アバター保険
AIって色々できそうで夢があると思って書き始めました
それどころじゃない現状に投稿していいものか悩みましたが折角最後までかけたので投稿しました
父が死んだ
旅行先であっけなく逝ってしまった。
私と母はただ呆然としつつも追いたてられるかのように葬儀屋に連絡をいれ父を迎いいれる準備をした。
参列者をどうするか母と話し合ったが、定年退職して気ままな生活を送っていたので、見送りは身内だけで行い落ち着いてから知り合いに連絡することにした。
それでも初めてのことに心身ともに疲れきって少し落ち着いてきたのは四十九日を終え納骨を済ませた頃だった。
「お父さん向こうでゆっくりしてるかなぁ」
「どうかしらね。退屈してるかもよ」
「新しいの好きだったもんね。
そういえばお役所の手続きとか保険とか税金とか大丈夫?今までそういうのお父さんが全部やっていたでしょ?私もノータッチだったからよく分からないんだけど。」
「それがあの人何かあったらって色々まとめてくれていたのよ。以前お祖父ちゃんが亡くなったときに相談にのってくれた弁護士さんに連絡をするようにって。
あと書類関係もまとめてあって本当にしっかりしていたわね。あんな風に死んじゃうなんて思ってもなかったろうにね。」
「まさかサウナから水風呂に入って心臓止まっちゃうなんてお父さんもビックリだわ」
「本当にね。警察から電話があったときいたずら電話だと思ったもの。それからはホテルとのやりとりとか神田先生には随分と助けて頂いたわ。」
母と話しながら時計を見るとちょうどその神田先生がいらっしゃる時間になっていた。
「そろそろ先生がいらっしゃるわね」
「時間に正確だから」
玄関のインターホンがおとないをつげる
「こんにちは。里山さんの四十九日が終わったとおききしたので、お線香をあげにきました。
あと他に里山さんから預かっているものもあってそのお話もさせていただけたらと思いまして」
「お待ちしておりました。態々ありがとうございます
どうぞお上がりください」
「お邪魔します。まずは里山さんにご挨拶を」
そう言って先生はお線香をあげてこちらにむかうと書類ケースから何枚か書類を取り出した。
「こちらが里山さんから頼まれていた保険の書類です。生命保険の手続きもありましたが、こちらは少し変わっておりまして冗談と放置されるのを心配されて私が預かることになってました。」
母とその書類を見てみるとそこには
[アバター保険]
と書いてあった
「何ですか?このアバター保険というものは」
「簡単に言ったら自分のアバターを育てて何かあったときある程度自分の意思を伝えることができるようにするものです。里山さんはこの保険が出たときから加入されておりまして、10年になるでしょうか。そういってもよく分からないでしょうから、よろしかったらこれからこの保険の受け取り手続きを行いましょうか」
「そうですね。よくわからないのでお任せします。」
こうして我が家に父のアバターがやってきたのである。
先生と手続きを済ませ一週間後保険の人がやってきた。
「初めまして。この度は御愁傷様でした。
私は里山さまのアバターを預かっておりました田川と申します。里山さまの保険の期間は一年間となっております。本日から開始いたしますので、来年の同じ日にまたお伺い致します。何かご不明な点がございましたらご連絡下さい。」
そう言ってタブレットを回線に繋いでディスプレイを表示させた。
「基本難しい作業はございません。音声に反応致します。折角ですから沢山話して頂けたらと思っております。」
そこにいたのは可愛らしい蝶ネクタイをつけたウサギのアバターでした。
「えっウサギですか?父ではないのですが」
「おっその声は歩夢か?すまんなぁ父さん死んじゃったんだね。色々言いたいことも聞きたいこともあると思うのだがとりあえず説明していくな。
まずはこのアバターはあまり本人に似せると次の別れがまた辛くなると田川さんに言われてな、どうせなら自分から遠い可愛いキャラにしてみたんだよ。
