異世界編 2-41
朝になったので王の所へ。正直、あまり好きな相手では無いがそれでも一応王は王。ある程度の敬意(例え外見だけでも)は必要だ。
何しろ私は騎士だからな。騎士に忠誠を誓われていない王は基本的に無能が多いのだ。そしてそういった噂が広まると民はその国から逃げて行く。
そのため世の王族は躍起になって騎士達を膝まずかせようとするわけだ。実に面倒なことに。
騎士が膝まずいた所で忠誠を誓っているわけではないということを本当に理解しているのか?
……していないのだろうなぁ…………。やれやれ。
そんなことを考えながら私は王の前で膝まずき、最低限の騎士の礼を向ける。
「救世主が目を覚ましました」
「……ふむ。昨日には既に目を覚ましていたと報告が来ているが?」
「その後に説明をしたところ、精神的に疲労したため再び眠りましたので、それを勘違いなされたのでは?」
ああ鬱陶しい。周りの血統ばかりの糞貴族と賄賂で地位を得た屑供が騒がしすぎて鬱陶しい。
斬り刻むぞ塵屑供が」
…………おや? 急に静かになったな? まあ良い。いつものことだ。
静かになっている間に報告を全て終わらせる。まともに聞いているのは騎士団副団長、魔術師団団長・副団長、ランドリート王、そして頭の中身がガチガチではあるが腐ってはいない誇り高い大貴族と、その他私の殺気に慣れ始めた衛兵や屑貴族の一部のみ。
……やれやれ。この程度の殺気で怯むとは。あの島では確実に二日と持たないぞ?
……まあ、行くことはないだろうが。
「……以上です。次回は本人を連れて参りますので、くれぐれも、く・れ・ぐ・れ・も! 妙な行動には走らないように。そのようなことになった場合、もしかしたら手が‘滑る’ことがございます」
不敬だの反逆だのと言ってくる者達も居るが、正直に言って実に馬鹿らしい。
こうして島の外に出てしばらくになるが、私は一つ確信していることがある。
それは、私一人がいればこの国一つくらいなら三日で全て落とせるという事だ。
ちなみに母さんなら五分あれば大陸一つを消滅させられるだろうと予想している。私は無理だが。
何が言いたいかと言うと、反逆だと言われて牢に入れられようが処刑されることになろうが私は力尽くで全てを振り払って逃げ切ることもできるので、屑貴族の言葉には失笑と侮蔑の感情しか持てないということだ。
…………もし本当に私を処刑しようと言うのなら、この国ごと大陸全てを焦土に変えてしまえば私を処刑することはできなくなるだろうし、追われることもない。
正直そっちの方が楽だったりするのだが、しばらく世話になったところだし、一応もう少しのんびりしていこうと思う。
……………利用できるうちは利用しなければ勿体無いだろう?
救世主としてこの世界に呼ばれてからはや三日。王様に会ったり色んな人に会ったりしたけれど、みんな私ではなく私の立場を見ているような気がして気持ちが悪い。
泣きそうです。色々なもの(心とか精神とか人間として生きていく上で大切な何か)が折れそうです。と言うか多分ディオさんが居なければ折れてたと思います。‘救世主’じゃあなくて‘私’を見てくれてありがとう。ディオさん。
現在、簡単には殺されたりしないように修行中です。
いきなり剣を持たされた時は驚きましたが、一度も持ったことがないと正直に告げると少し驚いたような顔と一緒に剣を木剣に取り替えて振ることに。握り方をしっかりと教えてもらって振り始めた。
周りではディオさんや騎士団の皆さんが剣を振っています。凄く速いです。特にディオさん。見えることは見えますが、真似できません。
………見える? 何故あの速度の動きが見えるのでしょう?
………………ああ、召喚の特典ですかね?
振っても振っても疲れません。もうそろそろ七百回ほど振っているのですが、疲労する気配が欠片もありません。むしろ爽快です。
元の世界では体を動かすのは大嫌いだった私がこんなに動けるなんて……。
やっぱり召喚の特典ですね。もしくはこの世界の重力は元の世界のそれよりずっと弱いとか。映画でコーヤコーヤ星に降り立ったの○太くんみたいなものですか?
「……雑念が混じると怪我をするぞ」
「はい!」
怒られちゃいましたので、考え事はこのくらいにしようと思います。
………早く帰りたいなぁ…………。
‘異界からの救世主’ナギの異世界奮闘記(?)