異世界編 2-11
フルカネルリだ。この世界に元からある大陸にはそれぞれ上位精霊達が住んでいるらしい。四大の火、水、風、地の四体。それぞれに意思と性格があり、仲の良い悪いもあるようだ。
《……解体するノー?》
してみてもいいのだが、そうするとこの世界が崩壊するような気がしてならないからやめておくさ。
《賢明だヨー。ここの神の力が弱ってる今、精霊達まで弱ったら大変なことになるだろうからネー》
やはりそうか。あの神が魔王なんてものをほったらかしにしていたからおかしいとは思っていたのだが、見守に信仰と神格を食われて以来、自分の作ったものよりも弱くなってしまったのだな。
魔法と科学を組み合わせて魔法科学を作ろうとしているのだが、これがなかなかに面白い。
科学にも穴がある。それは、けして物理法則という壁を乗り越えることができないということだ。
しかし魔法は物理法則とはまた別の法則によって規定できるので、科学とうまく重ねてやれば魔法の穴と科学の穴をお互いが上手く埋めてくれるのだ。
とは言え、魔法もものによっては物理法則に依存しているものもある。
例えば炎を出す魔法だが、寒い所と暑い所では難易度が随分違ってくるし、空気の乾燥具合によってもまた変わる。
それとは逆に純粋な肉体強化等は魔力をただ流せば良いので物理法則ではなく魔法法則に依存する。魔法法則は基本的に精神論になるが、魔力自体が多分に精神的な要因で創られているためにそれはある意味当然とも言える。
しかしこの世界には魔力そのもので物質を破壊できるという事実が存在するのだが、私は恐らくこの世界そのものが神の奇跡、つまり魔法で創られているからだと考える。
それならば創造神が自分の作り出した世界のものに絶対的なアドバンテージを持つかも理解できるし、力を失うと反乱などが起きると言う事もわかる。
自分の魔法をある程度操れないものは早々居ないし、力がなくなればその操作に荒が出るのも当然だと言うことだ。
……つまり、アザギはこの世界ならばわざわざ実体化しないでも物に触ることができるという事だ。無論触ろうとしなければすり抜けることもできるだろうがな?
《何で魔法科学の話からこの世界の作り方にまで話がずれるのかはわかんないけドー、その辺りを思考実験だけで導き出しちゃうフルカネルリは人間としてどうかと思うヨー?》
五月蝿い、音楽を聴こうとしてイヤホンをつけたらいきなり大音量で流れてきたジャイアンの歌に脳を揺らされ発狂して死ね。
《長い上に面倒な上に発狂までするノー!?》
この大陸に住む者達には、とある不文律が存在する。
まず始めに、相手の過去を詮索しない。これはフルカネルリが集めた者達がこの世界のはみだし者であることに由来する。
誰しも知られたくない過去や、言いたくない情報、思い出したくもない記憶を持っているのだ。
次に、けして盗賊行為は行わないこと。これを破った場合、確実にその者に呪いが降りかかると言うことをこの大陸に来た時に見守の巫女に直接注意されているからだ。
そのためこの大陸では非常に横の繋がりが強く、家と家、村と村、町と町が争うことなど滅多にない。
子供の喧嘩や意見の相違によるぶつかり合いは多発するが、お互いに殺し合うことまで発展することは皆無と言ってもいい。
……周囲の大陸から見ると信じられないだろうが、この大陸はあまりにも平和だった。
そして、フルカネルリに直接呼ばれ、この大陸に住むようになった者からは、この大陸はこう呼ばれている。
「この大陸は、まるで異端の楽園のようだ」
フルカネルリの知らない大陸事情。
『……ふふふふ……瑠璃はねぇ……知らないんじゃぁ……無いのよぉ……? ………ただ、気にしてないだけで、ねぇ……♪』