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クラスの完璧美少女と放課後の音楽室で! 2人の時は甘々に!  作者: ルキノア


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文化祭準備

放課後の教室。

机が端に寄せられ、中央には材料やメモが広がっている。

文化祭まで、あと二週間。


「シフト決めるよー」


凛がプリントを手に立つ。

すっかり進行役が板についている。


「午前と午後で分けるね」


「調理と接客、バランス考えるから勝手に偏らないで」


その言い方が、いつもの“しっかり者”。

でも。

どこか柔らかい。

女子が笑う。


「はいはい、店長」


「誰が店長」


「凛でしょ」


軽いやり取り。

凛はため息をつきながらも、完全には否定しない。


「じゃあまず調理――」


視線が自然と向く。

玲。


「ここは固定で回したいから」


凛が言う。


「玲、中心でいい?」


玲は少しだけ考える。


「いいけど」


「忙しくなるぞ」


凛はすぐに返す。


「分かってる」


少しだけ間。


「無理はさせないから」


その一言。

自然だった。

でも。

少しだけ“特別”が混ざる。

周りがちらっと見る。

玲は小さく頷く。


「なら大丈夫」


凛はそのまま名前を書き込む。


【調理(中心):月城】


その文字、やっぱり少しだけ丁寧。


「じゃあ接客は――」


女子たちが一斉に手を上げる。


「やる!」


「やりたい!」


「写真撮りたい!」


凛が少し呆れる。


「遊びじゃないから」


でも。

ちょっとだけ笑っている。


「はい、じゃあ順番に――」


淡々と進める。

でも途中で。


「凛はずっと接客でしょ?」


誰かが言う。


「うん、その予定」


即答。

玲が横から言う。


「休憩入れろよ」


凛がちらっと見る。


「入れるよ」


「ちゃんと」


玲は少し疑うように言う。


「ほんとに?」


凛が少しムッとする。


「入れるって言ってるでしょ」


少し間。

小さく付け足す。


「……玲が言うなら入れる」


その瞬間。

周りが静かにざわつく。


「今の聞いた?」


「やっぱり弱くない?」


凛はすぐ言い返す。


「違うから」

「休憩無しは効率悪くなるから」


でも。

ちょっとだけ視線を逸らす。

玲は何も言わない。

ただ少しだけ口元が緩んでいる。



「次、呼び込み」

男子たちが顔を見合わせる。


「これ一番きついやつ」


「声出すの無理」


凛が言う。


「じゃあ交代制で」


「短時間で回そう」


玲が軽く言う。


「俺もやる」


男子たちが驚く。


「え、やるの?」


「意外」


玲は肩をすくめる。


「必要なら」


凛が少しだけ目を見開く。


「調理あるのに?」


玲が言う。


「余裕ある時間なら」


凛は一瞬だけ黙る。

それから。


「……じゃあ短めで」


さっきより、少しだけ優しい声。



シフトが大体決まる。

紙が回る。


「こんな感じでいい?」


全体が頷く。


「よし、じゃあ次――」


そのとき。

女子がニヤニヤしながら言う。


「接客練習しよ」


凛が顔を上げる。


「は?」


「今やる?」


「やるやる」


逃げ道はない。


「じゃあお客さん誰やる?」


一瞬の間。


そして――


「月城くんでしょ」


即決。

男子たちも笑う。


「それはそう」


凛が一瞬固まる。


「いや、別に誰でも――」


玲が普通に椅子に座る。


「いいよ」


凛が止まる。

数秒。

逃げられない。


「……やる」


女子たちがニヤニヤする。


「いらっしゃいませーって言って」


凛は一度深呼吸する。

そして。

玲の前に立つ。


「……いらっしゃいませ」


完璧。

でも。

ほんの少しだけ硬い。

玲が普通に言う。


「おすすめは?」


凛が一瞬詰まる。

女子が後ろで小声。


「がんばれー」


凛はすぐに立て直す。


「こちらのクレープが人気です」


指差す。

完璧な対応。

でも。

玲がじっと見ている。

それに気づく。

ほんの少しだけ、声が揺れる。


「……よろしければ」


玲が言う。


「じゃあそれで」


凛がうなずく。


「かしこまりました」


完璧。

なのに。

なぜか終わったあと、少しだけ顔を逸らす。

女子たちが爆発する。


「今の何!?」


「めっちゃ良かったんだけど!」


「ちょっと照れてたよね!?」


凛が言い返す。


「照れてない」


でも。

耳はしっかり赤い。

玲がぽつりと言う。


「普通に来たくなる」


凛が固まる。


「……営業トークとして受け取る」


玲が少し笑う。


「どっちでもいい」


その空気。

完全に出来上がっている。



気づけば外は少し暗い。

片付け。

帰り支度。

凛がプリントをまとめる。


「今日の進み、悪くないね」


玲が言う。


「順調」


