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クラスの完璧美少女と放課後の音楽室で! 2人の時は甘々に!  作者: ルキノア


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告白と名前呼び

カフェの窓際。

 昼の光がテーブルに落ちている。


 最初の緊張は少しずつほどけ、会話は自然になっていた。


 他愛もない話。

 クラスのこと、体育祭の裏話、先生の愚痴。


 笑い合う時間は、ちゃんと楽しい。


 でもどこかで、二人とも分かっていた。


 今日はそれだけじゃ終わらない。


 ふと、凛が聞く。


「月城くんってさ、なんで最近色々参加するようになったの?」


 体育祭も、打ち上げも。


 前なら、きっと少し距離を取っていたはずだ。


 玲はカップの縁を指でなぞる。


「……前はさ」


 少しだけ目を伏せる。


「頑張っても、どうせって思ってた」

「それに期待されるのにも疲れちゃって」


 凛は黙って聞く。


「本気出しても、別に何も褒められないし。むしろ当たり前だと思われて、負けたらそれは失望されるし」


 軽い言い方。


 でも、奥は軽くない。


「だから、最初から本気出さないほうが楽だった」

「この学校は俺を知ってる人ほとんど居ないから最初から隠そうと思ったんだよね」


 凛の胸が少し痛む。


 それはきっと、本音だ。


「でも」


 玲は顔を上げる。


「体育祭のとき、藍原が怒っただろ」


 凛の指先が止まる。


「藍原も似たような悩みを持ってるのを音楽室で聞いて」

「俺とは違ってそれでも努力し続けて、みんなに好かれてる藍原がちょっと空気悪くなるかもなのにさ」


 思い出す。


 あのとき、みんなが適当に流そうとした瞬間。


 腹が立った。


「なんかさ」


 玲は小さく笑う。


「今までみたいに逃げたら楽だったんだけど」

「藍原みたいになりたいなって思ったんだよね」


 凛の呼吸が止まる。


「そうなんだ」

「私も月城くんみたいになりたいと思ったよ」


 静かに言う。


 かっこつけでもなく、冗談でもない。


「そっか互いに憧れるところがあったんだね」


 玲はさらに続ける。


「俺は藍原の近くに行きたいと思った」

「音楽室の藍原との時間好きで」


 凛はゆっくり言う。


「変わったのは……私のため?」


「半分は」


 即答。


「もう半分は、自分のため」

「俺もこのまま逃げるのはダメだなって」


 凛は少しだけ笑う。


「それならいい」


 玲が不思議そうに見る。


「全部私に近づくだったら、ちょっと重い」


「ひど」


 でも玲は笑っている。


 その笑顔を見て、凛は思う。


 この人はちゃんと、自分の足で立とうとしている。


 私の存在を“きっかけ”にして変わろうとしている。


 それが、好きだと思った。


 少し沈黙が落ちる。


 今度は凛が口を開く。


「私さ」


 自分から踏み出す。


「結構、強く見られるんだよね」


 玲は頷く。


「実際、強いだろ」


「違う」


 凛は首を振る。


「怖いから先に言うだけ」


「何が」


「離れられるの」


 言ってから、少し後悔する。


 でも、もう止めない。


「だから、ちゃんと向き合わない人嫌い」


 玲は真剣に聞いている。


「本気出さない人も嫌い」


 少し間。


「……でも」

「音楽室で月城くんといた時は弱くなってた」

「あの空間では弱く居れた」


 凛は目を合わせる。


「でも体育祭の辺りから逃げないでくれたの、嬉しかった」


 言い切る。


 カフェのざわめきが遠くなる。


 玲はゆっくり息を吐く。


「音楽室以外でも関わりたくて」

「それに俺みたいに力抜いて欲しくて」


 それは素直すぎる言葉だった。


 取り繕っていない。


 だからこそ、重みがある。


 凛の胸が熱くなる。


 あの音楽室で出会ったことがきっかけだけど、

 この人は、ちゃんと自分を見てくれている。


 それが分かる。


「……ずるい」


 凛が小さく言う。


「何が」


「ちゃんと本音言うの」


「藍原も言っただろ」


「今まで才能隠して逃げてたくせに」


 笑いながら凛は言う。


 言い返せない。


 テーブルの上、二人の手の距離はほんの数センチ。


 触れそうで触れない。


「俺さ」


 玲が静かに言う。


「藍原といると、逃げられない」

「ちゃんと近くにいるためには周りに認めて貰わなきゃ」


