誰とも話さない日々に飢える
誰とも連絡をとらなくなって2週間が過ぎた。昼間は公園、夜はネットカフェの往復の毎日になった。交わす言葉はネットカフェの店員との社交辞令だけだ。彼は会話に飢えていた。誰かと話したい。でも誰もいない。気が狂いそうになった。職人たちは元気だろうか?挨拶を交わすことが、どれだけありがたいことだったかを彼は知った。
「今日もフリータイムでよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします」
「では前払いで1600円頂きます」
彼はいつものようにネットカフェの店員と機械的なやり取りをした。店員は親しみを感じてくれているのか、笑顔がたえなかった。彼はそれをみて、どうせ営業スマイルだろうとしか思えなかった。知らない誰かに優しくするほど、今の日本に温かみは残っていない。みんな自分のお金のことで精一杯だ。損得勘定が悪いとは思わないが、寂しさの原因もまたそれだと彼は分かっていた。
部屋に入ってスマホを開く。誰からの連絡もない。ただの四角い鉄に成り果てたスマホは、残酷に彼の心を嘲笑した。田口は元気だろうか?あの日以来、お互いに連絡を取り合っていない。彼の友人と呼べる人物は、もはや彼を嫌ってしまった。どこにも居場所がない。自分は生きている価値があるんだろうか。
静かなネットカフェの空間が、肌に突き刺すようにエアコンの音を奏でる。社会は落とし穴を用意して、奈落の底で喘ぐ庶民をバカにしている。冷たい人間だけが成功する、理不尽なメリーゴーランド。




