思いっきり焼肉食ったるデイ
今日は母親が死んでから初めて外で飯を食おうと、彼はその日もらった現金を握りしめて繁華街に向かった。自分の稼いだ金で食う焼肉は、さぞかし美味いだろうと彼の心は浮足立った。
繁華街に向かうバスに揺られている間、窓の外の風景をみながら彼はこの一週間を振り返った。足腰の筋肉は強張り、悲鳴をあげてギクシャクしている。服は汚れ、仕事終わりには汗の臭いが染み付いて離れない。怒号を浴びせられながらも、我ながら頑張っていると思う。
バスが目当ての繁華街で止まった。彼は運賃を支払うと、降りてソソクさと繁華街に消えた。
表看板に一皿3500円の肉が掲載されている店をみつけた。美味そうな霜降り牛の、一皿が写し出されたそれをみながら、彼はポケットの中の現金を握りしめた。
「いらっしゃいませ〜!」
ドアをくぐると店員の声が元気に飛んできた。
席についた彼は、表看板の霜降り牛を一皿注文した。やがて、肉がテーブルに置かれ彼の胃袋の中にかっこまれた。
美味い。肉体労働で疲れた身体に染み渡る。自分で稼いた金、ということもあって彼の満足度は頂点に達していた。あの労働の対価は、こんなにも素晴らしいものなのか・・・。
彼は人生で労働が素晴らしいと、はじめて心から思った。




