友人がいるということ
田口は涙を拭いた。彼は黙ってそれをみつめていた。重い口を開いたのは田口だった。
「俺はがむしゃらに働いてきた。それがダメになった途端、周りの連中は冷ややかな目で俺をみるようになった。誰も信じられなくなった。投げやりになってたんだな。でもお前の行動で思い出したよ。人はお金で動くんじゃない。心で動くんだって。世の中には、その心が汚いやつらだって五萬といる。でも、ほんの一握りキレイな心の持ち主だっているんだ。俺はそういう人たちに支えられて生きてきたんだ。心の汚いやつらに負けるわけにはいかない」
彼は何も言えなかった。自分が田口の言うキレイな心を持っているかどうかさえ疑わしかったからだ。申し訳ない気もした。汚い部分だって沢山ある。
「田口、俺はお前と働いているときが楽しかった。人生で働くことが楽しいなんて感じたことは一度もなかった俺が、お前と働いているときは楽しかったんだ。それは労働以上のものを感じたからだと思う。お金じゃないなんて綺麗なことは言えないけれど、楽しいと思わせてくれたことは何よりの宝物だよ」
田口と彼は夜の公園を後にした。夜風が少し冷たい。それも気にならなかったのは、横に友人がいるからだろうか。友人なんてこの世界にはいないと思っていた。ほしいと思っていたことはあるが、諦めていた。それが今真横を一緒に歩いていると思うと、夜風はむしろ優しく包むカーテンになった。
夜の時計は午前1時を回っていた。




