勤労意欲も皆無になった日々
一ヶ月が過ぎた頃、彼は働こうとする気力も失っていた。毎日公園で昼をやり過ごし、夜をネットカフェで潰す生活を続けているうちに、希望も目標もバカらしくなってきたのだ。何のために働かなくちゃならないんだ?今の日本では生活保護がもらえるから、飢え死にすることは、まあない。食うために働くならまだ分かるが、希望や夢ましてや目標なんて幻だ。人参を追いかける馬に人間が成り下がるとでも言うのか。
彼の心は次第に重く暗い雲が立ち込めるようになった。
眼の前ではスナック菓子に群がる鳩が、ポッポと鳴きながら歩いている。タバコを吸い終わり地面で火を消した。
人が近づいてくる気配を感じて、彼は周囲を見回した。いつぞやの警官がこちらに向かって歩いてくる。また職務質問でもされるのか。もう放っといて欲しい。公園で昼間からボーッとする権利さえ、この国には無いのか。
「こんにちわ。もう市役所には行かれましたか?」
「・・・いやまだなんです。正直迷ってます。生活保護となれば復帰も大変でしょうからね」
「ふむ、なるほど。寒くなってきましたから、なるべく早くの決断をお願いします」
去っていく警官の後ろ姿をみながら、死体にでもなってあいつの仕事を増やしてやろうかと思った。丁寧ご親切なことを言いながら、余計な仕事を増やすなよと言わんばかりだ。自分はこの社会に必要とはされていない。憤りが不思議と出てくる自分がまんざらでもなかった。
風に吹かれたタバコの吸い殻は、不安を感じることもなく転がっていく。鳩はそんな吸い殻を無視するように、スナック菓子に必死だった。




