異世界編 2-12
何故か今回の異世界旅行は異様に長くなりそうデス……具体的にはまだ不明ですが、五十話くらいは行きそうな勢い……
何がどうしてこうなった…………
フルカネルリだ。私の周囲で知りたいことはほとんど理解してしまったし、旅に出ることにした。無論この大陸の結界や見守はそのまま残しておくが。
《キミの好きにするといいヨー》
『……わたしたちはぁ……瑠璃に、ついていくだけだからぁ………ねぇ……♪』
そうか。
とりあえず島を出るのに空を飛ぶ。前にここの神に落とされた時のような無様なものではなく、ステルス、光学迷彩、魔術迷彩、ソニックブームの抑制、重力軽減、認識阻害……等、様々な効果をつけた物だ。
苦労したのは限界まで無駄を無くすために大気摩擦やそれによって発する熱と空気の振動を無くしたことだ。
それによって副次効果ではあるが、かなりの消音と高速化が実現された。
……飛んでいるときに鳥を何羽か捕まえて解析、解体、修復、丸焼きにしたが、問題ないよな?
《ボクにも一羽ちょうだいヨー》
『……ふふふ……胡椒だけっていうのも、良いわねぇ………♪』
そうか。……ほら、できたぞナイア。
《ありがトー……むぐむぐ……ウマー!》
……ちなみにハヴィラックとプロトは留守番だ。魔法的にも強化したため、確実に長命化したし老化も遅くなったのでしばらく帰るつもりはない。
……さて、この世界にはどれ程の謎が存在しているのやら?
とても、楽しみだ。
そう思いながら私は一番近くに存在した大陸の一番端に降り立った。
その大陸の名はエインハルトと言うらしい。どこへ行くか等全く決めていなかったため人に会うまでしばらく時間がかかったのだが、出会ってすぐに解析で知識を読み取って情報を得た。この大陸の概形や地理も理解した。
……まあ、この男の知識が外れていなければの話だが。
ついでに言うとここは随分と田舎の方で、こんなところに来るのは流刑にされた罪人ぐらいなものだそうだ。
つまり、私の銃の初仕事という訳だ。
……情報を握られれば私などすぐに殺されてしまうだろうから、見ていたものは私の研究の役に立ってもらうとしよう。
合成獣を作ってみたいと思っていたんだ。ちょうどいい機会だし、実行してしまおう。
だが魂は要らん。アザギ。
『……ふふふ……いただきまぁす……♪』
私が頭を撃ち抜いた男の魂は、嬉しそうなアザギに食べられた。
……さて、先程捕まえたこの虫と、合成しようか。
《仮面ライダーとかそんなのになりそうだネー》
さて、実際はどうだろうな? 私としてはもっと予想外になっても良いのではないかと思うがな。
存在と存在を混ぜ合わせ、主体は人に。しかし魂は虫で、体は間の子。
私の予想を外してくれよ?
見事に外れてくれた。素晴らしい♪
《珍しいナー》
そうか? 私の予想が外れる事などざらにあるのだがな?
《そうじゃなくてネー……》
『……瑠璃が、そんなに楽しそうなのはぁ………なかなか無いわよぉ……?』
《そういうことだヨー》
そうか。
……さて、この面白い実験結果はどうするか。
私の腕の中には小さな命が存在している。
……いや、比喩ではなく実際に小さな人間が居るのだ。簡単に言ってしまえば、妖精サイズの人間だ。
ただし背中に虫のような透き通った羽が生えているし、魔法の力もかなりあるため、恐らく本当に妖精のようになってしまっているだろうが、それでも人間だ。
ちなみに記憶の方はほぼ完全に消滅した。しかし過去や個人、個体のこと以外は覚えているらしく、恐らく話すことはできるだろう。
…………さて、さて、さて。どうしてくれようか……♪
《……楽しそうだネー》
『……ふふふふ………そうねぇ……』
エインハルト大陸。山と荒野の割合が高いこの大陸で、町と町を繋ぐ街道を外れて歩くのは自殺行為だと言われている。
荒野で道を外れてしまえば砂漠と同じ。どちらが今来た方向かすらわからなくなる上、食糧が尽きればあっという間に屍を曝すことになるからだ。
草原ならば近くに動物や植物、そして水があることもあるが、この荒野にそんなものは存在しない。
運良く見つけたとしても、それらは魔物によって占拠されているため、よほどの実力者でなければ使用することは不可能だ。
数千kmを踏破して荒野の向こう側へ出てしまえば話は変わるが、大抵の者はそこまで行く前に力尽きて息絶える。
しかし、そんな場所だからこそ荒野を拠点とする者達も居る。
たとえばそれは何かに追われているものであったり、行き場の無いものであったり、罪人であったり、盗賊であったりする。
彼等はそういった者達の寄せ集めの盗賊だった。
ある男は人を殺して逃げた者だし、他のある男は実力が無いと実の親から勘当された魔法使いの血筋の者、命令に逆らって受けた処罰に嫌気がさして軍を飛び出した者や、貴族に税を搾り取られすぎて食いつめた元農民。様々な者がこの集団に存在していた。
そんな集団が今狙っているものは、一人の少女だった。
その肌は雪のように白くきめ細やかで、黒くしなやかな髪との対比が美しい娘。
顔も整っており、目はややつり目気味で厳しそうなイメージを受ける、まるで貴族の令嬢のような雰囲気の、十を少し越えたばかりといった少女。
しかしその近くには護衛の姿も馬車も無く、見たところ武器の一つすら持っていないように見える。
あの娘を拐って奴隷として売れば、暫く遊んで暮らせると思った盗賊達は、ゆっくり、気付かれないようにこそこそとその少女を取り囲むように近付いて行く。
そしてこの盗賊団の頭にあたる男が姿を見せながら少女に近付き、
「こんなとこでどうs
バシュ、とその男は後頭部から勢いよく血となにかを吹き出し、絶命した。
残りの盗賊たちは何があったかわからないと呆然としていた。
その娘は剣も槍も持っていなかった。そして魔術師の証とも言える長い杖なども持っていなかったし、呪文も唱えていなかった。
それなのに自分達の頭は頭から血を拭き出して倒れている。
何故? と思う間も無く少女が小さな妙な形をしたものを自分に向ける。
なんd
暗転
とある盗賊団の最期の時。フルカネルリがある下っ端の脳から抜き出した情報。
……ふむ。この世界では魔法を使うときには長ったらしい呪文を唱えなければならないのか。面倒だな。
《フルカネルリは今まで唱えたことってあったっケー?》
…………ふむ。その辺りも検証してみようか。