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あといくつか。
フルカネルリだ。父と母につれられて花見に行くことになった。団子は母と私の合作だ。
《別に干瓢は入ってないヨー》
ハズレ団子に一つ入っていたような気がするが?
《入ってんノー!?》
入っているはずだ。……と言うか、知らずに言ったのか?
《……フルカネルリの家のお団子って怖いネー……》
そうか? 味見はしてみたがそれなりに美味かったぞ?
『……ふふふ……すごいわねぇ……♪』
色々な意味でな。
シートを敷いて、重石をのせて、私と父と母の三人が座る。何故か皆正座だ。
「今日のお弁当はぁ~……ロシアンルーレットお団子~~♪」
母がそう言いながら弁当箱の蓋を開ける。そこには白、紅、緑と様々な色の団子が並んでいた。
「中身は食べるまで秘密♪ それと、一度触ったものは全部食べること!わかったかしら?」
「わかったよ、哀華」
「理解した」
……だが、なんとなく一番後悔するのは母である気がしてならない。
「それじゃあ……いただきまーす♪」
取った団子の中身。
私→おかか。父→海苔。母→梅干の種。
……やれやれ。おにぎりのつもりか?
《気付いテー!おにぎりの具にしてもおかしいのがまざってることに気付いテー!!》
「……うぅ……すっぱい……」
『……あらあらぁ………』
二つ目。
私→鮭。父→昆布。母→塩(塊)。
今度は海に関係がある物か。
《普通塩の塊なんて団子に入れないヨー!?》
三つ目。
私→豚肉。父→牛肉。母→にんにく。
《駄洒落のつもりカー!!》
ちなみににんにくは生の塊のままだ。
『……辛そうねぇ……』
四つ目。
私→粒餡。父→濾し餡。母→銀色の餡。
《銀色ってなニー!? 人間が食べていいものじゃないよそレー!》
私もそう思う。
……だが、どうやら美味いらしいぞ?
「ん~!おいしぃ~♪」
…………な?
《……ボク絶対食べないヨー》
『……わたしも、嫌よぉ……?』
…………だろうな。私も嫌だ。
五つ目。
私→ハバネロ。父→七味唐辛子。母→一味唐辛子。
《まさかの全員罰ゲームダー!?》
……いや、私と父は辛いものは好きだから普通に食べるが?
《……あっソー……普通団子にハバネロ入れないよネー……?》
簡単な話だ。‘母は普通ではない’。……それだけの事だろう。
六つ目。
私→プレーン(強いて言うならば小麦粉と水と僅かな塩味)。父→プルーン。母→固まっていないコンクリートを思わせる灰色のクリーム。
《プレーン有りなんダー!? そしてお母さんの食べてる灰色のクリームってなニー!?》
母曰く、コンクリーム、だそうだ。美味いらしい。
《駄洒落カー!!》
『……いくら美味しくてもぉ……食べたくないわねぇ………』
そうだな。
七つ目。
私→酒粕。
《待テー!?》
……いきなりどうした。
《キミ未成年だからネー!? いくら精神が大人で健康呪いで急性アルコール中毒とかにならなくってもキミ一応未成年だからネー!?》
……甘酒のようなものだし、平気だろう。
………酒気は煮込んで飛ばしてあるようだし、アルコールの匂いも殆どしないぞ?
《……それだったラー……好きにするといいヨー》
そうか。ならば好きにするとするか。
さて、次は父だな。
父→別の団子。
《別の団子ってなにサー!?》
別の団子は別の団子だろう。その中身はカレーだったようだが。
『……あらぁ……結構、美味しそうねぇ………?』
私も思った。
母→ジャム。ここで母がキブアップ。最後には美味しい味で締めたかったらしい。
残りの団子は私と父の胃袋に収まった。
普通の団子も奇妙な団子も食べ終わり、今はゆっくりと茶を啜っている。
「……はふぅ……」
「……うん、美味しい」
母は父に体を預けて幸せそうにしているし、父はそんな母の頭を撫でながら頭上の桜を眺めている。
……実に平和だ。
《……そうだネー……》
『……そう、ねぇ……』
…………それはそうとして、二百メートルほど離れた所でいつも以上に元気に怒鳴り合っている副校長と教頭はなんとかならないか?
《さっきまでやってたみたいに意図的に無視するしかないヨー》
『……さっきまではぁ……むこうも、静かだったのにねぇ………?』
…そうだな。
……………やれやれ。
……ぱく。もむもむ……ごくん。
ンー、これは竹輪かナー? 結構美味しいヨー。
次はなにかナー……ぱく。
……うぇ、納豆入ってター。でも食べるヨー。口付けちゃったしネー。……ごっくん。
……アザギは何入ってター?
『……胡麻、よぉ……?』
そっカー、胡麻カー。
……あレー? もしかしテー……炒り胡麻が一杯包まれてるノー?
『……いいぇ……? ……一粒よぉ……』
……それはそれでむなしいナー……。
バレないようにちょいちょい摘まみ食いしていたナイアとアザギ。