拉致されたところでどうすれば?
彼は街中を当てどもなく歩いていた。いつの間にか人通りの少ない、外れの方に来たようだ。辺りには畑がチラホラみえていた。寒くなってきたな。このまま、どこか遠くへ行ってしまおうか。手持ちのお金は残り少ない。どこへ行こうにもお金がない。ポケットに手を突っ込んで、悪びれて歩く様が彼には似合わなかった。
トボトボと歩いている彼の横を一台の車が通った。数メートル前で止まると、ゆっくりドアが開いた。中から出てきたのは、あの借金取りの男3人組だった。
ゆっくりと男3人がこちらに向かって歩いてくる。彼は周囲を確認して、誰もいないことが分かると、恐怖から逃げ出す準備を整えた。彼が後ろを向き、男たちとは逆の方を向いて走り出すと、背後から怒声が聞こえてきた。
「待てコラぁ!てめえ、逃げてんじゃねえぞ」
彼はそれを聞いてさらに走る速度を早めた。走っても走っても、背後から来る足音は消えない。もうダメだ。彼は諦めきれず立ち止まることをしなかったが、やがて息が切れて速度が落ちていった。
男たちに服を掴まれ、走ることが出来なくなった彼は助けを求めて叫んだ。誰も助けは来なかった。男たちに連れられ、彼は車に乗せられた。車内から見る景色は、地獄絵図のように横に流れていく。もう終わりだ。命さえ奪われてしまうのか。左右に座った男たちの顔をみることもできず、震える足を必死に抑えていた。男たちは無言で強く彼の身体を押さえつけていた。逃げる気力はもう皆無だ。俺の命もこれまでか。