少し間。


「無理してない?」


凛が顔を上げる。


「してない」


少し考える。


「……今のところは」


玲が小さく頷く。

凛はそのまま続ける。


「玲こそ」


「忙しくなるでしょ」


玲は言う。


「まあ」


軽い返事。

でも。

ほんの少しだけ、間があった。

凛はそれに気づく。

でも。

まだ何も言わない。

文化祭まで、まだ時間はある。

準備は順調。

関係も、順調。


――今のところは。


 放課後。

教室の空気は、昨日よりさらに文化祭色が強くなっていた。

段ボール。

画用紙。

ペンキの匂い。

黒板には大きく


【クレープ屋 準備】


と書かれている。


「看板どうする?」


「かわいい感じがいい!」


「いや目立つ方がよくない?」


意見が飛び交う。

凛はその中心でまとめている。


「とりあえず方向決めよ」


「かわいい系ベースで、目立つ色入れる」


すぐに結論を出す。


「文字は大きく」


「遠くから見えるように」


その的確さに、クラスが頷く。


「さすが店長」


「だから違うって」


言いながらも、もう完全にそれだった。



教室の後ろ。

机をくっつけて、看板作り。

凛がペンを持って下書きをしている。

その隣に、玲。

自然な位置。

凛が少し顔を寄せる。


「ここ、もうちょい丸くした方がいいかな」


玲が覗き込む。

距離が近い。


「いいと思うけど」


凛が少し考える。


「……じゃあこのままで」


玲が言う。


「凛の字、見やすい」


凛が一瞬止まる。


「……そう?」


「うん」


シンプルな一言。

でも。

凛は少しだけ視線を逸らす。


「ありがと」


小さい声。

女子たちが遠くでヒソヒソ。


「近い近い」


「距離どうなってんの」



別の机。

衣装の話。


「エプロンどうする?」


「お揃いがいい!」


「色分けとか?」


盛り上がる女子たち。

凛が呼ばれる。


「凛ー!決めてー!」


凛が振り返る。


「はいはい」


近づいていく。

玲はそのまま看板を見ている。

女子が凛に言う。


「月城くんも呼びなよ」


凛が一瞬だけ止まる。


「なんで」


「意見聞きたいじゃん」


凛は少しだけ迷って。

振り返る。


「玲」


玲が顔を上げる。


「エプロン、どっちがいいと思う?」


二つ見せる。

シンプルな白と、少し色のあるもの。

玲は少し考える。

それから言う。


「白」


女子が聞く。


「理由は?」


玲はあっさり言う。


「凛に合う」


一瞬、空気が止まる。

女子たちが一斉に反応する。


「今のなに!?」


「さらっと言った!」


凛が固まる。

数秒。


「……じゃあ白で」


即決。

女子たちが爆笑する。


「弱すぎ!」


「決定理由それ!?」


凛が言い返す。


「違うから!」


でも。

耳が完全に赤い。

玲は普通にしている。

それがまた余計に目立つ。



作業が進む。

笑い声。

たまに小さなミス。

それを誰かがフォローする。

クラスの空気が、少しずつまとまっていく。


その中で。

玲はずっと動いていた。

看板も。

配置も。

調理の流れの確認も。

自然に全部やっている。

凛はそれを、何度か見ていた。


(……動きすぎじゃない?)


一瞬思う。

でも。

玲は普通にしている。

疲れた様子も、見せない。



「ちょっと休憩ー!」


誰かが言う。

みんなが一息つく。

凛は飲み物を取りに行く。

戻ってきて。

玲の前に一本置く。


「はい」


玲が見る。


「ありがと」


凛はそのまま隣に座る。

少しだけ間。


「……今日さ」


玲が「うん」と返す。


「結構動いてるよね」


玲はあっさり言う。


「まあ」


軽い。

でも。

少しだけ遅い返事。

凛はそれに気づく。


「大丈夫?」


玲はすぐ言う。


「大丈夫」


即答。

いつも通り。

でも。

凛は少しだけじっと見る。

数秒。

それから、ふっと視線を逸らす。


「ならいいけど」


完全には納得してない。

でも、深くは踏み込まない。



帰り道。

並んで歩く。

夕焼け。

少しだけ静か。

凛が言う。


「今日、進んだね」


玲が頷く。


「順調」


少し間。

凛が続ける。


「文化祭、楽しみ」


玲が少しだけ笑う。


「だな」


その横顔を見て。

凛は思う。


(ちゃんと隣にいる)


それが、嬉しい。

でも同時に。


(無理してないといいけど)


小さな不安。

まだ、形にはならない。


でも。

確かにそこにある。

玲が言う。


「どうした」


凛はすぐ笑う。


「なんでもない」


誤魔化す。

今はまだ、言わない。

言うほどじゃない。

そう思う。

夏の終わり。

文化祭前。

全部が順調に見える。

でも。

ほんの少しだけ。

見えないところで、何かが積み重なり始めていた。

 

 

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