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異世界編 2-62

 

私の試合は一回戦の第五試合。ディオさんの試合は一回戦の第三試合。フルリさんの試合は第九試合。一回戦の第一試合で勝った方と戦うことになっているみたいだ。籤で決めたらしいので、文句があってもそれはこの世界の創造神―――アリバシーヤの思し召しだと思うことになっているらしい。

……神様なんて、自分で産み出した魔王に負けるようなお馬鹿さんだと思いますけど。


「そういうことは人前では言わない方がいい。特に坊主の前で言うと、異端認定されることがあるらしいからな」


異端認定って……火炙りとかされるんですか? 怖いなぁ……。


「ちなみに母さんは一度受けたが、教皇のいる大陸をまるごと一人で滅ぼそうとして七割ぐらい削った辺りで異端認定が解けたそうだ」

「まさかの力尽く!?」


しかも大陸ひとつを七割削ったって……。フルリさんってすごいなぁ…………。

けど、そんなことしたらこの世界のバランスが崩れちゃうような気がするんですけど……。

…………あ、もしかして魔術を使って削った所を元通りにしたのかな?




昔にあった事件を思い出す。あれは確か千年以上も前のこと。あの黒い少女が異端認定を受けて自由に行動できなくなった事がきっかけの、あの事件。


内容は簡単。当時のマルシファーがいた大陸が、その黒い少女に文字通りに削り取られただけ。それだけだけれど、規模が問題だった。

マルシファーの住む湖を除く大地の八割以上が、巨大な何かによって削り取られた。削られた大地は一ヶ所に纏められていたので飛散してしまうことはなかったけれど、削り取られた側の生物も残った側の生物も動揺して争いあっていた。


そこに現れたのが、異端認定を解かれていない黒い少女。彼女はその事を自分がやった、大陸を返してほしければ異端認定を解け、と当時の教皇を脅迫した。

もちろん人間がそんなことをできるはずがないと教皇は断じ、黒い少女を捕らえようとしたが、黒い少女は笑いながらその宮殿の半分と、その宮殿内にいた物を全て削り取った。

それが異端認定を解かれるまで何度でも繰り返され、五回目でようやく教皇が異端認定を解いてその事件は終了した。


たった数時間のことだったが、私達は本当に黒い少女がこの世界をまるごと削り取ってしまうのではないかと戦々恐々としていたことを覚えている。

何より恐ろしいのが、それだけのことをやっても世界には全くと言ってもいいほど負担がかかっていなかったことだ。


通常、そんなことをしたら世界にかなりの負担がかかり、私達が必死になってその元凶をなんとかしようと奔走することになるのだが、その時は大地を司るアルシフスと風を司る私、そしてその大陸に住んでいて直接見ていたマルシファーの三人しかそんなことがあったと知らなかったのだ。

私達精霊王はこの世界そのものと言ってもいい。そんな私達ですら見ていなければ気付かないような方法で大地を削り取るというのが、どれ程の異常でどれ程あり得ないことか。


だから、私達は黒い少女の邪魔をすることは辞めた。幸い、黒い少女は邪魔さえしなければ監視をしていても何も言ってこないので一応の安定にはなった。

アリバっさんも一応こちらと黒い少女との差は理解しているようで、悔しそうにはしていたけれど実力行使に出てくることは無かった。


そして、私の前で話し合いをしているディオさんはその黒い少女の息子…………とは言え、血は繋がっていないらしいのであの力は純粋に努力の賜物なのだろう。

その事を知っても私はディオさんから離れる気はこれっぽっちも起きていない。

ある意味では良いことなんだろうけど、アリバっさんにばれたら怒られそうだ。






大会はまだ始まらない。暇なので術式を編んで待っていることにした。

昔に大陸を空間ごと別のところに跳ばして保管するだけの大したことのない術式だが、燃費を良くしてやればいつか何かに使えるかもしれない。


《何に使うことになるんだろうネー?》


ナイアが私に聞いてくるが、私も知らない。使うことがなかったとしても所詮は暇潰しだ。問題ない。



  大陸を脅したある意味魔王、フルカネルリの暇潰し。



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