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土木現場で我思う故に作業員
1週間後、彼は田口の会社で土木作業員として働いていた。
服は汗の臭いでいっぱいだ。肌は黒く焼けて、部屋に閉じこもっていた時とは別物になった。毎日に死ぬ思いで家に帰ると、ようやく風呂に入り、すぐにベッドの中で深い眠りについた。
「おい!そこの兄ちゃん、チンタラ動いてんじゃねえぞ。」
現場では怒号が飛び交っていた。彼はそれに怯えながら、内心ではムカついていたが、ここでキレたら田口に申し訳が立たないと思い我慢した。本当は、こんな仕事ほっぽり出したかった。なんでこんなキツイことしきゃならないんだ・・・。
「バカ野郎!そこはこうやってやるんだよ。ボーッと仕事してるなよ」
先輩たちの教えは容赦がなかった。十数年、部屋に閉じこもりテレビばっかりみていたツケが今回ってきた。辞めたい。でも生活が成り立たなくなるし、借金もある。せっかく雇ってくれた田口のメンツを潰すことは出来ない。
彼の葛藤は、いつも楽な方へと向いていく。人生ではじめて、それに抗っている自分が少し誇らしかった。借金さえ無ければ。彼は死んだ母親を恨みはじめた。
夕日が仕事の終わりを告げ、家に帰りだした人々の背中をみつめながら、彼の心中はどす黒い思いでいっぱいになった。




