに来て少し大きくなったような気もするけれど、最後に測った時はそれだった。

………………わかってますよ。ちっちゃいですよ。でもあんまり言われると泣きますよ?






フルカネルリだ。ナギとやらの戦闘を見ようと思っていたのだが、見ることができなかった。全く、自分と相手の力量の差くらいはある程度理解できるようになっていてほしいのだがな。


《あっという間に終わっちゃったもんネー。しかも柄での打撃でサー》

『……結構、頑張った方じゃないかしらぁ……この世界の住人としては、ねぇ……?』


ふむ、そういった見方もできるか。確かにディオも天然ならあそこまで強くなることはできなかっただろうしな。




ディオの戦闘は更に早く終わった。やっていること事態はナギとやらと全く同じなのだが、それの速度のみを引き上げた事を行っていた。魔術を使っていなかったのがわかったのだが、それであの速度が出せるようになったと言うのは喜ばしいことだ。


……私も負けてはいられないな。さっさと終わらせられるなら終わらせるとしよう。

思考実験用の思考を戦闘用の思考に囘さなければいけないというのは、私にとってあまり良いことでは無いのでな。


開始前に術式を組み上げ、開始直後に発動できるようにしておく。内容は運動ベクトルそのものを相手の体に撃ち込むという術式もの。仮性名称は‘撃力発生術式試作三十八号、出力調整・効果範囲調整特化型’。


《そのまんまの名前だネー。もう少し捻ったラー?》


捻った結果があれだが。


《……うん、ボクが間違ってたヨー》


そうだろう?




そして開始直後に術式発動。相手は見事に吹き飛んで気を失った。しかしここでもし気絶から目を覚ましてしまった時の事を考えてあと五発ほど弱めに撃ち込んでおく。場所は眉間と人中と咽と鳩尾と内蔵全体に等しく一発ずつ。これで立ち上がってきたら今度は脳に直接撃ち込むことにしよう。


《……死んじゃうヨー?》

『……死んだら、負けになっちゃうわよぉ……?』


……そう言えばそうだったな。仕方無い、起きなくなるまで撃ち込むか。


そう思っていたのだが、なんともあっけなく試合は終わった。

……やれやれ。これでもこの大陸で中々強いものだと言うのだから情けないな。



  主人公勢一回戦突破。



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