異世界編 2-19
多分この先で皆さんの予想を裏切ります。
フルカネルリだ。大漁大漁。
《オメデトー!》
ぱぁん!と頭の隅でクラッカーが弾ける音がする。消音設定は確りと残っているらしく、あまり五月蝿いと言うことはない。
さて、早速調理して今日の昼食として食べるとしようか。
七輪に炭を入れ、その上に網を置いて火をつける。
火が大きくなるまでに魚を捌き、切身を作る。残った内臓は塩漬けにすればしばらく持つだろうし、骨や頭も粗煮にする予定だ。
醤油と味醂は素晴らしい。欠点と言えばこの世界で作ったそれは透明であるため味の調整をしにくい所だが、そんなものは味とそれまでに入れた量を覚えていればどうにでもなる。
切身に少しだけ醤油を塗り、炭火でじっくりと焼き上げる。
外側に焦げ目ができる程度まで焼いたら出来上がりだ。山葵醤油が良く合う。
本当なら火で内側から熱を通せば全体を均一に焼くこともできなくはないのだが、こういった時にそれをやると変人としてではない理由で目立ってしまうために自重した。
《……え? フルカネルリが自重?
……うん、夢だナー》
『……瑠璃……?……疲れてるのかしらぁ………?』
私が自重するとおかしいか?
《うん、凄く変だと思うヨー》
五月蝿い、シャーペンの芯を食べ過ぎて死ね。
《喉に刺スー? 胃を破ルー? それともちゅ・う・ど・クー?》
全部だ。
《言っといてアレだけどまさかのフルコンボー!?》
『……あらあら……仲良しねぇ……♪』
そうだな。
……さて、食べるとしようか。そろそろ周囲の視線が鬱陶しいし。
頂きます。
快適とは言えない船旅だったが、ここでもまた様々な事を知った。
釣りのついでに海底にも楔を打ち込んだり、その映像から狙って海草を取って味噌汁にしてみたり、魚も色々なものを釣ることができた。
ちなみに釣った魚はすぐに解析して切身にして食べた。脂がのっていて口の中でほぐれるものから身が引き締まっていて歯応えのあるものまであり、飽きることは無かった。
途中から私の真似をしてか釣りをするものが増えたが、あまりいい結果ではなかったようだ。
そのうち私の使っていた竿を売ってくれと言う者も出てきたが、丁重にお断りした。
さて、新しい知識の収集に行くとしようか。
どうも船を降りてから誰かに後をつけられているようだ。誰だろうか?
『……誰かしらねぇ……♪』
《誰だろうネー?》
……ふむ。まあ、害がなければ別にいいだろう。それに見られてはならないことをやる訳でもなし、問題無い。
邪魔になればその時にどうにかすればいいし、のたれ死ぬならそれはそれで私には全く関係無い。
わざわざ助ける義理も無し、好きにしてくれて一向に構わん。
……命の保証はしないがな?
狼の群れに遭遇した。しかし前の大陸の狼に比べて平均して小さく、その代わりに牙と爪の発達の仕方が目に見えて違う。
前の大陸の狼は、元居た世界の狼と体の大きさ以外に違いはなかったが、この大陸の狼は牙が長く延び、噛み千切ることよりも切り裂く方向に特化しているようだ。
爪は地を踏みしめる以外にも獲物を押さえつけるために通常僅かに長くなるのだが、体が小さいためかこれもまた切り裂くために丈夫かつ鋭くなっている。
恐らく同数の群れと遭遇したときの被害はこの大陸の狼の方が多くなるだろう。
……とは言っても、私にはどちらも大した危険は無いのだが。
襲い来る狼の一頭をはたき落とす。少々強すぎたのか挽肉になってしまった。次は生かしたままにせねば。
もう一頭に軽く衝撃を打ち込む。脳を揺らしたので暫くは動けないだろうが、意識は常に全体に。回復力等は実際に見てみるのが一番早い。
……と言っても深く解析してしまえばそれもすぐわかるのだが。
三体目は電撃で気絶させ、四体目と五体目は釣糸で縛り上げて捕獲。それ以外は少し魔力と害意を乗せて睨んだらさっさと逃げ出した。
……さて、それでは早速研究に入るとしようか。まずは筋肉と骨格と牙と内臓の成分調査から……
フルカネルリ研究中