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異世界編 2-8

 

フルカネルリだ。面倒な事に、この世界にいきなり現れた私達とこの大陸を支配しようと魔王が戦争を仕掛けてきた。実に面倒臭い。

《で、どうするノー?》

うむ。とりあえずこの大陸の周囲に私達に敵意を持つ存在を通さない結界を張る事にした。球形に張るので上空や地下、海中から来たとしても安心だ。

もちろん知能が低く、敵意などを持つことはできないが害を成そうとするものも通り抜けることはできないし、一時的に記憶や感情を操作して通り抜けたとしても内側で何らかの害意のある行動をとれば直ぐ様私達の住んでいる中心の島に飛ばされるようになっている。

ここで(無いとは思うが)濡れ衣だと判明すれば何もなく大陸の元居た場所に転送されるようにした。

濡れ衣でなければ、周囲の獣達に食われて終わり。

《えげつない結界だナー。外側から入ろうとした時の効果を秘密にしてるあたりフルカネルリ自身がえげつないヨー》

五月蝿い、核融合炉に飛び込んで青い光に包まれて死ね。

《炉心融解!? 何で知ってるノー!?》

『……アレグロ・アジテート……♪』

《そしてキミも何で知ってるのサー!?》

アザギだからな。


……魔法の研究を続けている中で、一つ気になったことがある。

それは、魔力を体に通すことによる簡単な肉体強化の魔法についてだ。

………簡単と言っても発動するだけならばと言う意味で、体内に魔力を通す順番や経路、質、属性、回路の個数等によりかなり効率や付加能力が変わってくるのだが、それこそ使うだけならば何も知らない子供でも無意識に使っている事もある程度の難易度だ。

細かいことは省くが、私がそれを使って体を強化した後、強化を解除したら身体能力はどうなるかという疑問だ。

……何を馬鹿なことを言っているのかと思うだろうが、思い出して欲しい。

私には、下限値固定という能力があるのだ。

これによって強くなった体はその時点より弱くなることが無くなるわけだが、魔力によるドーピングとも言える肉体強化で強くなった分はどうなるのだろうか?

《強化を切った後も下限値固定で強化された時と同じ身体能力になるヨー》

……………それは、例えば純粋な硬化魔法で肌を鉄板並に硬化した後に切っても同じか?

《そうだヨー。その場合は普通に肌が鉄板みたいに固くなったまま肌として機能するヨー》

…………恐ろしいな。下限値固定。

《さらに言っちゃうと強化した場合、その強化率が今までの成長率を上回っていればそれも固定されるヨー》

………………恐ろしすぎるな。下限値固定。

鍛えられないはずの場所もかなりの強度になりそうだ。

『……今でも、眼球で8ミリ弾頭位ならぁ……止められそうだけどねぇ……♪』

《いやいヤー、強化で一気に強くなってるかラー、13ミリのゼロ距離ぐらいだったらなんとかなると思うヨー?》

そうか。もうそんな所まで私の体は行ってしまったのか……。

《実は前の世界から帰ってきた時にはもうできるようになってたと思うヨー》

強化ありならばあの頃でも出来ただろうな。今ならなしでもできるだろうが。

《衝撃を感じるだけで痛くも何ともないはずサー》

だろうな。十分想像できる。






ある日を境に巨大になった体を風に乗せ、いつものように島の上空を飛ぶ。

海の果てに多くの船とさらに多くの私達とは質の違う魔物が見えるが、あの御方が張り巡らせた結界を通り抜けることができずに立ち往生している。

始めに来た時は、何度も結界に攻撃を繰り返しては反射した自らの炎に焼かれ、氷に貫かれ、風に刻まれて居たのだが、今では学習したのかそういったことは起きていない。

……ただ、いまだに知識を持たない者は体当たりをしては消し飛ばされている。

……ふぅ、と溜め息をつき、私は広い空に身を踊らせる。この大陸から離れると体が脆くなるが、それでも結界の内側ならば全く変わることはない。

しかし、結界の外とは言え私の空に羽虫が飛び回っていると言うのは気に入らない。

風に語りかけ、外の空を舞っている羽虫の羽を切り落とす。障壁か何かがあると思ったのだが、あっさりと切れてしまったことにこちらが少々驚いた。

……まあ、あの御方ならば、叱りはしないだろう。

そう思いつつ、溺れそうになっているもののうちの三体を拾い上げ、あの御方の元へと運ぶ。

ぎゃんぎゃんと五月蝿かったが、声が届かぬように大気に振動を禁じてやったらすぐに静かになった。

さあ、これを運んだら散歩に戻るとしようか。



  毎日風で光学迷彩をかけながら空中散歩をしている緑の翼が雄大な‘緑翼(ろくよく)’の宅急便。




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