そしてちゃんと会話しているようだが父さんが生きているときに色々問答集を作成して対応するようになっているんだよ。そのあとはアバターの中にいるAIを相手に話したりして情報を蓄積して育てて、もし問答集に想定していないことを話しかけられても私ならこう答えるだろうなとAIが考え答えるようになっているんだ。こうしておけば、突然何かあったときに安心だろ?ところで、父さん何で死んじゃったんだ?」
「お父さんは旅行先のお風呂で心臓がとまったんだって。本当に大変だったんだから」
「そりゃみんなに迷惑かけたね。お母さんもすまなかったな。神田先生とうまくやれたかな」
「えっお父さん生き返ったの?ウサギになっちゃったからこっちに帰ってこれないの?えっ何これ。」
「お、お母さんも側にいたんだね。さっきもいったように私は死んでるよ。今あるのは生きていたときの記憶?記録?のようなもの。この保険の話を聞いたとき自分に何かあったときに大丈夫なように色々準備をしていたけど、やっぱり自分の言葉で伝えたいと思ったんだ。我ながらよく考えて沢山のことをこのアバターに教え込んだと思うんだ。そういうわけで母さんも聞きたいことがあったら私に尋ねてほしい。この姿でお父さんと言いにくいなら、そうだなぁラビちゃんとかどうだろう。私の言葉を伝えるメッセンジャーみたいな感じでいいんじゃないか?まぁお父さんでもラビちゃんでも反応するようにしているからどっちでもいいよ。」
「うわぁお父さんがウサギの着ぐるみ着てるみたい
早速だけど、お父さんが死んじゃって2ヶ月くらいになるんだけど知らせないといけない人とかいる?一応お母さんが連絡していたみたいだけど。」
「そうだなぁ、何かあったらと用意していた書類ケースに入っていた知り合い一覧表を参考にしてくれてたら大丈夫だよ。もしうちに来てくれたときは私もその場においてくれるとうれしいな。」
「それは私たちも助かるわ。会社関係の方とか学生時代の友人とか何話していいのか分からないもの。
でもラビちゃん対応できるの?もう覚えてない人とか来ても大丈夫?」
「それは大丈夫。まず卒業アルバムや同窓会名簿を取り込んでいて、その手の情報は本人より覚えているし、思い出話に登場しない人が来た場合の定型文というものもあるからな。」
「そうなのね。例えばあまり交流のなかった人が訪ねてきました。どう対応するの?」
「やぁやぁ久し振りだな。突然のことで驚いただろ?
君が来てくれるとは思わなかったが元気にしていたかい?高校卒業以来だな。とかだね」
「おーそれっぽい。私も使おうかしら」
「ある程度付き合いのあった人達はそれなりに情報はいれているんだけど、役にたつことはあるかなぁ。
皆それぞれ忙しいだろうから」
「でも皆喜ぶと思うよ最後の挨拶を本人に伝えられるんだから」
「本人じゃないけどね。まぁこれから一年間だけどよろしく頼むよ」
こうしてラビちゃんとの一年が始まった
ぽつぽつと父の知り合いが訪ねたり私と母とラビちゃんと交流するうちに期限の一年がやってきた
「ラビちゃん今までありがとうね少しずつだけどお父さんのいない生活にも慣れてきたし、
それにラビちゃんのお陰でお父さんのお友達皆喜んでた
本当にありがとう」
「このコを育てるときにできる限り思い残すことがないように頑張ったんだ
突然死んじゃったのは驚いたけどラビちゃんを置いていけたことは満足しているよ
そしてこのコは今日でいなくなるけどお父さんの個人情報を抜き出した性格や行動パターンは
残されて次世代のVRワールドのNPCのAIとして使われるらしい
いつかまたVRの世界でまた会えることを願ってるよ」
「そうなんだ。もしかしたらまた会えるかもしれないね」
「だからさよならじゃなくまたね」
「またね」
こうして田川さんがモニターの電源を切り回収した所で母が自分もアバター保険に加入したいと相談した
「それではパンフレットを置いておきます
色々なコースがございますので、また日を改めましてご相談に応じたいと思います
最近加入される方が増えて予約をお取りした上での対応となりますので
よろしくお願い致します」
母はその後面談予約をとって保険加入手続きを行っていった
「歩夢ちゃんようやく保険加入手続きが終わったのよ大変だったわぁ」
