逃げられない現実の借金
借金の残り返済額は500万だった。今の彼に返済能力があるはずもなく、またやる気もなかった。ネットカフェの代金で蓄えていたお金もドンドン消えていく。自己破産でもしてから、市役所に行き生活保護を申請するか。自分は社会から外れた落伍者だ。
モヤモヤと考えを巡らせながら、一人公園にいた彼のスマホに着信音が鳴った。田口かなと思って画面を覗くと、見知らぬ番号からの着信だった。一瞬とるか否か迷ったが、もしものことがあるかもしれないと思った彼は、スマホの着信を受け取った。
「もしもし?」
彼は自分が誰か悟られないように、注意深く声を出した。
「借金のことでお話が少しありまして、こうしてお電話を差し上げました」
電話の向こうから聞こえる声は、あの男たちのそれだった。彼の心は急に騒ぎ出し、恐怖と諦めが混在してパニックになりそうだった。咄嗟に出た言葉は、軽い挨拶程度のもので当たり障りのない社交辞令だった。
「逃げ切れると思うなよ」
途中の話は頭に入ってこなかったが、男の最後の言葉が爪痕を残した。逃げる?そういえば逃げっぱなしの人生だったな。このまま命を絶つのもありかもしれない。まさか、あの世まで追いかけてはこないだろう。切れたスマホをポケットにしまい込んだ彼は、ベンチを立って歩き始めた。どこに向かうともなしに、彷徨いながら消えてしまいたい。そんな気分に浸りながら。




