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異世界編 2-61

 

フルカネルリだ。本戦出場者の名簿にしっかりと私の名前が刻まれているのを確認した。無論、ディオとナギとやらの分も確認したが、どうやらディオは準決勝で、ナギとやらは決勝で私と当たるようだ。一応、加減はしてやるつもりだが……………どの程度加減するべきだろうか?


《死なない後遺症が残らないってぐらいでいいと思うヨー?》

『……治せばどこまでやってもいいんじゃないかしらぁ……?』


…………良いな。実行しよう。




本戦出場者は全員で十七人。かなりの人数が絞られているようではあるが、今までこの世界で見てきた人間として特別強いものは少ないように見えた。

例外を上げるとディオとナギとやらの二人だが……まあ、勝つのに苦労はしないだろう。


《そりゃしないでショー。と言うかこの世界の創造主にも勝てるのに、この世界でできたものがフルカネルリに勝てるわけ無いと思うんだけドー?》


その通りだと私も思うが、何事も用心はしておくべきだ。

例えばあの異界の少女がいきなりナイアやクト達の友神達と契約してくるという可能性が無いわけではないし。


『…………どれだけ、低い確率かしらねぇ……♪』


さてな。だが、無い訳ではないだろう?


《無いと思うけどネー》


私も無いと思う。

……おや、ディオが私に気付いたようだ。手でも振ってみるか。




「……何で母さんがこんなところに?」

「私がここに来てはいけない理由は無い。だがお前の問いに答えるとするならば、いつも通りの研究だ」

「……ああ、納得した」

「そうか」


ディオに手を引かれて物陰に移動し、久し振りに話をした。見ていたので知っているが、元気そうで何よりだ。


「……ディオさん? この女の子とは、知り合いですか?」


おや、ナギとやらは今の話を聞いていなかったらしいな。全く、仕方の無い。


「ディオの母だ」

「………………へ?」


端的に言ってやると、ナギとやらは気の抜けたような言葉を発して固まった。

まあ確かに、私のような見た目は十と少しの小娘が実は子持ちでしかもその子供が自分の惚れた男ならそういった反応も当然と言えば当然か。

ナギとやらは固まった体を無理矢理動かし、ディオの方を向く。ギシギシという音が聞こえて来そうだが、私は何も聞かなかったことにする。


「……ディオさん?」

「事実、私の母だ」


ディオからその言葉を得たナギとやらは、再び錆び付いた機械のようにギシギシという音を立てそうな動きで私の方に向き直る。その姿は実に滑稽だった。


《趣味悪いヨー》

『……ナイアにはぁ……言われたくないでしょうねぇ………?』


そうだな。私より数段趣味の悪いナイアには言われたくないな。


「……ふむ、私はお前を知っているが、お前は私を知らないのだったな。ならば自己紹介から始めようか」


私はナギとやらに軽くお辞儀をしながら、この世界で使い始めた偽名を名乗る。


「初めまして、異世界の一般人にして救世主。私はフルリ=カーネル。先程も言ったがディオの母だ」






フルリさんと別れて少しして、私とディオさんはこの町に来てから使い続けている宿に戻った。

途中に賭けで負けた腹いせか何かは知らないが私たちに襲いかかって来た人達がいたはずだけれど、その事はよく覚えていない。覚える価値もなかったからだと思う。


「……ディオさん。どうします?」

「……どうしようもない。私では千年かけたとしてもあの母に勝てる気がしないのでな。精々母さんが気紛れを起こしてくれるのを待つ程度だ」

「……そうですか」


やっぱり、フルリさんにはディオさんも勝てないらしい。ディオさんより強い人がいるとは思っていなかったのだけれど、居るところには居るらしい。

しかしそうなると、この大会の後の事が心配になってくる。

大会が終われば私達はすぐこの町を出て、炎の精霊王の住む火山の頂上の洞穴まで行き、契約をしなければならない。

けれど、そこでもし私たちより強い者が私達の行く手を阻んだらどうなる? もし、炎の精霊王がバトルマニアで戦闘を挑んできたら、戦い慣れしているディオさんや精霊王のウルシフィはともかく、私はどうなるだろうか?


私は形の無い魔物との戦闘は未体験だ。魔術を使えばいいのかも知れないが、精霊王相手に詠唱をしている時間があるだろうか?

大きな怪我をするかもしれないし、それが原因で後遺症が残る可能性まある。それどころか死んでしまう可能性だってあるだろう。


……実は、それ事態は何故かあまり怖くない。

……いや、正確には怖いが、それ以上にディオさんに見捨てられるのが怖い。だから我慢できる。


ぽん、と優しく頭を叩かれる。顔を上げると、ディオさんがいつもの表情の薄い顔で私のことを見つめていた。


「……なに、ナギ殿の事は、私が守るよ。母さんは敵対しなければこちらを害することはないし、母さん以外ならなんとかなる」


…………まったく。ディオさんはずるい。

近くにあったディオさんの胸に、コツンと額を当てる。金属の輪を繋げて作られたチェインシャツのでこぼこが少し痛いけれど、それでこそいつものディオさんだ。


「……ディオさん。私、好きな人ができました」


この後に起きたことは、私の中で宝物になっている。



  ようやく思いを伝えた寺島渚の記念日。





《と言っても、好きだって言ってキスしただけなんだけどね? まったく、ナギ殿もディオさんも初なんだから。いや、正確には初々しいって言うべきなのかな? どっちにしろおめでとナギ殿。初恋は実らないってよく聞くんだけど、例外はあるみたいだね。ついでに私との契約も済ませて欲しいな。それだけでナギ殿の危険は割と無くなるしね。あと、もっと虐めてほしいかな? 私はこの世界でなら殆ど不死身だし、かなり酷いことをされても大丈夫だし、最近欲求不満気味だし、もうボロボロにグチャグチャにバラバラにズタズタにされても良いんだけどね。と言うかされたい。私に痛みを与えて欲しい。ギブミーペイン!》



  そして変態は加速する?




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