異世界編 2-6
遅くなりました
フルカネルリだ。結晶獣を研究しているのだが、面白い特性を見付けた。
《何々なんなノー?》
うむ。どうやらこやつらは、死体になった同族を食すとその知識や力を引き継ぐことができるようなのだ。
『……へぇ……代替わりに……便利ねぇ……♪』
《つまリー、擬似的な転生が出来るわけだネー?》
そういうことだな。
……ちなみに、異なる種族のものが食してもあまり受け継がれず、下手をすれば対消滅してしまうようだ。
《危ないナー。それはあの子達もわかってるんでショー?》
本能で理解しているらしく、けして口を付けようとはしていない。
『……凄いわねぇ……本能って……♪』
そうだな。
この島の獣はどうやらこの世界で最強に近いようだ。恐らく龍種でもそう簡単には負けはしないと思われる。
……と言うのも、最近この島に降りてきた龍を獣たちが排除したのだが、その時にとても簡単に潰すことができたようなのだ。
降りてきたところで仲良く散歩をしていた赤と白の小さな獣がそれを見つけ、とりあえず見たことがないので攻撃してみたらしい。
ぱんっ、と簡単に弾け、拍子抜けしたところで親に見つかり、こっぴどく怒られたそうだが。
その時に島中に広がる魔力の根から入った映像を見ると、それはどう見てもドラゴンだった。
まあ、知識はなさそうだったのでたいして強くはないのだろうが、それでも龍種は龍種。それなりに強いのだろう。
……少なくともこの世界においては。
そしてその龍種を殺した事により、この島に新しい情報が入った。
龍種が存在する、ならば、ここに龍種がいてもおかしくはない。
……この島の生態系は、基本的に私の意思に依存している。
私が望めば全ての獣は形を変えるだろうし、私が認めなければその存在は姿を消すだろう。
そして私の中に新たな常識が刷り込まれれば、生態系はその姿を変える。
………つまり、それぞれの色の獣を統べる長達の姿は、私の思う強者へと変わる。
即ち、龍種へと。
《いきなり自分達の姿が変わるっテー……ビックリだネー♪》
『……ふふふふ……そう、ねぇ………♪』
確かにな。私も産まれたときに女と言われて驚いた覚えがある。
水色の水晶のような色だった鱗が深い青へと変わり、分厚く、強靭になる。
体そのものも巨大になり、イルカ程度の大きさだった体は大型の鯨ほどまでに膨らんでいる。
牙は長く、太くなり、顎が大きくなるにつれて数が増えて行く。
元々水中での活動に特化していた体は、更に進化する。
そして、その変化が終わったときにそこに居たのは、巨大な一体の水龍だった。
水中での活動に支障が無いようにとその体は美しい流線で作られており、硬質そうに鈍く輝く鱗の下にはしなやかな筋肉が存在していると言うことが手に取るように理解できる。
元々の形が大蜥蜴であるために翼は存在しないが、あったとしても完全に退化していることは間違いないだろう。
自らの体がいきなり変化した青の結晶獣だったそれは、思い切り、天に向けて咆哮した。
ビックリしすぎな青の結晶獣の長、青の鱗に包まれた‘青鱗’の変化。
元々全身が岩の塊のようだった黄色の獣の長は、自分の体に起きた変化を何でもないかのように受け入れていた。
元々長かった爪が更に長く太く、強靭になっても‘ああ、伸びたな’程度にしか思うことはなかった。
流石に全身が巨大化した時は驚いたようだが、それでもすぐに受け入れて自分の巣である地中の空間を拡げる事に精を出していた。
全身を覆っていた黄色の結晶はまるで鎧のように更に重厚になり、一部の隙すら許さないと言うかのように前後の足や口内、瞼すらも覆って行く。
それはまさに城塞と言うに相応しいほどの鉄壁だった。
……しかし、当の黄色の結晶龍は、巣を拡げ終わると何事も無かったかのようにその目を閉じて、眠り始めた。
逆に落ち着きすぎな灰色の結晶獣の長、黄色の甲殻の‘黄甲’の変化。
《ちなみに黄甲がこんなに落ち着いてるのはボクの影響が強いせいだヨー。近くにボクが居るから安心してるのサー》
……ふむ、青鱗が落ち着いていないのは、自分以上の強さを持つ同族がいないからか?
《だと思うヨー》
そうか。