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作者は三つは書きためておかないと怖くて更新できないアホです。


 

フルカネルリだ。ナイアに神位共通言語を教えてもらってから二週間。なんとナイアと神位共通言語で日常会話をたどたどしくだができるようになったぞ。頭は少々痛くなったがな。

《一応、言っておくけどネー? 人間がこんな早さでこの言葉を理解してそれだけで済む方が異常なんだヨー?》

そうらしいな。驚きだ。

《……驚きってレベルの話じゃないんだけどナー》

そうか。


それからというもの、なにかを理解できるようになるための時間が格段に少なくなった。何をやっていても

「神位共通言語に比べればこれくらいは……」

と思ってしまうからだ。

それだけでなく、何故か他の言語や書かれた数式、図面などの意味が何となくだがするするっと頭の中に入ってくるかのように理解できるようになってしまった。

《そのぐらいこの言葉を使えるようになれば普通だってバー。だから人間だと情報量が多すぎて良くて発狂普通で廃人悪くて生きる屍最悪即死って言ったんだヨー》

そうだったな。

《え、いやあの普通の廃人しか言ってないはずなんだけどナー?》

そうだったか? 確かに言っていたと思ったんだが。

私が軽く記憶の中に沈んでいると、……確かにナイアは全部言っていた。

となると、聞こえなくて当然程度の思いで口に出したか、ついポロリと出てしまったかのどちらかだろう。

……まあ、私にとってはどちらでも同じことだが。

たとえそれが聞こえていなくても私は神位共通言語を習おうとしただろうし、ついうっかりだろうが聞こえなくて当然という気持ちで言っていようがそれを習おうとしただろう。

と言うか、今している。そして習っている。

なんにしろ困っているわけではないし、頭痛もしばらくすれば治るだろう。

《……キミなら明日の朝には治ってるんじゃないノー?》

そうかもしれないな。

私はナイアにそう言って、母と父の布団の間に敷かれた私の布団の中に潜り込んだ。

「……おやすみなさい、お母さん、お父さん」

私が布団に入るのを待っていた母と父は、にっこりと私に笑いかけた。






すやすやと眠る瑠璃ちゃんの頭を撫でてやりながら、私と裕樹さんも布団に入る。

撫でるたびに思うけれど、なんで瑠璃ちゃんの髪はここまできれいなんだろう。

さらさらと水が流れるかのように私の掌の上で揺らぎ、しゅるりとすり抜けるときには手にひっかかることもなく抜けてゆく。

……ほんと、ただ石鹸で洗っているだけとは到底思えない髪ね。

手櫛で髪をとかす時もブラシでとかしたときも、瑠璃ちゃんの髪が途中でひっかかるのを見たことは今までに一度もない。

………自分の娘の髪に憧れるのもどうかと思うけれど、やっばり少し羨ましい。

私のも………。

そこまで考えたとき、不意に裕樹さんから髪を撫でられた。

「僕は、哀華の髪も大好きだなぁ」

………ぁあああぁぁぁあああもうこの人はぁああぁぁっ!!

私はつい緩んでしまいそうになる頬を引き締めて裕樹さんを軽く睨む。

……多分私は真っ赤になっているだろうが、それは意図的に無視する。

「……まったく。そんな風に優しい言葉でいったい何人の女性を落として来たんですか?」

私がそう言うと裕樹さんは訳がわからないと言うかのように首を傾げた。

「……女の子の心の機微はよくわからないけど、僕が今一番好きで、一番大切な人は哀華だよ」

……前々から思ってはいたのだけれど、この人は鈍いのかそれともわかっていて惚けているのか、どっちなのかしら?

………まあ、多分鈍いのよね。

それなのにこの人は私や他の人が困っているときにはいつのまにかそこにいて、迷っていたり不安になったりするとその時に一番欲しい言葉をくれる。

だからこの人はかなり人気があったのよね。特に私の学年では。

そんな風にこの人の事を思い出していると、胸の奥から暖かくなってくる。

……ああ、私はこの人のことが好きなんだなぁ…………。





   かなり重症な恋の病に現在進行形で冒されている古鐘哀華さんのとある夜の話



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