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クラスの完璧美少女と放課後の音楽室で! 2人の時は甘々に!  作者: ルキノア


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37/43

花火大会とクラスメイトへの宣言

夕方の空は、まだほんのり明るい。

駅前には浴衣姿の人が少しずつ集まり始めていた。


屋台の準備の音。

遠くから聞こえる太鼓の音。


夏の匂いがする。

玲は改札の横でスマホを見ていた。


《今着く》


さっき凛から来たメッセージ。

人の流れを眺めながら待っていると、


「玲」


後ろから声がした。

振り返る。

そして一瞬、言葉が止まった。


凛が立っていた。

淡い紺色の浴衣。

白い小さな花の柄。

髪はいつもより少しまとめていて、後ろで軽く結んでいる。


首元が少しだけ見える。

凛が少し照れたように笑う。


「なに」


玲は一瞬黙る。

それから言う。


「浴衣」


凛が首を傾げる。


「変?」


玲は首を振る。


「似合う」


凛は少し笑う。


「ありがとう」


そして玲を見て言う。


「玲も」


玲が首を傾げる。


「俺?」


凛は頷く。


「髪」


玲は少し触る。

今日はいつものように前髪をかきあげて、横をピンで留めている。


凛が笑う。


「慣れてきたね」


玲は肩をすくめる。


「そうかも」


凛は満足そうに頷く。


「いい感じ」


二人は駅を出る。

人の流れに乗って歩く。

少し人が増えてきた。

屋台の明かりが並び始める。


凛の目が少し輝く。


「屋台」


玲が笑う。


「凛、好きだな」


凛は頷く。


「夏祭りの醍醐味」


最初に焼きそばの屋台に並ぶ。

凛がメニューを見る。


「たこ焼きもある」


玲が言う。


「多い」


凛は少し考える。


「半分こ」


玲が頷く。

屋台の横で二人で食べる。

凛がたこ焼きを一口食べる。


「熱っ」


玲が笑う。


「言うと思ってた」


凛は少し睨む。


「玲も食べて」


玲が食べる。

少し熱い。


凛が笑う。


「でしょ」


玲が頷く。


「でしょ」


二人で少し笑う。

人の流れが少しずつ増える。


凛が言う。


「結構人多い」


玲が周りを見る。


「まだ増える」


凛は少し歩く速度を落とした。

すると後ろから人が流れてくる。


軽く肩が触れる。

凛が少しよろける。


その瞬間。

玲が自然に手を掴んだ。


凛が少し驚く。

玲はそのまま言う。


「離れるなよ」


凛は数秒黙る。

それから小さく笑う。


「うん」


手はそのままだった。

人混みの中。

二人の距離は少し近い。


凛が言う。


「文化祭」


玲が「うん」と返す。


「ちょっと楽しみになってきた」


玲が少し笑う。


「凛が言うの珍しい」


凛は言う。


「私も変わってきたってこと」


玲は少し黙る。

凛は続ける。


「緊張はするけど」


「でも」


小さく笑う。


「隣なら大丈夫だよ」


玲はその言葉を聞いて少し視線を落とす。

手はまだ繋いだまま。


そのとき。

見覚えのある顔がいくつか見えた。


「……あれ?」


女子の声。


凛は少し目を細める。

やっぱり。

同じクラスのグループだった。


佐伯と山下もいる。

どうやらみんなで花火大会に来ているらしい。

凛は小さく息を吐いた。


(まあ、そりゃ来るよね)