 凛の心臓が鳴る。


「なにそれ告白?」


 視線が絡む。


「そうかも」

「まだ動き出しただけで、簡単に今までの俺から変わるのは難しいけど」

「ちゃんと向き合わなきゃって思う」


 その目は、真剣で、まっすぐだ。


 凛は思う。


 明確な告白ではない。

 月城くんの中で変わってから進もうとしているのかも。


 ちゃんと理由がある。


 優しいからじゃない。

 かっこいいからでもない。


 向き合う勇気があるから。

 逃げないでくれるから。


 それが嬉しい。


「私も向き合う」


自然に言葉が出る。


「だから私は伝えるね」


少しだけ息が震える。


「月城くんのこと、好きなの」


一瞬、時間が止まる。


「変わるのを待ってるのもいいけど」

「……それ、違うな」


自分で首を振る。


「待つんじゃなくて、一緒に変わりたい」

「手伝わせて」


目を逸らさない。


「それ、恋人でもできるよね」


少しだけ笑う。


「だから」


深呼吸。


「付き合ってください」


 玲の表情が驚きから柔らぐ。


 それはきっと、今日一番の顔だった。


 この瞬間。


 お互いの中で、何かがはっきりした。


 もう、“特別”の位置にいる。


玲はしばらく黙っていた。


それから、小さく笑う。


「かっこいいな、藍原」

「……ずるい」


少しだけ目を逸らす。


「まだ途中だけどさ」


凛を見る。


「ちゃんと変わっていく」


「だから」


一度息を吸う。


「こちらこそ俺と付き合ってください」


 告白が終わって、静かに見つめ合っている二人。


 カップの底が見える。


「よろしくね」


言ったあと、二人とも少し笑う。


なんだか急に、照れくさくなる。


テーブルの上、まだ触れていない手。


触れていいのか分からない。


触れたい気もする。


でも、どうしていいか分からない。


沈黙が、さっきまでと違う意味を持つ。


甘くて、落ち着かなくて、くすぐったい。


そのとき。


「お下げしてよろしいですか?」


二人同時にびくっとする。


まるで悪いことをしていたみたいに、ぱっと手を引く。


「は、はい」


声が揃る。


店員はにこやかにカップを下げていく。


去っていったあと。


玲が小声で言う。


「……今、完全にドラマだったよな」


凛は真顔で答える。


「現実です」


でも耳が赤い。


「彼女ってやばいな」


「いちいち言うな」


「いや、なんか破壊力ある」


「慣れて」


「無理」


二人、同時に吹き出す。


少し空気が軽くなる。



店を出る。


昼の光がさっきより眩しい。


並んで歩く。


今までは、ただのクラスメイトだった距離。


でも今は。


……恋人。


妙に意識してしまう。


玲がちらっと横を見る。


「……どのくらいが正解?」


「何が」


「距離」


凛は黙る。


一歩、近づく。


肩がかすかに触れる。


その瞬間。


二人同時にぴくっとする。


「落ち着け」


「そっちが」


「今絶対意識しただろ」


「してない」


「嘘」


「月城くんが変なこと言うから」


「月城くん?」


玲が足を止める。


凛も止まる。


「……まだそれ?」


「え」


「俺、彼氏なんだけど」


「だから?」


「名前で呼ばれないの?」


一瞬、静まり返る。


凛の顔が、ゆっくり赤くなる。


「……れ」


「ん?」


「玲」


言った瞬間、自分で自分にダメージを受ける。


玲が固まる。


数秒の沈黙。


「破壊力やば」


「何が」


「もう一回」


「調子乗るな」


でも凛の耳は真っ赤だ。


玲は少しだけ息を整えて言う。


「じゃあさ」


「藍原も凛でいい?」


凛が目を見開く。


「……それ、今さら?」


「いや、彼女だし」


「……」


一瞬迷う。


でも、逃げない。


「いいよ」


玲が小さく笑う。


「凛」


低く、まっすぐ。


名前だけなのに。


胸の奥がじん、と熱くなる。


「……玲」


今度は、ちゃんと目を見て言う。


さっきより自然に。


でもやっぱり、照れる。


二人同時に顔を逸らす。


「無理だろこれ」


「慣れて」


「時間かかる」


「私も」


でも。


その距離は、さっきよりちゃんと近い。


触れていないのに、前よりずっと近い。


音楽室じゃなくても。


ちゃんと隣にいる。


恋人として。

 

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