借金の勘定がみせた残酷
彼はそれから必死に働いた。それも仕事を楽しむ余裕さえあった。日毎に支払われる賃金を手に、コンビニに寄っては弁当を食べ眠る生活を続けた。休日には決まって男たちがやってきた。彼は通帳に挟んだ貯金を男たちに手渡し、安堵の気持ちを覚えるのだった。
男たちに渡される領収書の数字を、ある日彼は合算してみた。その合計は200万になっていた。この三ヶ月、必死に働いて返済した額に自分が誇らしくなった。
彼は休日の午後、カップラーメンを啜りながらテレビをみていた。200万という額に高揚した気分になっていたが、すぐに現実の雨に打たれた。通帳の借入金合計額900万を思い出したからだ。残りの返済額、約700万。この調子で行けば一年と少しで返済出来るが、体力と気力が続くかは疑問だった。
この生活があと一年か。長いような短いような、全額返済したとして自分には何も残らない。彼は虚しさを感じると共に、ある種の絶望を覚えた。
その日は、短い休日だったように思われた。何も考えたくない。もう嫌だ。人生は容赦なく彼の身体を打ち続ける。テレビをみて現実逃避しようにも、そのあまりの厳しさに彼の頭は休まることがなかった。
明日からまた仕事を頑張るしかない。今日は早めに眠ってしまおう。彼はベッドの上で目を閉じると、深い眠りの世界に向かっていった。




