つぶき その5
僕は靴下。双子の靴下。
靴下達は皆双子なんだよ。
3枚千円で母さんに買われこの家に来た。
僕たちは長男の靴下という役目を貰った。
この家の家族は靴下達を大切にしてくれないんだ…
長男君は平気で汚す。
雨の日なんか最悪さ…
靴君の中まで汚い水が入ってくるんだ。
僕たちは泥水でグチョグチョになっちゃうんだよ…
僕たちは君の足を守る為に居るんだ…
汚される為じゃないんだよ…
学校から帰ると僕たちは床の上に放り出される。
せめて洗濯物籠さんの中に入れてほしいよ。
しかも誰も気付かないで箪笥の隅に放置された事もあるんだ。
流石に寂しくて…
自分が臭くなっていくのが解るんだ。
早くお風呂に入れてほしかったなぁ、あの時は…
僕たち以外の靴下達も同じような扱いなんだ。
毎日母さんのどなり声が聞こえるんだ。
僕たちは兄弟生き別れる事がよくあるんだ。
一人きりの靴下達に役目はもう無いんだ。
ゴミ箱には行きたくないんだ。
皆、離れ離れにならない様に必死で頑張るんだ。
僕の所為で喧嘩しないでほしいよ。
僕最近、頭の天辺が薄くなってきちゃって。
そろそろ穴が空きそうなんだ…
この家の母さん、穴が空くとすぐ捨てちゃうんだ…
母さん、ちゃんと縫って使ってくれるかな…
お願い、僕を捨てないで…
まだちゃんと働けるよ…お願い…