異世界編 2-13
すみません、前に言ったことを早々に撤回します。
五十話所か、八十くらいは行っちゃいそうです。
……ぶっちゃけもう異世界編2だけで長編が一つできそうな…………そんな勢いです。
こうなったらほんとに独立させちゃいましょうかね? 意見を下さい。
独立した方が良いか、このままの方が良いかです。
よろしくお願いします
フルカネルリだ。とりあえず予想外の実験結果だが、他の者もそこらにいた色々な種類の虫と混ぜてから同族意識を持たせ、私の作った大陸の外側に纏めて転送しておいた。
恐らくそれらで小さな村でも作って平和に暮らしてくれるだろう。
……ちなみに人間の方は皆男だったが、混ぜた虫の方が雌だった場合、女になるようだった。これは逆も言えるのではないかと思うが、実験には至っていない。
《魂が雌のまま混ぜられてるからネー。輪廻に入ってリセットされてないんだったら女になるサー》
それに混ぜているときは肉体は形を失っているわけだし、変えるのは容易と言うわけか。
……小さくなったのは、魂の絶対量が少なすぎたからか? そしてあの体にわずかに残った魂の残滓を吸収してあの大きさまでの体を手にしたが、それ以上の大きさを保つには足りないためにそこで止まった、と。
……うむ、実に素晴らしいな。世界には謎が満ちている。
私は実に幸福者だ!
のんびりとこの大陸中を巡ることにする。食糧を気にしないでもいい旅は気楽で良いな。
《この世界なら空気の中の魔力だけで生きてけるからネー》
そうか。まあ、食べられる時には食べておくがな。
『……美味しいものを食べるのってぇ……幸せよねぇ……♪』
そうだな。美味いものを見つけたら作り方を覚えて振る舞おう。それでいいか?
《ボクはそれで良いヨー》
『……ふふふ………期待、してるわよぉ………♪』
ああ。
……と言っても、あまり期待はできないようだがな。
私の前に置いてあるのはかなり質素な食事。
この世界の金はあの盗賊から貰ったのがあるので初めて見つけた町の酒場兼宿に泊まったのだが、食事が酷い。
塩や砂糖がないのはまだ良い。私も前世では高価い塩や砂糖を買うことなどほとんど無く、素材の持つ塩分だけで生きていた頃もあった。
しかし胡椒やハーブといったスパイスも無く、ただ焼いただけと言うのは酷い。
胡椒はともかく、ハーブはこの世界では野草としてそこら中に生えているのになぜ使わない?
そう思いながら私は白衣のポケットから塩と胡椒を取り出し、恐らく近くに生息する食用できる魔物の肉だと思われるステーキに軽く振りかける。
……その時、周囲が私に注目していることに気付いたが、だからと言って何かするわけでもなく私は食事を続ける。向こうからなにかしてこなければ私からなにかすることは無い。
……む、中々美味い。食べたことの無い肉だが、身がしまっていて弾力性があり、噛む度に肉の味が口の中に広がって行く。
残念なのはその肉の美味さに胡座をかいて上を目指そうとしていないことか。
……やれやれ。視線が鬱陶しいな。私がここから離れたら確実に何かあるような気がする。
《……ないヨー。絶対に》
『…………あるわけないわよぉ……フフフフフフフ………♪』
………………そうか。
……さて、そろそろ寝るとしようか。眠っている方が思考に集中できるしな。
《お休ミー》
『……お休み、瑠璃……』
……ああ。お休み、ナイア。お休み、アザギ。
この世界に来てから殆ど見なくなったフルカネルリの寝顔。起きてるときは綺麗とかかっこいいとかそういう方が先に出てくるけれど、寝ている時は可愛らしいと言う方が合っている。
……それじゃ、行こうかナー。
「フルカネルリをよろしくネー?」
ボクがそう言うと、アザギはにっこりと優しく笑いながら答える。
『……言われないでも、わかってるわよぉ……? ………静かにねぇ……?』
「だいじょぶだヨー」
するりとフルカネルリの泊まっている部屋の壁をすり抜けて、扉の前に居る人間に指を向ける。
「聞こえないだろうけドー……死んでおくれ」
ぱん、と幽かな音をたててその男の全身が弾け、分子より細かく崩壊して行く。
完全に止まったままのその世界で、ナイアは次の男に手を伸ばし、指差す。
ぱん、と弾け、次へ。
ぱん、次へ。
ぱん、次へ。
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、…………
フルカネルリに近付く影が無くなって、ようやくナイアはいつもののほほんとした表情に戻る。
この近くに存在する意思を持つ生物は、フルカネルリとこの宿の主人、そして僅かな客のみ。
害するモノはひとつも残さず、ナイアはこの世界からもあの世からも、文字通り消滅させた。
「……まあ、こんなとこかナー?」
密かにフルカネルリの部屋に張った結界を解き、何事もなかったかのようにフルカネルリの眠る横で浮く。
『……いっぱい居たみたいねぇ……?』
「そうだネー。キミに任せればよかったかナー?」
『……ふふふふ……そうかもねぇ……?』
ふわふわと浮きながら二人で話す。フルカネルリの眠りという実験の邪魔をせぬよう音を遮断する結界を張り、その中で。
『……気付いてるんでしょうねぇ……』
「そうだろうネー。フルカネルリはこういうことには鋭いシー」
『……過保護ねぇ……♪』
「キミに言われたかないヨー」
一体の霊と一柱の神は、守護する少女が目覚めるまで、ゆるゆると話を続けていた。
フルカネルリは色々なモノに護られているという事。
目を醒まし、ゆっくりと周囲を観察する。
《あ、オハヨー、フルカネルリー》
『……ふふふ……おはよぅ……♪』
ああ、お早う。
……ふむ。随分と気配が減ったな。ナイアかアザギが何かしたか?
…………まあ、良い。食事にしよう。