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まだもう少し
フルカネルリだ。修学旅行に行くらしい。準備は万端だ。
《行き先は京都だってサー》
『……ふふふ……気を付けないとぉ………消えちゃうわねぇ……わたし……♪』
それは大変だ。ナイア、なんとかならないか?
《……冗談だから安心しなヨー》
なんだ、冗談か。
新幹線に乗るのは初めてだが、あの異世界で乗った機甲兵や宙を走る車に比べると大したことはないな。
《まあ、あの世界はキミのいなかった世界の一つの未来の可能性だからネー。キミがいないこと以外はこの世界のかなり未来と一致するシー、そう思うのも当たり前じゃないかナー?》
その通りなのだが、やはりどこか不満だ。もう少し私の知らない機構などは無いのか?
《この世界にそういうのをあんまり期待しない方がいいヨー》
『……未来のひとつを、見ちゃってるものねぇ………?』
……そうだな。
「瑠璃っ!新幹線だよ新幹線っ!」
「ああ、そうだな。……何故そこまではしゃぐ?」
「だって新幹線だよ!?」
……子供の思考はわからない、と言うことがわかった。
「……まあ、はしゃぎすぎて向こうで疲れて動けないということにならないようにな?」
「いくら私でもそんなことにはならないって~♪」
……なりそうだな。
《なるだろうネー》
『……なると、思うわぁ……?』
そうだよな。
子供の体力を舐めていたとしか言えない。いったいあの小さな体のどこにあれほどの体力が……?
《前にも似たようなこと言ってた気がするナー》
そうだったか?
…………そうかもしれん。
「瑠璃ーっ!京都についたよーっ!」
「そうだな」
「もう。元気ないよー。ほらほらもっと元気よく!」
……そうだな、を元気よく………?
「……そうだな」
うむ、性格的に私には合わないな。
「……むー、まあいいや。それより清水寺だよ!」
正直に言おう。ついて行けない。
『……テンションがぁ……上がったときの瑠璃も、こんな感じよぉ………?』
ほう、そうなのか。
《そうだネー。大体そんな感じかナー?》
そうか。
「やって来たよ清水寺!何回来てもいい景色♪」
《ンー、クトちゃんが気に入るのもわかるナー》
「……さて、今年も警備の目の前で飛び降りルヴォッ!?」
「いい加減によしなさいっ!毎年毎年、誰が頭を下げてると思ってるのっ!」
「……悪りぃ。ついテンションが上がって……」
「……ついで飛び降りなんてしないでよ……」
全くもってその通りだな。
「でも大体八割ぐらいの人は生き残ってるよ?」
「だからと言って、白兎は飛び降りるなよ?」
「わかってるって」
どこまで理解しているのやら。
音羽の滝で学業の水(特に効果がないのは確認済み)を飲み、今日から泊まることになるホテルへ移動する。
校長はその短い時間で酔ったらしく、教頭の膝枕で横になっていた。
……新幹線は平気だったようだが、やはりバスは酔うのか。
《林間学校の時だって酔ってたじゃないカー》
そうだったな。
「……ぅ……きもちわるぃ……」
「酔い止め飲まなかったの?」
「……飲んだ……人間用……」
《そりゃ効かないだろうヨー。はいこレー、ヨグソトスが作ってくれたやつだヨー》
「ありがと……ございます……」
「はい、水」
「……いや、だから水を飲んでも平気な炎の神性ってなんだよ?」
「……諦めるといい。世の中自分の理解できないことで一杯だ」
「…………そだな」
私と副校長はゆっくりと溜め息をついた。
《……いつの間にか仲良くなってるネー》
お陰さまでな。
……ああ、着いたか。今日は疲れたし、早く寝るとしよう。
ナイアのお気に入りと話をしたが、中々面白い奴だった。
確かにあいつが関わると未来が読めなくなってくるし、性格的にも嫌いじゃねえ。
何より一番気に入ったのは、あのナイアが頭が上がらない相手だって所だ。
……またすぐ異世界に行くらしいし、ちょっとぐらいならいいよな?
……せっ、と。
人外に妙に気に入られやすいフルカネルリと惹かれたクトゥグア。
フルカネルリは『炎神の加護』を受けた。
フルカネルリの『炎神の加護』がLv3になった。
フルカネルリは炎属性のダメージを無効化できるようになった。
フルカネルリは炎に関する事象にボーナスを受けるようになった。
《……なんか悔しいからボクもやっちゃうヨー!》
フルカネルリは『邪神の加護』を受けた。
『邪神の加護』が『地神の加護』に変化した。
フルカネルリは『地神の加護』Lv3を手に入れた。
フルカネルリは地属性ダメージを無効化できるようになった。
フルカネルリは大地に関する事象にボーナスを受けるようになった。
三柱以上の邪神の加護を受けたことにより、新たに『邪神の加護』Lv3を手に入れた。