現場で励まし合う二人の友情
それから数カ月、彼は田口と会社を立ち上げ、すぐに現場をこなしていった。彼の借金は月70万という速さで返済されていった。必死に働くことは、楽しくもあり肉体的に辛いことも多かった。彼が仕事をしている横に田口がやってきた。
「休憩に入ろう。今日は缶コーヒーは俺がおごるよ。ちょっと話したいこともある」
自動販売機の横のベンチに腰掛けた二人は、缶コーヒーを開けて喉に押し込んだ。彼は田口の話を待っていた。田口がおもむろに口を開いた。
「前に雇っていた職人さんたちと連絡を取って謝りに行った。今は別の会社で働いていらっしゃるそうだが、また一緒にやらないかと声をかけた。何人来てくれるか分からないが、責任を取るつもりで声だけはかけさせてもらったんだよ」
「・・・そうか。あの人達にも生活があるからな。楽しいだけじゃ食っていけない。今仕事があるならそれで良かったじゃないか。確かに前経営者としてのお前の責任は重いものがる。でも大切なのは誠意じゃないかな。責任を取ろうとするその態度が、人として必要なマナーのような気がするよ」
「そうだな。ありがとう」
その日の現場の仕事が終わり、彼と田口は別々に帰路についた。これで良かったのか、どうかなんて誰にも分からない。ただ目の前のことを一生懸命やるだけだ。結果はあとからついてくる。彼は母親の手紙の言葉を思い出して、明日も頑張ろうと心に決めた。夕方の太陽はどこか寂しげで、一日の終りを名残惜しそうにみつめていた。影が長くなるころには、陽も暮れて辺りは暗くなるだろう。




