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異世界編 2-7

 

フルカネルリだ。龍化した獣達に異常がないか勝手に調べてみたのだが、特に異常らしい異常は確認できなかった。精々がいきなりの強化に龍達が戸惑っている程度のものだ。

《十分じゃないかナー?》

そうか? 大したことでは無いと思うのだが……。

『……大したことだと、思うけれどねぇ……?』


この世界の創造神だが、どうやら新たに信仰を得て再生したらしい。

しかしそれでは私はおろか見守にすら勝てない程度の力しか持てないようで、あれほど偉そうにしていたのが嘘のようにおとなしくなった。

……最初からこうしていてくれたなら、もう少し穏便なやり方もとれただろうに。

まあ、それも今だからこそ言えることだな。

ちなみにその信仰の殆どは見守に行っている。その神が得ている信仰は、外典や曲解された少数の信仰のみだ。

……その無理矢理さを理解できるこちらとしては、よくもまあ復活できたものだと半ば感心している。

復活の折り、こちらに手を出さなければなにもしないことは明言しているため、向こうから何かをしてくることは恐らく無いだろう。

『……うぅん……どうかしらねぇ……♪』

《アレからは無くなってモー、アレの作った人間は何かしてくると思うけどネー?》

まあ、その時はその時だ。戦は許さんしこの島に入ることも許可しないが、個人個人が外側の大陸に永住を決めたりするのは一向に構わんさ。

見守の神はその名の通り、全てを見守る神だからな。

《自分の平穏のために自分の目の届かないところを滅ぼしてもなんにも思わない神様らしい神様だけどネー》

お前はどうなんだ。

《ボクは一周回って楽しければオッケーなとっても神様らしい(邪)神様だけドー?》

ああ、なるほど。






久しぶりに住処である大樹の洞から外に出る。

小さな小さな体であると正典に刻まれている私は、他の結晶獣の長たちと違って体のどこにも結晶らしいものはなく、そして体も小さいままだ。

……考えるときにはこうしてちゃんとしているのに、

「なぜなぜ、口に出しゅとこうなるのでしょう?」

眩しいので瞼は閉じたまま、くりっと首を捻って考える。

しかし、すぐに考えるのをやめる。

「まあまあ、考えてもわかりましぇんし、また寝ましゅか」

太陽の光を体にたっぷりと浴びてから、さっさと自分の巣穴に戻る。

無色のガラスのような質感でありながら柔らかなクッションのようでもある大樹の葉に体を埋め、丸くなる。

沈黙がその場を支配し、そしてすぐに幽かな寝息が聞こえ始めた。



  舌っ足らずで面倒臭がりな見守の神、二度寝開始。






「……ふふふふ………みんな、元気ねぇ……♪」

アザギは黒の結晶獣の領域に居た。

普通ならばここまで来る前に襲われるのだろうが、アザギは元々悪霊であり、そして闇の気質の強い事が幸いしてここまで何にも邪魔されることなく移動することができた。

がさり、と音を立てた黒い茂みに、アザギは目を向ける。

「……あらぁ……やっと出てきたわぁ……♪」

そこには、大きな黒い馬のような結晶獣が居た。

それはアザギを警戒している目で見つめながら、じりじりと下がって行く。まるで、圧倒的に力の離れた化物から逃げようとするかのようだ。

…………いや、正にその通りなのだろう。

アザギは今でこそ穏やかだが、下位とは言え神を食い潰し、そしてその神に乗っ取られるような事も無く存在し続ける事ができる、力だけならば中位の神にも匹敵する化物なのだ。

………ちなみに、ここの世界の創造神は中位に片足突っ込みかけて失敗しているギリギリ下位の神だ。

つまりアザギはこの世界を作り上げた神よりも力だけなら上位になる。

………………ナイア? 最上位に極限まで近い上位神だ。最上位には友神であるヨグソトスや先生であるアザトースがいる。

もちろんクトやクトゥグアもナイアと同じ位置に存在している。

そのような化物じみた力を持つアザギは、そうとは全く思わせない笑みを浮かべて黒い獣に囁いた。

「……逃げちゃぁ、駄目よぉ……?」

たったそれだけで、じりじりと下がっていた足が止まり、まるで地面に縫い付けられたかのように動かなくなった。

「……良い子、ねぇ……♪」

アザギは動きを止めた黒い獣にゆっくりと近付き、その頭を撫でた。

「………あらぁ………寝てるのかしらぁ……?」

そう言ってアザギが撫でるのをやめると黒い獣はどさりと倒れ、泡を吹き始めた。

「……仕方ないわねぇ……」

アザギは面倒くさげに呟き、その場を離れていった。

「………ふふふふ……次は、どんな子が出てくるのかしらねぇ……♪」



  自分が怖いせいで相手が気絶したとは一切考えないアザギの散歩風景 ~最早いつもの事~




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