花火大会だ。

地元の高校生なら誰だって来る。


「私にも誘いの連絡来たんだよね」

「だからいるとは思ってたよ」


玲もその方向を見る。

数秒だけ、視線が合う。

特に隠す理由はもうない。


凛は軽く手を上げた。


「みんなもやっぱり来てたんだ」


女子の一人がすぐ反応する。


「凛!」


「ほんとだ!」


グループが近づいてくる。

浴衣姿の女子たちが嬉しそうに言う。


「凛浴衣かわいい!」

「似合ってる!」


凛が笑う。


「ありがと」


いつもの調子。

でも。

男子の一人が言った。


「凛、誰と来てんの?」

「藍原は来ないって聞いてたけど」


その視線が、凛の隣に向く。

玲は少し後ろに立っていた。


今日は前髪を上げている。

横をピンで留めて、顔がはっきり見える。

いつもより少し大人っぽい雰囲気。


黒いシャツ。

シンプルだけど、すっきりしている。


そのせいか――

誰もすぐには気づかなかった。

男子が首を傾げる。


「……誰?」


女子の一人も言う。


「他校?」


佐伯が少し前に出る。

玲をじっと見る。


「どっかで見たことある気が……」


凛は少し笑った。


「同じクラスだよ」


数秒の沈黙。

男子たちが顔を見合わせる。


「……え?」


佐伯がもう一度見る。

玲も視線を向ける。


そして。

佐伯の目が一気に大きくなった。


「……月城?」


玲が軽く頷く。


「うん」


次の瞬間。

グループが一斉にざわついた。


「え!?!?」


「マジ!?」


「月城!?」


女子たちも驚く。


「ちょっと待って」


「髪!」


「雰囲気違くない!?」


凛は小さく笑う。


(反応大きい)


