自宅前に逃げたら手紙を発見
彼は駅のコインロッカーに荷物を取りに行った。川で濡れた服が重く街中でも目立ち、そのまま歩くのには憚られたからだ。途中、男たちがやってこないか警戒しながら、ようやくコインロッカーに着いた頃には既に夕方になっていた。
小銭を入れてコインロッカーを開けると、荷物を取り出しそのままネットカフェに向かった。ネットカフェの手前で、彼は立ち止まって身を隠した。店の前であの男たちがタバコを吸って待ち構えていた。彼はみつかってないことを確認すると、店を後にして差し押さえられた自宅の方へと足を向けていた。
30分ほど歩いたあと、彼の自宅がみえてきた。まさか、ここでも男たちが見張っているのではないかと思いながら、慎重に様子を遠くからうかがった。どうやら誰もいないようだ。
彼は自宅の前まで来ると、目に飛び込んできたのは、あらゆるものが詰め込まれたゴミ袋だった。男たちが家に入って捨てたのだろう。彼はみるともなしに、ゴミ袋を眺めていた。半透明のゴミ袋から、母親の筆跡の封筒がみえた。彼は自然とゴミ袋を開け、それを手に取った。
封を開けてみると、3枚の手紙がみえた。
夕方が過ぎて、夜も深まってきた。彼は手紙を手にして、別のネットカフェに向かった。街中の人たちは、それぞれに楽しそうに、また憂鬱な顔をして歩いていた。やるせない気持ちが込み上げてきては消えてゆく。諦めようにも、何もない人生だ。頑張ろうにも、何をやればいいのか分からない。夜の空が、彼の心を冷たく包んだ。