「お疲れ様どんなことしてきたの結構時間かかったよね」
「そうねぇ最初は資料集めて持っていくことから始めるんだけど年賀状やアルバムとか多分会うこともない人もいるし覚えてないんだけど情報はどんなものでもいいと言われたから家にあるもの全部持って行ってみたわ思ったより沢山あって驚いたの
入力した情報は希望したらカードにまとめて保存してくれるって言われたけど
私はカードに入れられても見方が分からないからそのまま返してもらったわ」
「へーそれだけでも利用したいサービスだね」
「それからお父さんが言っていた質問の応答集作りでねキーボード入力は大変だから無理って言ったら普通にお話するように答えたら言いと言われたから
質問AIさんと色々おしゃべりしに何日か通ったわね」
「そんなのでいいんだ」
「そりゃ皆が機械に強いわけじゃないし私みたいな歳とった人でも入れるんだから簡単じゃないと」
「そっか色々コースがあると聞いてたけどお母さんはどんなコースにしたの」
「それはその時のお楽しみにしていてね
お母さんもちゃんと考えてみたつもりだから」
「まだまだ先の話だね元気でいてちょうだい」
「分かってるわよあなたの迷惑にはならないわ」
そうして暫くはそれぞれの生活を送っていたある日
母から電話がきた
「歩夢ちゃん私ねここで一人で暮らすのしんどくなってきたのどうしたらいいかしら」
「えっどうしたのお母さん何かあったの」
「皆がね意地悪するの何も悪いことしていないのに」
「そんなずっとご近所さんで仲良くしていたじゃない
今度様子を見に行くからちょっと待っていて」
私は慌てて仕事の休みをとって家に向かうと
母が所在なげな様子で家にいた
「大丈夫お母さん何か食べたりしてる」
「ご飯はあるもの食べてるから大丈夫よ
でも皆が家に来て怒るのどうしてかしら」
「じゃあちょっとお隣さんのところに行って話聞いてくるからお母さん待っていてね」
そうして私はお隣へと行くと母の話を聞いた
「お母さん最近ゴミを勝手に捨ててゴミの分別もしないし困るのよね何回も注意したんだけど結局私たちでゴミを分別しなおして捨てたりしてるのよ
1回病院でみてもらったらどうかしら」
「そうだったんですね
ご迷惑おかけしてもうしわけありません
一度みてもらってみます」
「お互い様だと思うんだけど毎回だとちょっと私たちだけでは見てあげられないのよごめんなさいね」
母は病院で診て頂いたところ認知症と診断を受けた
一人で暮らすのは難しいのではと言われたが
他に面倒をみてくれる人もおらず途方にくれた私に病院が支援センターを紹介してくれた
そこでまずどのような支援が受けられるか相談したところ意外なことを聞かれた
「お母様はアバター保険に加入されてませんか」
「あっ入ってます多分解約していないので残っていると思います」
「自動更新されて解約手続きは大変なので大体皆さん入ったらそのままの方が多いですね
実はアバター保険は国が後見しておりまして加入者には優先的に受けられるサービスがあるんですよ」
「そうなんですか知らなかったです
どうすればいいのですか」
「まず保険会社に連絡してお母様が認知症になったためと保険の先取りを申請します
それからはアバターのお母様と受けたいサービスを相談して決めていかれたらよろしいかと思います
ご存知かと思いますがここ数年の間に公共の保護施設ができておりましてそちらに入居することも可能です
ただしその場合はお母様の財産をすべて整理することが必要となります
その際はお身内の方が立ち会い国が派遣した者たちが家や通帳有価証券等の査定を行いポイント化します
納得がいかない場合は自己負担で身辺整理することもできます
一度話を聞いてみてはいかがでしょうか」
話をきいてまずは今の生活を何とかしなくてはならないと勤め先に介護のための休暇届を出し
介護認定を受けるための手続きと保険会社に連絡をし母のアバターの先取りの申請を行った
そうして母と母のアバターと私と保険会社の人との話し合いが始まった
「こんにちは
今回里山様のアバターにてご本人の希望を確認していきます
今のご本人様と意向が異なる場合がございますが
