美咲が意識を取り戻す
休日の午後、安アパートの居間に敷いた布団の上で寝転がっていた彼は、森田弁護士の話を思い返していた。契約は全てうまく行きました。土地の売却が済み次第、全額借金は完済される。肩の荷が降りた気がした。タバコに火をつけ、窓を開けた。美味い。空気もタバコもどちらも格別な味がする。こんな気分は初めてだ。人生というものは素晴らしいものなんだな。
彼がうっとりしていると、スマホの着信音が鳴った。画面を開いてメッセージをみると、宛名は田口からだった。休日だというのに何かのトラブルか?取り越し苦労だと良いが・・・。
(美咲の意識が戻った。病院に祝に来てくれないか?美咲もお前の顔をみたがっている)
彼はすぐに着替えて、アパートを飛び出した。大通りに出るとタクシーをつかまえて、行き先を告げた。美咲ちゃんが回復した。良かった。様態は良いのだろうか。このまま働き続けることは難しいだろう。でもきっと運命はひらけるはずだ。
病院の前にタクシーが停まった。彼は料金を支払うと、足早に病室に向かった。不思議と心が浮かれている自分に、少し恥ずかしい気がした。
消毒アルコールの匂いが充満する空間を突っ切って、彼の身体は軽く移動した。いつか来た病院は、懐かしいというよりは、真新しいものに思えた。




