異世界編 2-21
誤字・脱字があった場合、是非ともご報告を。
それと、もうすぐ大量更新します。
多分。
フルカネルリだ。私のことをつけている相手を撒いてみようと思ったので、魔物が大量に出て危険だという森に入ってみることにした。ついでに平野ではなかなか御目にかかることは無いだろう植物などの採取と記録もしよう。
《どんな魔物が出るのかはお楽しみだヨー!》
そうだな。楽しみだ。
植物が出た。刺の生えた蔦がある派手な花だ。食人花か? ……いや、別に人とは決まっていないのか。となると食肉花?
「ジャアァァッ!」
妙な鳴き方をするのだな。あれのどこに声帯と肺があるのか、無いのならばどのようにあのような声を出しているのか、多少興味が出てきた。解析ついでに解体してみよう。毒が無ければ食べてみるのもよし。
《……食べるノー?》
そのつもりだが……なにかまずいか?
《………何でもないヨー》
そうか。
意外と食べられる。
蔦に生えた棘には麻痺毒があったが、それさえ抜いて外側の固い皮を剥いてしまえば中身は水分たっぷりの胡瓜のような味だった。普通に美味い。
《よく食べられるネー?》
大した事ではない。昔々の貧乏な頃に食べたことのある焼いただけの百足よりは見た目も味もまともだったしな。
それにこの植物の体液は棘にあった麻痺毒の解毒剤にもなるようだし、栄養もある。
……まあ、その辺りは解析したのだが。
さて、この辺りに生えている殆どの植物の解析結果を記録しておくことにしよう。見た目に始まり、色、生息地、生態、毒の有無、薬効、利用法方、特徴、備考などを考え付く限り全て。
例えばその辺りに群生しているどう見ても雑草にしか見えない草も、名前はともかく薬効はあるし、食べれば美味い。レタスのような食感だった。
その他にも根に猛毒を持つ物や異様に水分を必要とするもの、周囲の毒素を取り込むことで毒の種類が変化するものなど、多岐にわたっていた。
……この世界にこれて良かった。心の底からそう思う。
《喜んでくれて嬉しいヨー》
『……瑠璃が楽しいとぉ……わたし達も楽しくなるのよぉ……♪』
そうか。
湖を発見した。とりあえず解析してみることにした。
……ふむ。毒性は無し、十分飲めるし魚や水草等の小生物もいる。備考として湖の中心最深部に中々の水の気配がある。恐らく水の上位精霊だと推測されるが詳細は不明。よってもう少し深く解析することにする。
……解析の結果、推測はおよそ正しかったと言えるだろう。
ただ、この世界が全体的に弱ってきているようでこの世界の自然そのものとも言える精霊もあまり好調ではないらしい。
まあ、確実に私が原因だな。この世界の創造者をぼろぼろにして力を奪い取ったのだから。
……そろそろ信仰を戻してやるとしようか。見守は見守で別物として信仰させておくが、信仰を奪い取る術式を破棄すればそれで少しは良くなるだろうし、世界が強くなれば私がこの世界にいられる時間も延びる。
……とは言え、あの神がこうした情けをかけられるのは嫌がりそうだ。だがそれでも力を取り戻したくない訳ではないだろうし、この世界の事を思えば歯を食い縛りながらでも受けとるだろう。
たとえ信仰を渡した直後に襲いかかってきたり私の研究室と実験場に手を出すのならばその場でもう一度叩き伏せて見守に食わせてやればよし。
『……どうしてかしらぁ……?……あれが瑠璃に、もう一度ぼろぼろにされている所しか、想像できないわぁ……?』
《あ、アザギもそう思ウー?》
なんだ、全員同意見か。まあ、その時はその時だ。別に困るわけでも無し、その時の流れに合わせて臨機応変に行動しよう。
ここでも釣りをする。解析は終わっているのだが、実際に捌いて食してみたいと思ったのだ。
……そこでふと思い付いたのだが、針や糸を変えた場合、何かかかる獲物は変わるのだろうか?
思い立ったが吉日、と言う訳で早速作ってみることに。
この場で六種作ったのだが、今回使うものは水属性の物のみ。
作っている最中にそれぞれシミュレートしてみたのだが、火属性は水と対消滅を起こし、風属性は水を弾いてしまうという結果になったため断念。そして光属性はここではなくかなり深い海でならば提灯鮟鱇のように光でおびき寄せるだけであり、闇属性は小魚が隠れるように近付いてくるのみ。よって結果が一番わかり難かった水属性を使う。
……さて、どのような結果になることやら……。
私がこの世界に存在するようになってから、もうどれほどの時が流れたのかはわからない。
初めてあのお方に産み出され、それからずっと私はこの場所で世界の水の流れをを管理していた。
私は水の精霊。あのお方が最初にお作りになられた水の化身。そしてこの世の水の精霊を支配する、精霊王と呼ばれる身でもある。
しかし、ある日を境にあのお方の力が弱まった時から何かが狂い始めた。
私の知る限り、海の一部の海流が突如現れた大陸によって書き換えられ、多くの場所の生命が失われた。
それは今では新たな生態系を作ることによって解消されたが、その時に消費した私たちの力はあのお方から送られてくることがなく、徐々に衰退して行くしか道はなかった。
あのお方が再生し、ようやく回復が始まっても送られてくる力は微々たる物で、衰えることはなくなっても回復したとはいえないような状態が長く続いた。
そんな中で、急に私の棲む湖の中に巨大な水の力が現れ、少し手を伸ばせば手に入れることができるのならば………手を伸ばすしか無い。
それを掴み取り、口へ運ぶ。
ぱくり。と口に入れれば、最盛期の私の半分程度の強さを持つ水の力が私に流れ込んでくる。
しかしそこで、くい、と糸が引かれてそれは私の口から出ていこうとする。それが嫌で私は糸を掴むのだが、何が起きているのか私の体ごとそれは湖の外へと引き上げられた。
そしてそこに居たのは、釣竿を持ったまま不思議そうな顔をしている、黒い髪の少女だった。
…………あれ? もしかして私……釣られた?
クーボケな水の精霊王