どちらを尊重されるかは娘様に委ねますが
よくお考えの上お決めください」
「分かりましたよろしくお願い致します」
「では始めます」
ディスプレイから熊のアバターがでてきた
「えっお母さんなの?熊にしたんだ」
「あら歩夢?そうなのお父さんが
うさぎだったからお母さんは強そうな熊にしてみたのよ
ところで私はどうして死んだのかしら」
「お母さんはまだ元気なんだけどちょっと一人で生活するのが難しくなってきたんだ
それでこれからどうしていくのがいいか相談したくて」
「あら元気なのに生活が難しいなんてボケちゃったのね歩夢には迷惑かけたでしょうごめんなさいね」
「私も仕事しているから一緒に暮らすのも難しいし
今なら保護施設に優先的に入居することができるみたいなの
介護度の段階にそった生活ができるみたいだし
誰かが見守ってくれていると私も安心できるから手続き進めてもいいかな」
「そうねここはお父さんとあなたと暮らした思い出の家なんだけど生活できないのなら仕方ないわね
この家の片付けともし施設に入るならどうしたいかもちゃんと希望は伝えているからよろしくお願いするわ
」
「ここでの生活を守ってあげられなくてごめん」
「仕方ないわよ歩夢にも自分の生活があるんだから
あっ私はどうしてるの近くにいるのかしら」
「不思議そうに画面を見てるよ
よく分からないみたい」
「そう
もしもし緑ちゃん今までここで暮らしていたけど
一人だともう危ないんだって
お父さんももういないし別のところに引っ越すよ
今度のところは沢山友達がいるからきっと楽しいからね」
「あなた誰私はここがいいわ
一人でもまだ大丈夫よ誰にも迷惑かけてないし」
「残念だけど歩夢のためにも引っ越さないといけないわ思い出はしっかり記録してもらうから我慢してね」
画面の熊は母にそう言うと私に向かって
「歩夢ちゃん私のことはいいから引っ越しの準備していきましょう
まずはこの家の片付けだけど施設入居の際に役所の方から引き継ぎチームの人達が来ることになってるの
私の個人識別カードに金銭データは管理されていて
このカードにこの家や家電の処分した時にプラス査定が出たらその分カードに振り込まれるようになっていて
半分は先に歩夢ちゃんに渡しておくね
もし歩夢ちゃんがこの家に住むつもりがあるのならチームが評価した金額で買い取ることができるから好きにしてちょうだい
あと施設に持ち込みたい服や小物のリストアップはしているから荷作りお願いします
それからこの家の様子はバーチャルデータとして記録してもらうようにしてるの
いつか私が帰りたがった時にでも見せてあげてね
ごめんねもう少し手伝ってもらえるかしら」
「わかったわお母さん
施設で安心して暮らせるよう手続きや片付けは任せてね」
「ありがとうよろしくね」
それから母が用意していた持ち込みリストを参考に荷作りを行い
引き継ぎチームとのやりとりを経て
母の保護施設への引っ越しの日がやってきた
施設とはいえ大きな敷地をもつ一つの街のようなところで私は驚いてしまった
母はそのなかのワンルームマンションのような建物への入居が決まり部屋の中に衣料品や母が持ち込むのを希望した小物類を整理していった
部屋はベッドとチェストとトイレが置いてあり
布団やカーテンを持ち込んだ母のものにして小物類をおいていくと母の部屋っぽくなった感じがして少し安心した
食事やお風呂は別の場所で行うそうで案内等はスタッフがしてくれるらしい
各フロアにはリビングルームかわりの広間があり他の入居者と接したりテレビ見たりができるようになっており一階には面談用のフロアが用意されていた
「本日緑様の施設入居の準備が整いました
基本生活費は個人識別カードに入っているライフポイントにて賄われます
これから病状が進むことによりカードの管理も難しくなるため手首に内臓型のチップを埋め込ませていただきたいのですが可能でしょうか
小さいものなので痛みも違和感もございませんし
自動でポイントのやりとりができるようになるので安心かと思います」
「カードの不正利用が防げるのならお願い致します」
「かしこまりました
それでは入居時に埋入措置を取らせていただきます」
