投げやりな田口が罵詈雑言
美咲のベッドの横で椅子に座っている彼は、一向に目を覚まさない姿に何も考えられずにいた。最近はニュースでも過労死が頻繁に出ている。このまま様態が悪化すれば、命の危険だってあるはずだ。先程退室していった看護師たちは、様態を聞く彼に詳しいことは教えられないと冷たい態度だった。勤務体制に問題があるのかもしれないが、内輪のことになるとやはり彼女らも口が重たくなるのだろうか。
その時、田口がドアを開けて病室に入ってきた。数カ月ぶりに会った田口は、髭がボサボサと生え髪型も乱れていた。メッセージでやり取りしていたとはいえ、実際にこの目でみると倒産の厳しさを感じさせられた。田口と彼は無言のまま、視線を合わさずにしばらくいた。
「・・・どうせ、俺のことバカにしてるんだろう。倒産した会社の経営者なんて惨めなもんさ。誰も相手にしちゃくれない。お前は俺の金目当てだったんだろう?借金があるから付き合ってた。ただ、それだけの仲だよ。」
「ふざけんな!お前こそ俺をバカにしてるじゃないか。何があったか知らないが、俺に八つ当たりするのはよせよな。情けないぜ」
「出ていってくれ。お前の顔をみてると、人間が信じられなくなる」
「ああ、分かったよ。お邪魔したな。もう二度と会うこともないだろうけど、せいせいするよ」
彼は思いっきりドアを閉めて、病室を後にした。田口の言葉が頭の中をリフレインした。血が登ってくるのがわかる。叫びたくなる衝動を抑えて、彼は病院の廊下を強く踏みながら歩いた。消毒の匂いが残酷に笑っているように思えた。怒りの裏には、友人への思いが込められていた。




