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美咲と再会ドキマギしちゃうな
午後11時になって田口が帰ろうか、と言った。彼の横で田口はスマホを取り出した。酔っているのか、その動作は緩慢なものだった。
「もしもし?美咲、今飲み終えた。迎えに来てくれないか」
彼は美咲という言葉に強く反応したが、それを田口にはバレないように隠した。今から美咲ちゃんが来るのか。母親の葬式のときに会った美咲の顔を思い浮かべ、美人だったなと彼の心は呟いた。こんな自分に見合う娘じゃないのは確かだけど、彼女のいない彼は淡い期待に胸を膨らませた。
30分は経っただろうか。美咲が居酒屋のドアから入ってくるのが分かった。彼は弱い酒に酔っていたが、ぬかりなく緊張した。恥ずかしくて目を合わすことも出来なかった。
田口が美咲の方へむけて手を振った。
「こっちだ、こっちだ。すまないな。こんな時間に迎えを頼んでしまって」
「お兄ちゃん、結構酔ってるでしょ・・・」
美咲は彼の方をチラッとみてから、舌を出して笑ってみせた。彼は手短に挨拶をして、帰る準備をはじめた。