「ところでそのライフポイントとは一体どのようなものなのでしょうか」
「このポイント制は保護施設開設の時から利用されているもので国のサービスを受ける時に必要となります
基本保護施設内での生活ではお金は使われずライフポイントが使われます
ただ嗜好品や趣味等に使いたいときはお金の代わりにライフポイントをフリーポイントにかえることで自由に使えるポイントを手に入れることができます」
「つまりただ生活するだけだとライフポイントが使われて他に何かしたいときはフリーポイントが必要になるということですか」
「さようです
例えば施設内での食事は毎食300ポイントで食堂にあるメニューから選んで食べることができますがビールやジュースお菓子等生活に必要のない嗜好品はフリーポイントでしか手に入りません
衣類等の洗濯を依頼されるときもライフポイントが必要となりますが利用できます
入居に伴う施設利用費電気水道等の生活費は一律で毎月ライフポイントで引き落としされます
緑様が施設内で何かお仕事をされた場合はライフポイントで支払われます
自立支援として歩いた歩数や体操に参加した時間などでもポイントはもらえます
あとは今までお金で支払われていた年金も今後はポイントとして支払われます」
「母との面会は可能でしょうか」
「勿論問題ございません
ご依頼がございましたらべつの施設からバーチャル空間での面会も可能です
遠距離にお住まいのご家族様やこちらまで来るのが大変な方がご利用されております」
「急な病気とかの対応は大丈夫ですか」
「そちらも付属の病院が敷地内にございますので安心して下さい」
「母の状態は少しずつ悪くなっていくと思うのですが今の部屋で生活できなくなった時の判断は誰がやってくれるのでしょうか
多分母に任せることは出来ないと思うのですが」
「そうですね施設での生活はある程度のタイムテーブルに沿ってスタッフの声かけから始まります
その時の対応と部屋での過ごし方からここでの生活が継続可能か判断していきます
難しい場合は別の階の部屋へ移動していただくことになります」
「負担額はかわりますか」
「必要なライフポイントはあがります
基本緑様のライフポイントから自動引き落としとなりますのでポイントの利用履歴や残りのポイントは娘様にご報告させていただきます
部屋の移動は娘様がされるのでしたらご連絡いたしますがいかがいたしますか」
「引っ越しが必要なほど状態が悪くなっているなら知っておきたいですが移動はお任せいたします
ところでこのポイントがなくなった時に母はどうなるのでしょうか」
「緑様はアバター保険加入時にポイント制の説明は受けておりましてポイントがなくなった時はアバターを交えてのお別れを希望されております」
「それは安楽死ということでしょうか」
「さようでございます
法整備が整いまして色々な条件がございますが緑様はポイントがなくなった時は条件が揃いますのでご希望通りお別れされることになります
ポイントはご入金で加算することも可能です
娘様や他の方もお別れし難いでしょうからご納得頂けるタイミングまで時期をのばすこともできますが
ポイントがなくなっている時点で緑様の状態は厳しいものとお覚悟下さい」
「分かりましたこれからよろしくお願い致します」
「お任せください緑様ができるだけ自分らしくご生活いただけるよう配慮してまいります」
「お母さん今日からここで暮らすことになったからね元気でいてよたまに会いに行くからね」
「なんでこんな所にいないといけないの
お家に帰りたいわ」
「ごめんねもうお母さん一人じゃ暮らせないの
皆が見守ってくれるから私も安心だし
意地悪する人もきっといないから」
「嫌よ歩夢ちゃんなんとかしてちょうだい
お家に帰りたいわ」
「ごめんねお母さん皆様よろしくお願い致します」
こうして母を施設に預け私は自分の家に帰った
母の暮らしていた実家は家具家電寝具服と沢山の物があったが自分が持ち帰りたいものだけ持ち帰らせてもらった一部価値があるとみなされたものは評価額で買い取りし後はリサイクルできるものはリサイクルへまわされ家は更地に整備されていった
