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クラスの完璧美少女と放課後の音楽室で! 2人の時は甘々に!  作者: ルキノア


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玲のお洋服コーデデート 前編

強い日差し。


図書館から出た瞬間、

むわっとした空気が体を包む。


「……暑い」


凛が小さく息を吐く。

玲は隣で空を見上げる。


「夏だからな」


「当たり前のこと言わないで」


凛は少しだけ笑う。

二人で並んで歩く。

図書館から駅へ向かう道は、

人が少なくて静かだ。


時間がゆっくり流れている。

凛の頭の中には、

数日前の登校日の光景が残っていた。


教室。

久しぶりのざわめき。

そして――

玲が、みんなの前で普通に話しかけてきたこと。

前なら、少し距離を置いていた。


クラスの空気を壊さないように。

でもあの日は違った。

自然に。

何も気にしていないみたいに。

凛の机の前に来て。


「課題終わった?」


そう言った。

それだけなのに。

凛の胸は、少しだけ温かくなった。

今も歩きながら思い出す。


(ちゃんと、隣に来てくれるんだ)


玲が言っていた言葉。

“凛の隣に立つやつとして”

あれは冗談じゃなかった。

本当に、少しずつ変わろうとしている。


凛は横を見る。

玲はいつも通り歩いている。

表情も、特に変わらない。

でも。


(頑張ってくれてるんだよね)


胸の奥がやわらかくなる。

凛がぽつりと言う。


「ねえ」


「ん?」


「登校日さ」


玲が少し首を傾げる。


「どうした」


「普通に話しかけてきたじゃん」


「いいだろ」


即答。


凛が笑う。


「前より目立ってるよ」


玲は少しだけ黙る。


「そうか?」


「うん」


凛は少しだけ視線を落とす。


「……嬉しかった」


小さな声。

玲が一瞬止まる。


「そんなことで?」


「そんなことって言わないで」


凛は少しむっとする。


「ちゃんと隣に来ようとしてくれてるの分かるから」


その言葉に。

玲は何も言わない。

ただ、少しだけ前を見る。

蝉の声が大きくなる。

少しして。

玲が小さく言う。


「まあ」


「うん?」


「約束したし」


凛が首を傾げる。


「約束?」


玲は軽く言う。


「凛の隣に立つやつになるって」


凛の心臓が少し跳ねる。

さらっと言う。

本当に。

この人は。

ずるい、ではなく――


「……そういうとこ」


凛が少し笑う。


「反則」


玲が眉を上げる。


「何が」


「真面目すぎ」


凛は前を向く。

でも。

頬が少し赤い。


(ありがとう)


声には出さない。

でも、ちゃんと伝わっている気がした。



一方で。


玲も、あの日のことを思い出していた。

登校日。

男子グループの輪。

特に気にせず話していた時。

山下が、わざと聞こえる声で言った。


「月城さ」


笑いながら。


「藍原と仲良くしてるけどさ」


男子が振り向く。


「文武両道はすげーけど」


少し笑う声。


「顔隠してるし陰キャじゃん」


くすくす笑い。


「正直、釣り合ってなくね?」


周りの男子が


「お前それ」


「聞こえるって」


と言う。

でも完全に止めるわけでもない。

軽い空気。

冗談みたいな顔。

玲は何も言わなかった。


怒るほどでもない。

事実でもある。

鏡を見るまでもない。

髪は適当。

人前で目立つのは好きじゃない。


それでいいと思っていた。

ずっと。

でも。

凛が隣にいる。

あの教室。


みんなの視線。

そしてさっきの言葉。


「釣り合ってなくね?」


その言葉は、別に傷ついたわけじゃない。


ただ――


少しだけ。

悔しかった。

玲は歩きながら言う。


「凛」


「ん?」


「今度、服見に行く」


凛がきょとんとする。


「え?」


「適当なのしかない」


「急に?」


「たまには」


凛は数秒考えてから。

笑う。


「いいよ」


「付き合う?」


玲が少しだけ驚く。


「いいのか」


「むしろ行く」


凛は楽しそうに言う。


「玲、素材いいと思う」


「何その言い方」


「磨けば光る系」


「ひどい」


凛が笑う。


「でも楽しみ」


玲は少しだけ息を吐く。

空を見る。

青い。


(まあ)


