橋からダイビングで逃走
車はしばらく道なりを走っていた。彼の心臓は高鳴り、命の危険を敏感に感じ取っていた。車内の窓から見える外の風景が歪んでいた。
男たちは無言のまま彼を威圧してくる。彼はどうにか逃げ出せないものかと頭をフル回転させた。今のところ逃げ出せる確率はゼロに等しい。前方に橋がみえてきた。彼は思い切って口にした。
「トイレがしたい!もう漏れそうだ。車内がびしょ濡れになってもかまわないなら、ここで用を足すんですけど」
男たちは視線を交わして少し慌てた。後部座席の男が呟いた。
「止めろ。俺達が見張ってれば問題はない」
車は橋の上で止まった。男たちが一緒に降りてくるなか、彼はトイレを済ますフリをした。一瞬、隣りにいた男がよそ見した瞬間に彼は橋の上から飛び降りた。
身体が空中を落下していく。上から見た橋の高さでは、なんとか着地出来る距離だったように思われる。どんどん水面が近づいてくる。深さがどれくらいあるかが運命の分かれ目だ。彼は思いっきり身体を丸めた。かなりの速度で水面と身体がぶつかった。沈んでいく身体に川底が触れた。激痛が走ったが、意識は失わなかった。
川から這い上がって、泳ぎ始めた彼は逃げることに成功した。興奮でアドレナリンが分泌し、彼は恐怖も痛みも感じていなかった。濡れた服が重くのしかかるが、彼は陸に上がると走り抜けた。男たちはもうやって来ない。安心したと同時に、恐怖が込み上げ身体が震えだした。しばらく座って空をみつめていた。雲が流れていく速度はゆっくりに思えた。遠くで鳥の鳴き声が、今回の事件の終了のホイッスルに聞こえた。




