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泣けない母親の死はしゃれにならない
病院の待合室で彼は母親の様態を心配していた。1時間ほど経った頃、医者と看護師が彼の元へやって来た。
「御臨終です。お力になれず申し訳なく思います。お母様は苦しみも少なく他界致しました」
彼はその台詞を冷静に受け止めることが出来たように思えたが、身体は小刻みに震えていた。
遺体安置所に着くと、彼は母親の顔をみつめた。嘘のような本当の話だ。この現実を受け入れて、彼は涙を流す準備をした。不思議と涙は出てこなかった。
あまりにもショックでこうなのだろうかと自分を訝しんだ彼は、泣かない自分を周囲の人たちは冷たい人間だと思っているのだろうかと、少し不安になった。
帰って飯でも食おう。今日は、あのお笑い芸人の番組があるから、それをみながら満腹になって眠ってしまおう。
彼は病院を後にした。