玲は少し苦笑する。


「そんな変わった?」


佐伯が即答する。


「変わったわ!」


男子の一人が言う。


「誰だかわかんなかった」


女子の一人が言う。


「月城くん髪上げてるの初めて見た」

「普通にかっこいいじゃん」


凛は横で少し満足そうだった。

そのとき。

男子の一人が、ふと思い出したように言う。


「てか」

「藍原と一緒ってことは」


その視線が二人の間を行き来する。


「デート?」


一瞬、空気が静かになる。

女子たちが「え?」と声を上げる。

凛は普通に言った。


「そう」


あまりにあっさりしていた。

女子グループが一斉に騒ぐ。


「えええ!?」


「マジ!?」


「ちょっと待って!」


「それで今日断ったのか」


男子たちもざわつく。

佐伯が玲を見る。


「お前……」


「マジ?」


玲は少し苦笑する。


「マジ」


その横で。

山下が、ずっと黙っていた。

腕を組んで、玲を見ている。

やがて、ゆっくり口を開く。


「へえ」


低い声。

少しだけ皮肉が混じる。


「凛の彼氏が月城か」


凛はその声に気づく。

山下の視線は、玲をまっすぐ見ていた。


ほんの少しだけ。

空気が張りつめる。

でも玲は表情を変えない。


山下が続ける。


「意外だな」


女子たちが空気を感じて、少し黙る。

凛は静かに山下を見る。

何か言おうか一瞬迷う。


そのとき。

玲が、少しだけ前に出た。

凛の半歩前。

山下と視線が合う。

玲は落ち着いた声で言う。


「そうだけど」


短い言葉。

でも。

その声は、はっきりしていた。


山下は数秒黙る。

それから少し笑う。


「へえ」


その瞬間――


ドン。


夜空に大きな音が響いた。

花火の一発目。


空が赤く光る。

周りの人が一斉に歓声を上げる。


「始まった!」


「花火!」


人の流れが動く。

夜空に、大きな花が開いた。


凛はその光の中で、玲を見る。

玲はまだ山下を見ていた。

花火の光が、その横顔を照らす。

その空気は。

まだ、終わっていなかった。


 ドン。


夜空に大きな花火が開く。

赤い光が人の顔を照らした。

周囲では歓声が上がる。


でも――


凛たちの周りの空気だけ、少し違っていた。

山下は腕を組んだまま、玲を見ている。

少し笑っているような顔。


「へえ」


また同じ声。


「雰囲気変わったな」


玲は何も言わない。

静かに立っている。

凛はそれを横で見ていた。


山下が続ける。


「髪上げてさ」


「頑張ってる感じ?」


その言い方に、少しだけ棘があった。

女子の一人が小さく「山下…」と止めようとする。

でも山下は気にしない。


「でもさ」


少し肩をすくめる。


「凛と並ぶと、やっぱ意外だよな」


男子たちも少し困った顔をする。

誰もすぐには何も言えない。


玲は数秒黙る。

それから静かに言う。


「そう?」


声は落ち着いている。

でもその瞬間。

凛が前に出た。

玲の横。


いや――


少し前。

山下をまっすぐ見る。

その目は、もうクラスで見せていた“優等生の顔”じゃなかった。


凛は言う。


「山下」


声は静かだった。

でも、はっきりしている。

山下が少し眉を上げる。


「なに」


凛は少し首を傾げた。

そして言った。


「さっきからさ」


少し笑う。


「結構、性格悪いよ?」


その言葉に、周りが一瞬固まる。

女子たちが「ちょ…凛」と小さく声を出す。


でも凛は止まらない。

視線を外さない。


「あと」


少し間。


「玲と釣り合ってないとか思ってる?」


山下が少し笑う。


「いや別に――」


凛はすぐ言った。


「釣り合ってないわけないでしょ」


はっきりした声。

周囲が完全に静かになる。

花火の音だけが遠くで響いている。


凛は玲を軽く指さす。


「見た通り」


「普通にイケメンだけど?」


男子たちが「お、おう」と変な声を出す。

玲は横で一瞬固まる。

凛は続ける。


「それに」


「勉強も上位」


「運動も普通にできる」


少し間。

そして、少しだけ目を細める。


「山下」


山下が黙る。

凛は言う。


「玲に勝てるとこあるの?」


空気が凍る。

女子たちが目を丸くする。


男子たちも黙る。

凛はさらに続けた。


「あとさ」


少し笑う。


「釣り合う釣り合わないって」

「私が決めることなんだけど?」


その言葉のあと。

完全な沈黙が落ちた。

山下は何も言えない。


凛は山下をまっすぐ見たまま、少しだけ首を傾げる。


「それに」


ほんの少しだけ笑う。

でもその笑みは、いつもの優等生の柔らかいものじゃない。


「釣り合わないって言うけど」


一歩、近づく。


「それ言うなら――」


凛の声が、少し低くなる。


「あんたの方が釣り合ってないから。」


空気が一瞬で凍った。

男子たちが固まる。

女子たちも息を飲む。


凛は続ける。


「私に」


はっきり言う。

 

「今の玲でもしダメだって外見だけで判断するなら」

「あんたに最初から勝ち目ないでしょ?」


山下の表情が歪む。

悔しそうに、奥歯を噛む。

言い返そうとして、言葉が出ない。


視線が少し揺れる。

拳をぎゅっと握る。


その様子を見て、凛はふっと息を吐く。

少しだけ肩の力を抜いた。

それから玲の腕を軽く引く。


「玲」


玲が「ん?」と見る。

凛は周りを見渡してから言う。


「ごめん、みんな」


そして、少し笑う。


「花火、二人で見たいから。」


女子たちが「えっ」「ちょっと凛!」と騒ぐ。

男子たちも苦笑する。

凛は構わず玲の手を引いた。


「行こ」


玲は少し驚いた顔をしていたが、すぐに小さく笑う。


「了解」


二人はそのまま人混みの方へ歩き出す。

後ろで女子たちの声が飛ぶ。


「ちょっと待って!」


「あとで話聞かせて!」


「このボケ山下がごめんね〜!」


凛は振り返らず、手だけひらひら振った。

夜空では、また大きな花火が開く。


その光の中へ、二人は並んで歩いていった。



ドン。


隣を見る。

玲がこちらを見ている。

凛は少しだけ照れた顔をする。


「……なに」


玲は小さく笑う。


「凛」


「うん」


「強い」


凛は顔をしかめる。


「うるさい」


少し間。

玲が静かに言う。


「でも」


花火の光が二人を照らす。


「嬉しかった」


凛は一瞬黙る。


それから小さく言った。


「当たり前」


そして、ほんの少しだけ笑った。


夜空では、大きな花火が続いていた。

 

 

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