異世界編 2-43
どうやらナギ殿が旅を始めるらしい。そして何故か私が供に選ばれた。
「……駄目……ですか?」
「別に構わん。理由がわからなかっただけだからな」
私がそう言うと、ナギ殿は明らかに安堵の表情を浮かべた。
「よかったぁ……他にもついて行きたいって言う人達はいたんですけど、なんとなく目の色が怖かったり雰囲気が悪かったりして不安だったんです」
……なるほど。上司に命令されたかナギ殿を利用して名声を自分の物にしようとした者達の集まりだったか。
まあ、仕方ないと言えば仕方無いな。ナギ殿は外見だけならばどう見ても成人すらしていない小娘だ。期待していた救世主がこれでは信用することは難しかったのだろう。
私と訓練をしているうちに騎士団の方からはそれなりに信用されるようになってきていたが、流石にその他の者にはあまりいい感情を持たれてはいないようだ。
……まあ、何にしろナギ殿があちらから近づいてきてくれた方が私としても直接的な干渉から守りやすいので何かをする気はないが。
周りの者には御愁傷様と言っておくとしようか。
御愁傷様。
とりあえず団長の仕事を元団長のアルフレッド=ハーウェスに任せ、私はナギ殿に付いて行くことを王に言っておく。
王も他の貴族も何だかんだとごちゃごちゃ言っていたが、率直かつ正面から
「認めてくれないのならば離反して隠居します。そして国内にも国外にもこの国の内部情報をぶちまけます。ついでにこの場で止めようとした者全ての鼻をきっちり25サンチ凹ませます。ご安心下さい。足りなければ追加しますし、それより多かったなら一度治してから何度でもやり直しますので」
と説得したら折れた。
……ああ、説得だとも。暴力を背景にした説得もまた説得の一種だろう?
まあ脅迫とも言うが、別に構わないだろう。私に損は無い。
例えこの国から追放されることになったとしてもナギ殿を拐って行けば心残りも無くなるし、そうすることにほんの僅かの躊躇いも無い。そしてそれができるだけの力はすでに持っているしな。
結局ナギ殿が選んだのは私一人。それでは流石に不味いので後々良さそうな相手を見つけたら相手の意思を尊重しながら勧誘していこうという話になった。それまでは二人旅だな。
「なんとなく、ディオさんが居れば大丈夫だと思ったんですけど……」
良い勘だ。まあ、信用されていると思っておこう。
それに今回はほとんど離反のような状態でこの国を離れるわけだし、付いてくる者が全員向こう側の人間である可能性を考慮すると、もう戻らないつもりでいた方が良いだろうな。
……やれやれ。面倒なことだ。
魔王の住む大陸には強力な結界が張られているらしい。これを破るためにはこの世界のどこかに住むと言う四体の精霊王の力を借りなければならないらしいが、魔術師達はどこにいるかを全く知らないらしい。
神に聞くことができれば早いのだが、私は創造神には嫌われているために聞くことができない。
………ふむ。とりあえず適当に世界中を回って情報を集めてながらのんびり探していくとしようか。焦っても良いことは少ないからな。
母さんが言っていたことによると、精霊王は神とは違ってこちらに少しは好意的だし、一つの大陸に一体と決まっているから気配察知を限界まで広げてやれば解るらしい。
何でもそれなりに大きな力を持っているので探す場所がかなり限定できるとか。
……そんなものなのか?
《あいあい、そんなものでしゅ》
ミモリの神の声が聞こえた。なるほど、創造神の信託が全く聞こえない訳だな。別の神を信仰しているのだから当然と言えば当然か。
《そうそう、当然でしゅ》
なるほどな。
……そうだ、この大陸の精霊王はどこに?
少しだけ手助けがあれば簡単に見つかるかもしれない、ということでミモリの神に聞いてみることにした。
気紛れで面倒臭がりであると有名なこの神に聞いても答えてくれるかはわからないが、聞いてみるだけなら只だ。
そんな風に考えていたから、ミモリの神が私に本当に教えてくれた時には開いた口が塞がらなくなった。
《さてさて、どこにいるのかでしゅかね? ………おやおや、君の後ろの子がこの大陸の精霊王ではないかにゃ?》
くるりと後ろを振り返ってみる。すると目の前に半透明の少女が驚愕の表情を浮かべていた。
「……」
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ナギ殿。確保」
「せっ!」
「はにゃっ!?」
とりあえず確保。話は後でじっくりと聞かせてもらうことにしよう。
あっという間劇場(風の精霊王捕獲編)。