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異世界編 2-外伝1

リクエストがあったので書いてみました。

 

これはひとつの物語。

フルカネルリにねじ曲げられた、一人の青年に振り回された人達の物語。





私の名前はアブリシャス。名字は無いが親にもらったこの名前だけはしっかりと持ち続けている。

職は元冒険者だったが、今では引退してギルドの受付をやっている。


……ちなみに、二十五歳の独身です。彼氏募集中。


けれど、昔の私の噂のせいで全然出会いがありません。

ちょっと頑張って一人でレッサーワイバーンの死体を漁って竜の魔石を取ってきたら、なぜか私がワイバーンを笑いながら殺して切り刻み、内蔵から引きずり出してきたっていう噂が広がって、そのせいでほとんどの人が私に向ける視線が畏怖と恐怖が入り交じったようなものに限定されてしまいました。


私だって女の子なんです!出会いも欲しいし恋だってしてみたいんです!

……って言っても現状では無理なんですけどね。


そう思いながらも仕事はきっちりと。もしかしたらこういう真面目なところがいいっていってくれる人もいるかもしれませんし。


「失礼。討伐した魔物の部位の換金はここで?」


あ、来たわね。仕事だし、ちゃんとしなくっちゃ。


「はい、承っております。まずは見積もりとなりますが、よろしいですか?」

「はい」


今回来たのは初めて見る顔の男。多分私と同じくらいね。

その男に私は魔物の部位を出すように言うと……


「すまないが、実はどこを持ってくればいいのかわからなくてね。まるごと持って来たんだが、構わないか?」

「ええ、大丈夫ですよ」


…………正直に言って、その時にそう答えたことを後悔した。と言うか、今もしている。


どこに持っていたのか、出てくる出てくる次々に。


始めに出てきたのはラクウルフ。討伐難易度が数によって激変し、一体だけならD、二体から四体ならC、五体以上十体以下ならC+、十一体以上ならBになるそれが、どんどんどんどん出てくる。


次に出てきたのはラズルマウス。これもまた数が厄介で、ラクウルフより一体一体の難易度が低くなる代わりに数だけなら確実にこちらの方が多いそれを、次から次に出してくる。何体かって? 色々混ざって覚えてないわ。あとで数え直すし、それに傷や汚れも見なくっちゃいけないしね。


更に出てくる。だんだん面倒くさくなってきたのか、一度に出てくる量が多くなってきているので細かいものはわからないけれど…………どう見てもヤバイものが混ざっている。


「……と、こんなところで」


そう言われたときにはすでに魔物の死体の山は天井に付きそうになるものが三つになっていた。


「……か、確認させていただきます……少々お待ちを……」


そう言って私はまず一山を持って(持つと言うか引きずって運んでいるだけ)奥に入り、数人がかりでその山を攻略し始めた。


まずは種類を分けて、それから大きさで分ける。大体はラクウルフとラズルマウスだったが、たまにフラットスネイクやフラットウイングと言った中級の端(中級の上の下)にギリギリ引っ掛かっている魔物があり、その度に私たちは驚愕していた。


そして一山が終わって安堵したみんなに、次の一山を持ってくる。その場の全員の顔が引きつった。

そしてまた始まる種分けと大きさ分け。たまに新しい種があるから気が抜けない。


………ん? このフラットウイング……頭がない。どう言うこと?


「せ、先輩!こんなものが出てきましたぁっ!」


そう言われて視線を向けると、そこにあったのはワイバーンの首。それも私が漁ったレッサーワイバーンではなく、本物のワイバーンの成竜のものだ。


……とするとこれは、そのワイバーンの翼の片割れ? ……何て言う化物…………。


そう思いながらも種分けを続けていると、どんどんとワイバーンの体のパーツが出てくる。もうすぐ一体分が揃う、となった所で…………またワイバーンの首が出てきた。もう一体分があるらしい。それも、竜の魔石を体内に大量に残したままのそれが。


ふっ、と気が遠くなりかけたが、我慢して更に次の山を持ってくる。周囲に絶望感が溢れ出したが、仕方がない。やるだけだ。


出るわ出るわ次から次に翼が脚が牙が胴体が。もちろん他の魔物の体もあったのだけれど、もう誰もそんなものは見ていない。

誰かがいつの間にか呼んだらしく、ギルド長もこの場に来て頭を抱えていた。


それはそうだ。こんなことができる冒険者など片手で数えられる程度の人数すらいない。パーティを組んでいるならともかく、持ってきたのはたった一人の男だ。私でもまず勝てないし、ギルド長も無理だろう。次元が違いすぎる。


それでもなんとか見積もりを出すと、なんとその金額はギルドの年間運営費の七割強に匹敵するほどの値段となった。


…………ごまかしたとしてそれがばれたら確実に殺される。けれど今すぐこの場でそれだけの金額を用意することは……難しい。


このときばかりは私も死を覚悟していたのだけれど、結果としては渡す金額は通常の半分に収まった。あとは借りになるらしいが……どんなことを要求されるのだろう?




  ギルドの受付嬢、元Sランク冒険者‘飛竜狩り’のとある日。




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