月に一度くらい面会に通ったが徐々に衰えていく母を見るのが辛くバーチャル空間での面会を試してみた
バーチャル空間は色々あり私はデータとして残してもらった実家の空間を使って母と面会
完全没入型のバーチャル空間では脳へ信号を送り脳からの信号を受けることで思ったように動くことができるためある程度脳が活性化されている必要があり
母にはもう実家とか娘とか分からない状態となっていた
「お母さん懐かしいね帰りたいと言っていたお家だよ」
「まぁまぁいつもお世話になっております
あなたは何方かしら」
「あなたの娘の歩夢ですよ」
「まぁ歩夢ちゃん大きくなったわね」
「元気に暮らしてますか」
「どうかしらよく分からないわ」
「また会いに行きますね元気でね」
「はいさよなら」
こんな会話も徐々になくなり部屋で転倒したところから部屋もリフト移動ができる部屋へ移動となり常に生活に補助が必要になってきたため再度施設と話し合いが設けられた
「本日はご足労いただきありがとうございます
緑さまは現在移動や食事など全介助の状態となっております
リハビリをかねたバーチャル空間での脳波を観測しておりますが活性化されることがなく意思確認も難しくなっております
延命処置を含む栄養管理をどこまでおこなっていくかのご相談させていただけたらと思います」
「アバターの母と相談することは可能でしょうか
できれば母の意思を尊重したいのですが」
「可能でございます
それではご用意いたしますので少々お待ちください」
ディスプレイ上に熊のアバターが現れた
「こんにちは今回はどうしたのかしら」
「お母さん今ね認知症が進んでいるのと転倒してから動けなくなってきてるんだ
これからどう過ごしていきたいか教えてほしいんだけどポイントはまだ残っているみたいから0になってからお別れするか皆が集まれるタイミングでお別れするか
後食事が食べられなくなったときどうしたいかとか
心臓マッサージしたいかとか教えてもらえないかな」
「そうねできるだけ自然にいけたら1番なんだけど
食事は食べられなくなったら無理に取らせなくていいわよ
ただ最後の時に好きだったアイスを口に入れて欲しいな
心臓マッサージはしなくていいよ痛そうだし
できれは皆に見守られてお別れしたいけど無理しなくていいわ
最後の迎え方もちゃんとリクエストしてるから大丈夫」
「そうなのね
それじゃ出来るだけお母さんの希望通りに進めていくね」
「ありがとうお願いね」
ディスプレイからアバターが消えて施設の人と最後の日までの過ごし方を相談していった
もう本人の意思はアバターからしか確認できないが出来るだけ穏やかに過ごせるよう見守りし
母の知り合いに連絡をし最後の日の日程調整をしていった
「本日は緑さまとのお別れの日となります
皆様緑様が心穏やかに旅立てますようお声掛け下さいませ」
「お母さん今までありがとうね
頑張って生きてくれてお疲れ様でした
きっとお父さんが待ってるから向こうでも仲良く過ごしてね」
とうとう母と過ごす最後の日がやってきた
次々と母の友人ベッドに寝ている母に声をかけていくのを見守っていった
「それでは最後にアバターではありますが緑様からご挨拶がございます」
「本日はお忙しい中来てくださって本当にありがとうございます
自分の最後にこんな挨拶ができるなんて考えてなかったわ
お父さんが旅立ってから一人で生きてきましたが
皆様の助けがなかったらとっくの昔にダメになっていたと思います
歩夢ちゃんありがとう面倒みてくだった皆様ありがとうございました
最後まで音は聞こえるって聞いていたので最後はお父さんと歩夢ちゃんと過ごした何気ない1日の会話を聞きながらいこうと思います
それじゃ皆様またねお休みなさい」
こうして母との別れの日は過ぎていった
父のときとは違い少しずつ記憶をなくしていく母とは別れの覚悟を育てていった日々であったように思う
どんな結末になるか分からないが
いつか来る日に自分も備えていたいと思わされた
私もアバター保険に入ってしっかり後を任せられるアバターを育てていこうと
そしていつかバーチャル空間で熊とうさぎの仲間に入れてもらうのだ