見た目なんて。

別にどうでもいいと思っていた。


でも。

隣を歩く人がいるなら。

少しくらい、変わってもいい。


凛が頑張っている姿を見て。

知らないうちに、感化されていたのかもしれない。

前より少し軽い気持ちで。


玲は思う。


(隣に立つなら)


それくらいは。

やってみるか。


蝉の声の中。

二人は駅へ向かって歩いていく。


夏はまだ続く。

そして。

二人も、少しずつ変わっていく。



登校日から数日後。

真夏の昼。


駅前の人通りは多い。

アスファルトが陽炎のように揺れている。


改札前。

先に来ていたのは凛だった。


ポニーテールが揺れる。

インナーカラーの青が、光に当たると少しだけ透ける。


腕時計を見る。


「……まだ三分」


そう呟いた瞬間。


「早い」


後ろから声。

振り返る。

玲が立っていた。


黒いシャツに、シンプルなパンツ。

いつもの落ち着いた格好。


でも今日は少し違う。

前髪が少し上がっていて、目がはっきり見える。

凛は一瞬だけ固まる。


(……あ)


(目、ちゃんと見えると……)


思ったより。


「どうした」


玲が首を傾げる。

凛は慌てて視線を逸らす。


「べ、別に」


「今止まった」


「止まってない」


玲は小さく笑う。


「服見に行くんだろ」


「そう」


凛が咳払いをする。


「今日は私がコーディネートします」


「不安」


「失礼」


二人は並んで歩き出す。

駅前のショッピングモール。

冷房の空気が心地いい。

中に入ると、凛がすぐ振り向く。


「まず一つ確認」


「何」


「玲、服どこで買ってるの」


「適当」


「どこ」


「適当」


凛は目を細める。


「それ答えになってない」


玲は少し考える。


「母親」


凛が吹き出す。


「お母さん!?」


「たまに」


「高校生!」


「別に困ってない」


凛は額を押さえる。


「だめだ……」


「何が」


「素材がいいのに」


玲が止まる。


「素材?」


凛は真顔。


「玲、顔いいんだから」


玲は一瞬黙る。


「急に何」


「事実」


凛はスタスタ歩きながら続ける。


「だからちゃんと服選べばもっと——」


途中で止まる。

店の前。

ガラスに映る玲を見て。


(……ほんとに)


思ってたより。

かっこいい。

凛は視線を逸らす。


「……とにかく入る」


店に入る。

玲は周りを見る。


「場違い」


「そんなことない」


「絶対ある」


凛はラックを見始める。


「これとか」


シャツを取る。

玲に当てる。

少し距離が近い。

玲が言う。


「近い」


「服当ててるだけ」


「顔近い」


凛が止まる。

本当に近い。

二人の距離、二十センチくらい。

凛は一歩下がる。


「……文句多い」


「事実」


凛はむっとする。

そして別の服を持つ。


「じゃあ試着」


「早い」


「いいから」


玲は試着室へ押し込まれる。

カーテンが閉まる。

凛は外で腕を組む。


(なんで私こんな真剣なんだろ)


自分でも少し笑える。

彼氏の服選び。

その言葉が頭に浮かんで、少し顔が熱くなる。


カーテンが開く。

玲が出てくる。

白シャツ。

シンプルだけど、ラインがきれい。

凛は言葉を失う。


「どう」


玲が聞く。

凛は数秒固まる。


(……やば)


思ってたより。

かなり。


「……うん」


「うん?」


「普通に」


玲が待つ。

凛は言い直す。


「普通に、かっこいい」


玲が少し笑う。


「普通って便利だな」


凛は目を逸らす。


「褒めてる」


そこへ店員が近づく。


「すごくお似合いですね」


二人を見る。


そして自然に言う。


「彼氏さんですか?」


凛の思考が止まる。


「……え」


玲は普通の顔。

店員は笑顔。


「彼女さんセンスいいですね」


凛の顔が一気に赤くなる。


「ち、違……!」


言葉が詰まる。

玲が横で言う。


「えぇ」


凛がビクッとする。


玲は淡々と続ける。


「自慢の彼女なんです」


凛が固まる。

店員はにこにこしている。


「素敵ですね」


凛はもう顔を隠す。


「玲……」


「何」


「あとで覚えてて」


玲は小さく笑う。


「なんで」


凛はぼそっと言う。


「……恥ずかしいから」


でも。

少しだけ嬉しそうだった。

 

 

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